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おにぎり

「銀さん」
最近ますます似てきやがった。困ったことだ。ちょうど新八と出会った頃ぐらいの年齢になったガキは、もうガキじゃないといわんばかりの成長ぶりで、声だって低くなった。新八はあの頃こんなに大人びていたろうか。
「銀さん、僕に剣術を教えてください」
新八はその一言を本気でいうことはしなかった。遠まわしになんとなく言ってきたことがあったが、あの頃はまだ戦争がわりと近くに存在していて、乱闘騒ぎなんかも見ていた新八は、こいつみたいにその一言をまっすぐ投げてくることはしなかった。
「父ちゃんに習ってンだろ」
頭を掻きながらそういうと、その手をぐっとつかまれた。驚いてガキの目を見た銀時はゾッとした。目線があまりにまっすぐで顔をそむけてしまった。こういうことが昔あったような。殴られたんじゃなかったか。その時よりも痛みが強い気がする。
「いてーよ」
掴まれた手を放そうとした。が、それもできなかった。銀さん、ともう一度よばれた。さっきよりも低い声だった。
「お前、人を殺したいのか」
精一杯大人の威厳を出したつもりだった。精一杯低い声で、精一杯の鋭い目線で。あの頃なら、いや、あの頃でも新八は、どうだっただろう。ただわかるのは、目の前にいるこのガキは、新八に少し似ている全くの別人だということで、それが一番厄介だった。
「いいえ、銀さん。僕は人を護りたいんです」
銀時はようやく力の入った手で、わしわしと青年の頭をなでた。

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