9.
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…」
猫のように丸まって眠る唯月を、西谷はじっと見ていた。
整った顔に、形の良い唇。
昨日の夜、そこに無意識のうちに惹き付けられたことを覚えている。
あの真っ赤な顔が忘れられず、昨日は布団に入ってもなかなか眠れなかった。
それでもみんなより10分早く起こしてほしいと頼まれたことは実行せねばと、西谷は気合いを入れていたのだ。
「(あー…無防備、)」
狙っている男がこんなに近くにいるというのに、すやすやと眠る唯月に少し複雑な気持ちになる。
「ーー唯月さん、起きてください」
周りを起こさないように、小声で言う。
「唯月さん」
肩を揺すってみると、綺麗だった顔、平らだった眉間に皺が刻まれた。
『んー…』
「唯月さーん」
もぞもぞと動いたかと思えば、唯月は布団を引き上げて頭まですっぽり埋まる。
『あと10分…』
「それじゃみんなと一緒になりますよ」
朝が弱い。
そう言っていた唯月の言葉の意味が、少し分かった気がする。
西谷は布団を剥がして、また唯月の肩を揺すった。
「唯月さん」
『ん…』
目が薄らと開く。何度か瞬きをして、唯月は眠そうに目を擦った。
『…ゆー、?』
「……」
ふいに呼ばれた名前に西谷は固まり、動けなくなる。
唯月はのそのそと起き上がって、布団の上に胡座をかいて座った。
「……寝てる…」
こっくりこっくり船を漕いで、唯月は今にも布団に倒れ込みそうだ。
「…起きてますか、唯月さん」
『うん…』
「…顔洗いに行きましょう」
『うん…』
「……朝飯ってなんですか」
『うん…』
生返事。
西谷はため息をついて立ち上がる。
「唯月さん」
『ん…』
目を開ければ、差し出された手。
寝ぼけたままの唯月は、なんの躊躇もなしにその手を掴んだ。
「行きましょう」
『ん』
西谷に引っ張られるようにして立ち上がる。
未だにボーッとしている唯月に不安を覚えて、西谷は手を繋いだまま歩き出した。