11.
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「じゃあ唯月、こっちお願い」
『ん』
インターハイ予選1週間前。
唯月がバレー部にマネージャーとして入部して少し経った。
今日は練習している部員達の補助ではなく、片付けもろくに出来ていない部室の掃除をする日だ。
今の部員達が集めたのか、OB達が集めていたのか、はたまたその両方か。
乱雑にダンボールに突っ込まれたバレー雑誌を纏めて捨てようと、唯月はロッカーの上に手を伸ばした。
『うわ、埃っぽい…』
「吸い込まないように気をつけて」
『うん』
中々に重いダンボールを下ろして、雑誌を纏めて紐で括り外へ運ぶ。
あらかじめ部員達には荷物を避けておくように頼んであり、清水は何もなくなった棚を上から順に雑巾で拭いていた。
『それ終わったら床掃く?』
「うん」
『畳はねあげられたらいいけど…無理か』
早々に諦めて、唯月は清水に倣って棚を拭く。
「唯月」
『ん?』
「これ見て」
清水に呼ばれて近付くと、隅に寄せられたダンボールの中に、黒い布が埃を被って押し込められていた。
『なにこれ?』
「わからない」
丸まったそれを広げようとする清水を手伝い、唯月は布の端を持つ。
「これ…」
『…すごいね』
広げた布は、文字が書かれているだけの、輝きを失った過去のもの。
「…綺麗に、出来ないかな」
『!』
ぼそりと呟く清水を見て、唯月は頷く。
『とりあえず洗濯しようか』
「!」
埃だらけだし、と続けた唯月は、あちこち破れた端を持ち上げた。
『破れた所は縫い合わせよう』
「うん」
『文字が薄れたらもう1回上からなぞる。…大丈夫、綺麗に出来るよ』
「…うん」
とりあえず洗濯などの作業は清水の家で行う事に決め、部室に置かれていた紙袋に布をしまう。
『(インターハイまでには間に合わせなきゃ)』
部員達の驚く顔が見たいと、唯月は少しだけ口元に笑みを浮かべた。