1.
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男だが「美人」という言葉がぴったりな彼は、今日も静かにひとり、教室の隅に座っている。
がやがやと煩い教室は、先ほど担任から告げられた、一週間後に迫った球技大会の話題で持ち切りだった。
菅原はため息をついた。
今は1月。
なにもこんな寒い時期にやらなくてもいいのに。暑い時期も嫌だけど。
唯一の救いは、まだ選択肢に自分の得意なスポーツがあること。
しょうがないか、と顔をあげて黒板を見る。
男女混合のドッヂボールと、男女別のバレーボール、それから卓球。
黒板に大きく書かれた選択肢の下には、自分がやりたいところに名前を書いておくことになっている。
「大地、どうする?」
「まあ、バレーだろうな」
菅原は、クラスメイトであり同じバレーボール部の澤村大地に一応質問を投げかける。
当たり前といえば当たり前な回答に、菅原はにっと笑った。
「だな」
バレーと卓球に関しては、不公平にならないように、現役の選手は2名・経験者も2名までしか入れないようになっている。
黒板に次々と名前が記入されていく。
人気はドッヂボールだ。
なんたって男女混合。みんな青春したいのである。
「とりあえず俺ら2人が入るとして…」
澤村が黒板に「澤村」「菅原」と書いていく。
「あとどうするべ?」
「タッパある奴がいいかな、バスケ部とか」
このクラスにバレー経験者がいるとは聞いたことがない。
とりあえずまだどこにも名前を書いていない男子に声をかけて、運動がそこそこ出来る長身チームを作っていく。
「…6人か」
バレーは6人でやるスポーツ。
万が一の交代要員を含めて最低でもあと1人は集めたいところだ。
黒板に名前が書かれていない男子を探す。
すると丁度、身長が高いクラスメイトの名前が浮上した。
「…八賀、」
ぐるりと教室中を見回し、やがて視線は自分の席についたまま、頬杖をついてボーッと窓の外を眺める唯月を捉える。
「誘ってくる」
「俺も行く」
菅原と澤村が連れ立って唯月の元へ。
外はいよいよ寒いというのに、唯月は少しだけ窓を開けている。
冷たい風が教室に滑り込んで、彼の髪を靡かせた。
おおよそ男子高校生とは思えないような色気が漂っている気がして、菅原と澤村は声を掛けるのをほんの少し躊躇する。
「…あの、八賀」
声をかけたのは澤村だった。
突然自分に向けられた声にびっくりしたのか、肩を揺らして慌ててこちらを見る唯月に、なんだか申し訳ないような気持ちになる。
『えっと…なに…』
「球技大会なんだけど、一緒にバレーやらないか?」
「八賀ってタッパもあるし、入ってくれると嬉しいなー」
二人の言葉に、唯月は言いにくそうに視線を外した。
『えっと…ごめん。俺、その日病院に行く』
「え…そうなの?」
「どこか悪いのか?」
『ちょっと…。先生には終わったら来るようにって言われてるけど、間に合うか分からないし…』
サラリとした黒い髪が、唯月の目元を覆う。
なんだかそれが、ひどくもったいないと思った。
「じゃあ名前だけ入れといていいか?」
「一応人数は足りてるし、間に合ったら交代で入る感じで」
『…うん、それなら』
未だに視線は交わらない。
とりあえず唯月に礼を言って、二人は黒板へと戻っていく。
「間に合うといいなぁ」
ふいに口から零れた言葉を、澤村の耳が拾う。
「そうだな。せっかくやるんだしな」
黒板に「八賀」と書きながら、菅原は頷いた。