黄昏
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「ねぇねぇ、赤 くん、魂ってなんだろう?」
緑 の突拍子もない一言。いつものことだ。
「魂か……心と同一化されることもあれば、別の存在とされることもあるな」
「僕としては心とは別の存在だといいですね」
オレの後に続いて喋りだしたのは青 だ。
「なんでだ? 青」
「心と魂が同一なら、たとえば心が弱ってしまったら、魂も弱ってしまうことになりませんか? 心が壊れた場合、魂も壊れるのでは?」
「魂という存在が揺らぐのが嫌ってことか」
「そうなりますね」
青と話していると、ぽかんとした表情でオレ達を見つめる緑が視界に入った。
「二人が何を言ってるのか、ボクには全然分かんない……」
「要するに青にとって魂は『命そのもの』であってほしいんだろ。心という感情に左右されない『存在の証明』みたいな」
「うーん……難しいなぁ……」
「魂はメロンで、心はメロンパンであってほしいってことです」
「そっか! なるほど!!」
「いやなんでそれで伝わるんだよ。余計意味不明だろ」
「ボクはメロンもメロンパンもどっちも好き!」
「僕はメロンのほうが好きですね」
「話が変わってきたな……」
やれやれ、と頭を抱える。それにしても魂か……仮にオレ達にそんなものがあったとしても、知覚できないんだから分かるはずがない。天国、地獄、あの世、来世のように……あるかどうか分からない、不確かなものだからな。
それらはただの人間の願望か、それとも……。
「で? 緑はなんで急に魂なんて言い出したんだよ。お前そんなこと気にする奴だったか?」
「今までは気にしたことがなかったんだけど、昨日見た映画に『魂ごと君を愛している! たとえ生まれ変わっても会いに行く! 世界線が違ったとしても必ず見つけに行くさ! だから僕の愛を受け入れてほしい!』って台詞があったんだよね~それから何だか気になっちゃって」
緑は一体、どんな映画を見てたんだ……?
「それはまた随分と情熱的な愛の告白ですね」
……確かに青の言う通り、情熱的ではあるが……愛が重いな……。
「オレは情熱的すぎて少し怖いと感じるけどな……受け取り方は人それぞれか。生まれ変わりに世界線……ファンタジーやSF作品でよくある設定だな」
「生まれ変わりは来世ってことなんだろうけど、世界線って何?」
「パラレルワールド……平行世界……『もしも』のIF世界……この世界と似ているようで違う世界があったら? ゲームのようにオレらの選択次第で分岐する世界があるとしたら? といった話だな。例えばオレら三人が出会わず、こうして話をすることもない世界が存在するかも知れない」
「え? それは嫌だなぁ……」
見るからにしょんぼりする緑。コイツは感情表現が分かりやすすぎる。顔に出すぎだ、バカ。だからこそ変に嘘を疑わなくて済むから助かるんだが……純粋すぎていつか悪い奴に騙されそうで、放っておけない。
……でも、そこまで大切に思われているのは正直、悪い気はしない。
「例えだって言ってるだろ。なら……オレらが女になってる世界とかどうだ? 性別が違うだけで、オレらの関係性はそのままな」
「それは面白そうだね! 三人で可愛い服をお揃いで買って~そのままオシャレなカフェでお茶して~最後は誰かの家にお泊りして女子会やりたい!」
「それは……今でもやろうと思えば出来るんじゃないですか? 僕は構いませんよ」
マジかコイツ。青には羞恥心というものが無いのか……? 無いんだろうな。
「他はともかくオレには可愛い服は無理だ……」
「ボクは全然大丈夫だけどな~赤くんは照れ屋さんだね?」
「では2対2で僕らの勝ちですね。今度の休日に実際にやってみましょう。緑くん、赤くん、僕の家で良ければどうぞ泊まっていってください」
「賛成! 女の子になった気持ちでオシャレしてお出かけして、女子会しよう!」
「勘弁してくれ……」
いつから多数決になったんだよ!! オレは女子会なんてやらないからな!?
***
「赤くん、青くん、こないだの女子会楽しかったね!」
「はい。貴重な経験でした。残念ながら、女子会の定番である恋バナは出来ませんでしたが……」
「いつかボクらに好きな人が出来たら語り明かそうよ!」
「そうですね。楽しみです」
「オレは今回ちゃんと付き合ったからな? 次はないからな?」
結局、青と緑に流されて、お揃いの可愛い服を着させられた。女装という程でもないが、ヒラヒラした服を。その後は女子ばかりいるカフェに連れて行かれて、最後は青の家で女子会をする羽目になった。
……別に意外と楽しかったなんて思っていない。
「次はいつやる~?」
「もうやらないからな?」
「来週とかどうですか?」
「オイ、青……」
「いいね! 楽しみだなぁ~!」
「お前ら! 少しはオレの意見も聞けよ!!」
今日も青と緑に振り回される。本当に世話が焼ける二人だ……。
特に青。こいつは無自覚な緑と違って、オレが困っているのを分かっていて振り回している節がある。なんなんだよ、実はオレのこと嫌いか? 実際、初めて会った時はめちゃくちゃ嫌われていたが……。
「青……なあ、お前……」
「はい? なんですか?」
「いや……何でもない……」
まだオレのこと嫌いか? なんて、聞けるはずもなく。
「……? 変な赤くんですね?」
「赤くん、どうしたの? そんなに嫌だった? ごめんね……ボク、無理言って……みんなで女の子になった感覚で一緒に過ごすのすっごく楽しかったから……」
ああ、もう! 緑! だからそんな悲しそうな顔をするな! 小型犬かよお前は!
「分かった、分かったよ! 付き合えばいいんだろ! とことん付き合ってやるよ!」
「やったぁ~~!! ありがとう赤くん! 大好き!」
「大好きとか……よくそんなこと、恥ずかしげもなく言えるな……」
「ねぇねぇ、次はみんなで何しようか? どこ行く?」
「僕ちょっと調べてきたんですよ。おすすめのカフェがあって……」
「はぁ……ほんと、仕方のない奴ら……」
全くタイプの違うオレ達がこうして集まって、会話している。一緒に過ごしている。
――それはなんだか奇跡のようにも思えて。
もしも魂というものが本当にあるのなら、オレ達は魂によって惹かれ合ってしまったのかも知れない……なんてな。
わざわざ確認なんてしない。聞いたりなんてしない。だが、オレらの関係性に名前を付けるのなら『友達』なんだろう。
友達とこうして過ごす日常。
今のところオレは波乱万丈の人生を送っていないし、情熱的な恋にも落ちていないし、もちろん世界を救ったりもしていない。劇的な出来事なんて、何もない。
それでもお前ら二人と過ごす日々は退屈とは無縁で、忙しなくて騒がしい。
案外悪くない、平凡な日常だ。この日常がずっと続けば良いと願ってしまうほどに。
***
そんな出来事から暫く経った後もオレらは特に何も変わらず、平凡に過ごしていた。……あの日までは。
「赤くん、青くん、ボクね……最近好きな人が出来たんだ!」
――平凡な日常が、壊れるような音がした。
「その子のこと考えると胸がなんだか苦しくて……その子の為なら何でもしてあげたくなっちゃう! これが恋ってやつなのかな?」
「……そう……なんじゃないか?」
「良かったですね、緑くん。ずっと恋愛に興味深々でしたからね。僕は緑くんの恋を応援しますよ」
「ありがとう、青くん! 赤くんも応援してくれる?」
「……もちろんだ」
「ありがとう! えへへ、ボク、頑張るね! いっぱいアピールしなきゃ! ボクね、昔見た映画の主人公の気持ちがようやく分かったよ! その子のこと、魂ごと大好き!!」
そう言う緑は生き生きとして見えて。まだ恋を知らないオレには少し眩しくて。
恋、ね……。緑はそこまでその子のことが好きなのか。オレもいつか、そうなるんだろうか。
もし誰かを好きになったら、オレはその誰かを守りたいな。
――絶対に、何があってもオレが守ってやる。
「魂か……心と同一化されることもあれば、別の存在とされることもあるな」
「僕としては心とは別の存在だといいですね」
オレの後に続いて喋りだしたのは
「なんでだ? 青」
「心と魂が同一なら、たとえば心が弱ってしまったら、魂も弱ってしまうことになりませんか? 心が壊れた場合、魂も壊れるのでは?」
「魂という存在が揺らぐのが嫌ってことか」
「そうなりますね」
青と話していると、ぽかんとした表情でオレ達を見つめる緑が視界に入った。
「二人が何を言ってるのか、ボクには全然分かんない……」
「要するに青にとって魂は『命そのもの』であってほしいんだろ。心という感情に左右されない『存在の証明』みたいな」
「うーん……難しいなぁ……」
「魂はメロンで、心はメロンパンであってほしいってことです」
「そっか! なるほど!!」
「いやなんでそれで伝わるんだよ。余計意味不明だろ」
「ボクはメロンもメロンパンもどっちも好き!」
「僕はメロンのほうが好きですね」
「話が変わってきたな……」
やれやれ、と頭を抱える。それにしても魂か……仮にオレ達にそんなものがあったとしても、知覚できないんだから分かるはずがない。天国、地獄、あの世、来世のように……あるかどうか分からない、不確かなものだからな。
それらはただの人間の願望か、それとも……。
「で? 緑はなんで急に魂なんて言い出したんだよ。お前そんなこと気にする奴だったか?」
「今までは気にしたことがなかったんだけど、昨日見た映画に『魂ごと君を愛している! たとえ生まれ変わっても会いに行く! 世界線が違ったとしても必ず見つけに行くさ! だから僕の愛を受け入れてほしい!』って台詞があったんだよね~それから何だか気になっちゃって」
緑は一体、どんな映画を見てたんだ……?
「それはまた随分と情熱的な愛の告白ですね」
……確かに青の言う通り、情熱的ではあるが……愛が重いな……。
「オレは情熱的すぎて少し怖いと感じるけどな……受け取り方は人それぞれか。生まれ変わりに世界線……ファンタジーやSF作品でよくある設定だな」
「生まれ変わりは来世ってことなんだろうけど、世界線って何?」
「パラレルワールド……平行世界……『もしも』のIF世界……この世界と似ているようで違う世界があったら? ゲームのようにオレらの選択次第で分岐する世界があるとしたら? といった話だな。例えばオレら三人が出会わず、こうして話をすることもない世界が存在するかも知れない」
「え? それは嫌だなぁ……」
見るからにしょんぼりする緑。コイツは感情表現が分かりやすすぎる。顔に出すぎだ、バカ。だからこそ変に嘘を疑わなくて済むから助かるんだが……純粋すぎていつか悪い奴に騙されそうで、放っておけない。
……でも、そこまで大切に思われているのは正直、悪い気はしない。
「例えだって言ってるだろ。なら……オレらが女になってる世界とかどうだ? 性別が違うだけで、オレらの関係性はそのままな」
「それは面白そうだね! 三人で可愛い服をお揃いで買って~そのままオシャレなカフェでお茶して~最後は誰かの家にお泊りして女子会やりたい!」
「それは……今でもやろうと思えば出来るんじゃないですか? 僕は構いませんよ」
マジかコイツ。青には羞恥心というものが無いのか……? 無いんだろうな。
「他はともかくオレには可愛い服は無理だ……」
「ボクは全然大丈夫だけどな~赤くんは照れ屋さんだね?」
「では2対2で僕らの勝ちですね。今度の休日に実際にやってみましょう。緑くん、赤くん、僕の家で良ければどうぞ泊まっていってください」
「賛成! 女の子になった気持ちでオシャレしてお出かけして、女子会しよう!」
「勘弁してくれ……」
いつから多数決になったんだよ!! オレは女子会なんてやらないからな!?
***
「赤くん、青くん、こないだの女子会楽しかったね!」
「はい。貴重な経験でした。残念ながら、女子会の定番である恋バナは出来ませんでしたが……」
「いつかボクらに好きな人が出来たら語り明かそうよ!」
「そうですね。楽しみです」
「オレは今回ちゃんと付き合ったからな? 次はないからな?」
結局、青と緑に流されて、お揃いの可愛い服を着させられた。女装という程でもないが、ヒラヒラした服を。その後は女子ばかりいるカフェに連れて行かれて、最後は青の家で女子会をする羽目になった。
……別に意外と楽しかったなんて思っていない。
「次はいつやる~?」
「もうやらないからな?」
「来週とかどうですか?」
「オイ、青……」
「いいね! 楽しみだなぁ~!」
「お前ら! 少しはオレの意見も聞けよ!!」
今日も青と緑に振り回される。本当に世話が焼ける二人だ……。
特に青。こいつは無自覚な緑と違って、オレが困っているのを分かっていて振り回している節がある。なんなんだよ、実はオレのこと嫌いか? 実際、初めて会った時はめちゃくちゃ嫌われていたが……。
「青……なあ、お前……」
「はい? なんですか?」
「いや……何でもない……」
まだオレのこと嫌いか? なんて、聞けるはずもなく。
「……? 変な赤くんですね?」
「赤くん、どうしたの? そんなに嫌だった? ごめんね……ボク、無理言って……みんなで女の子になった感覚で一緒に過ごすのすっごく楽しかったから……」
ああ、もう! 緑! だからそんな悲しそうな顔をするな! 小型犬かよお前は!
「分かった、分かったよ! 付き合えばいいんだろ! とことん付き合ってやるよ!」
「やったぁ~~!! ありがとう赤くん! 大好き!」
「大好きとか……よくそんなこと、恥ずかしげもなく言えるな……」
「ねぇねぇ、次はみんなで何しようか? どこ行く?」
「僕ちょっと調べてきたんですよ。おすすめのカフェがあって……」
「はぁ……ほんと、仕方のない奴ら……」
全くタイプの違うオレ達がこうして集まって、会話している。一緒に過ごしている。
――それはなんだか奇跡のようにも思えて。
もしも魂というものが本当にあるのなら、オレ達は魂によって惹かれ合ってしまったのかも知れない……なんてな。
わざわざ確認なんてしない。聞いたりなんてしない。だが、オレらの関係性に名前を付けるのなら『友達』なんだろう。
友達とこうして過ごす日常。
今のところオレは波乱万丈の人生を送っていないし、情熱的な恋にも落ちていないし、もちろん世界を救ったりもしていない。劇的な出来事なんて、何もない。
それでもお前ら二人と過ごす日々は退屈とは無縁で、忙しなくて騒がしい。
案外悪くない、平凡な日常だ。この日常がずっと続けば良いと願ってしまうほどに。
***
そんな出来事から暫く経った後もオレらは特に何も変わらず、平凡に過ごしていた。……あの日までは。
「赤くん、青くん、ボクね……最近好きな人が出来たんだ!」
――平凡な日常が、壊れるような音がした。
「その子のこと考えると胸がなんだか苦しくて……その子の為なら何でもしてあげたくなっちゃう! これが恋ってやつなのかな?」
「……そう……なんじゃないか?」
「良かったですね、緑くん。ずっと恋愛に興味深々でしたからね。僕は緑くんの恋を応援しますよ」
「ありがとう、青くん! 赤くんも応援してくれる?」
「……もちろんだ」
「ありがとう! えへへ、ボク、頑張るね! いっぱいアピールしなきゃ! ボクね、昔見た映画の主人公の気持ちがようやく分かったよ! その子のこと、魂ごと大好き!!」
そう言う緑は生き生きとして見えて。まだ恋を知らないオレには少し眩しくて。
恋、ね……。緑はそこまでその子のことが好きなのか。オレもいつか、そうなるんだろうか。
もし誰かを好きになったら、オレはその誰かを守りたいな。
――絶対に、何があってもオレが守ってやる。