【銀魂】神様と人間と

「お、おい、ヅラ!コイツ女じゃねぇだろうが!?」
「ヅラじゃない桂だ。すまん。髪が長かったもので、つい」
「おんしゃも髪長いぜよ」

銀時は桂を責め、桂の言葉に坂本がツッコミを入れる……。
まるでコントである。

「妾の問いに答えよ!それとも……帝釈天である妾の命が聞けぬのか?」

少年は、痺れを切らしたように、声を上げた。

「なァ、高杉。帝釈天ってなんだ?」
「古代インドで生まれた仏教で祭られてる神だ。別名、インドラとも呼ばれている」

煙管を吹かしながら、高杉は銀時の問いに答える。

「そうか、神か。それはすごいな」
「あんなん只の厨二病ぜよ」

桂が素直に受け取ると、坂本がすかさずツッコミをいれる。

「妾を……厨二病、じゃと………?」

帝釈天はピクリと眉を動かし、如何にも不機嫌そうな顔をする。

「そなたらには身をもって教えるべきじゃな。四天王……任せたぞ」
「御意のままに」

帝釈天の命に、跪いている4人のうち1人が、桃色の髪を揺らしながら、ゆっくりと立ち上がる。
それを合図に、他の者たちも、立ち上がり始めた。

「帝釈天様ぁ~。あの子達って、私の好きにしていいんですかあ~?」
「好きにしろ」

漆黒の髪を一つに結い上げながら、女は帝釈天に問うと、帝釈天は、さして気にも留めず、返事をする。

「あー、今日は如何にも広目天が好きそうな奴がいるもんなぁ」
「確かに、好きそうですね」

紺色の髪を持つ男の言葉に、白銀の髪を持つ男は頷く。

「ハァ、全く……。すみません、広目天は少々……いえ、かなりの変態でして……。っと、失礼。私、四天王が1人、多聞天と申します。貴殿方に恨みはありませんが、帝釈天様の御命令ですので、悪く思わないでください」

多聞天と名乗った10代後半と思われる少女は、群青の瞳をスッと細めた。

「おい、坂本!テメェが余計なこと言うから、なんか面倒なことになったじゃねェか!?」
「すまんぜよ」

銀時に責められた坂本は目尻を下げて謝る。

「問答無用!帝釈天様からの勅命だ。てめえらには死んでもらうしかねえんだよ」

紺色の髪を持つ男は、ニヤリと好戦的に笑う。

「ちょっと、ちょっと~、勝手に殺そうとしないでよね。戦闘狂君」
「あ゛?誰が戦闘狂君だ。このドS変態女が。俺は増長天様だ」

広目天に揶揄された増長天は、眉間に皺を寄せた。

「随分なナルシスト発言ですね、増長天」
「全くです。自ら様を付けていいのは帝釈天様ただおひとりです」

白銀の髪の男と多聞天は、増長天を煙たそうに扱う。

「持国天に多聞天……後で覚えてろよ………」

怒りを孕んだ瞳を二人に向ける増長天。
どうやら彼は弄られキャラらしい。
主に弄ってるのは広目天だけだが………

「おい、なんか言い合ってる間に逃げた方がいいんじゃねぇの?」

銀時はコソッと他の三人に言う。
銀時の言葉に、三人とも頷いた。
一般論で考えれば、なんとも馬鹿馬鹿しくてつきあってられない。
五人にバレないよう、静かにその場を離れようとする。
と、銀時のすぐ後ろから、ヒュンと風を切る音が聞こえた。
刹那。
ドゴッと耳を塞ぎたくなるような、鈍い音が響く。

「銀時!!」

三人が、銀時の名を同時に叫ぶ。
が、先程まで銀時がいた場所に、銀時はいなかった。
代わりに立っていたのは、一つに結い上げられた黒髪を揺らす広目天だった。

「あれ~?ちょっとやりすぎちゃったかなあ~?まだ彼に一回も相手してもらってないのに~」
「………死にましたね」

広目天のつまらなさそうな呟きに、多聞天は冷静に、冷酷に言葉を返す。

「いや、でも……ちょっと変だったんよねえ~。足が当たった時感覚が」

広目天は、考え事するかのように、銀時が吹き飛んだ方を静かに見つめている。
ふと、砂煙が薄れてきた。
その奥には人影が。

「っ………まさか?!」
「んだと!?」
「どうして、生きて……」
「そんなこと、あるわけ………」

四天王は皆一様に目を見開き、口々に驚きの声を上げる。

「いってぇ………。急に蹴り飛ばしやがって……」

砂煙が薄れるにつれ、影の主がハッキリしてくる。
その陰の主は、やはりと言うべきか、坂田銀時だった。
ガリガリと頭を搔きながら、さも当然のように歩いている。
かなりの威力であったことは側にいた三人にも分かったのだろう。
三人とも、唖然としている。

「へえ~、今ので生きてたんだあ。君のこと、ますます欲しくなっちゃた」

ペロリと妖艶に唇を舐め、広目天はニヤリと笑う。
その姿は獲物を捕らえようとする獣さながらだ。

「あーあ、俺しーらね」
「僕も関わりたくないですね」
「右に同じく」

増長天、持国天、多聞天はそれを見て見ぬふりをする。
四天王揃って知らんふりとは……。
広目天に気に入られると、かなりヤバいということが見受けられる。

「さっきので、皆殺る気になったみたいだねえ。いいよ~、おいでよ。皆直ぐに私の忠犬にしてあげるから」

三人の言葉を無視し、広目天は爛々と目をを輝かせながら、とんでも発言をする。

「いや~、そうゆうのは、ちょっと興味ないな~」
「俺も遠慮しておこう」
「テメェの忠犬なんざ興味ねェなァ」
「わしも遠慮しとくぜよ」

四人は口々に広目天の申し出を断る。
まあ、約一名忠犬の真意に気付かず断っているようだが………。

「皆ツンデレなぁ。いいよ、いいよ~、ツンデレ君が素直になるまで調教するのって、楽しいからあ~」

全く話を聞いていない、というより、自分勝手に解釈をする広目天。
四天王はそれを訂正するきはないらしい。

「話聞け!!全然そんなんじゃねえだろうが!?」
「あっれ~?あっ、もしかして………初めてで怖いとかあ?大丈夫、優しくしてあげるよっ!」

銀時の悲痛な叫びは虚しくも届かず、広目天は1人妄想を繰り広げる。

「こいつ、マジでヤベェ、幽霊なんかよりよっぽど怖えよ!?」
「グダグダうっせえなあ。広目天も、手に入れてえなら力でカタァつけた方がよっぽどはえぇだろうが」
「ん~、それもそうだね~」

銀時は、今更ながら(本当に今更ながら)広目天のヤバさに気付き、逃げようとするが、そうは問屋が卸さなかった。
そうは神が許さなかった。
増長天が行くてを阻む。
そして、広目天の言葉を合図に他の二人もそれぞれ獲物をかまえた。
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