教えて、ヒーロー
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
転入して三日が経った。
世間ではオールマイトが雄英で教鞭を執っていることに注目が集まり、校門前にマスコミが連日群がるようになっていた。
「オールマイトの授業はどうですか?!」
「えっと、画風が違います…かね…!」
「……、相手しなくていいって。はーいすみませーん通りまーす」
登校途中で会った耳郎ちゃんとマスコミを掻き分ける。流石の人気と言わざるを得ないが、よくこんなのを毎回振り切ってヒーローできてたなと思う。
校門をくぐるとマスコミは遠ざかった。入場許可を持たない者は敷地内に入れないのだ。
「このガチガチのセキュリティシステムが実際に作動するところ、ちょっと見てみたいかもしれない」
「ええ?何言ってんの……」
「あ、変な意味じゃなくて!こう…センサー反応してガシャンガションガガガガ…!!ってシールドが展開されたりしたらさ、カッコ良くない…!?」
「ふ……」
「笑ってる!笑ってるでしょ!」
「はは、いや言ってることは分かる、かも」
もちろんこの時点では、それ以上のことが起こるなんて予想もしていなかった。
***
朝のHR。
「急で悪いが今日は君らに…」
相澤さんの横暴さはもうすでに知れ渡っているのか、教室がざわつく。戦闘訓練なら、私の力を見せるチャンスだから、むしろありがたいんだけど……
「学級委員長を決めてもらう」
……学校ぽいやつだった。
ヒーロー科では、学級委員長は人を導く素地になる。見渡す限り全員が立候補していた。
私も手を挙げようとしたけれど、
「…………」
私はまだ実力も皆に見せていない。こんな状態で投票したって、自分の一票が入るだけだ。
挙げた手を、そっと下ろす。
前の席でいつも何かと面倒を見てくれている、百ちゃんに投票することにした。
昼休み。
仲良くなった耳郎ちゃん、透ちゃん、梅雨ちゃんと一緒にごはんを食べに食堂に来ていた。
「ランチラッシュのメシ処……私、雄英に来られて、よかった…………」
「……ちゃん、ソレ毎日言ってるわ」
クックヒーローランチラッシュの親子丼である。白米の美味しさに滂沱と涙する私。こうしてありのままのリアクションを取っても引かないでくれる、いい子たちだ。ありがたいし、できたら仲良くなりたいと思う。
「しかし、透ちゃんの個性はやっぱりすごいねえ……。お米が宙に消えていく……」
「うはは!そうかなっ!?嬉しーなー……ちゃん!!」
照れたのか背中をバシバシ叩いてくる透ちゃん。可愛い。
彼女の個性に興味があるのは本当だ。
無意識なのか意識的になのかは分からないが、取り込む食物が透明になるタイミングは口の中に入った瞬間。透明化はもちろん「自分」にしか適用されないはずなので、彼女は「自分」への認識が個性に強く関係する仲間なわけだ。…と私は勝手に思っている。
もしかしたら服も透明にできるのだろうか?服はできないのだと言っていたが、彼女がもし「自分」と認識したものをすべて透明にできるとしたら……かなり強い個性だと思う。
個性について思いを馳せていると、突然サイレンが鳴り響いた。サイレン?
「警報!?」
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください。繰り返します……』
食堂が一気に騒々しくなる。他の科の生徒や上級生たちも何が起きているか把握していないらしく、そのうちあたりは出口を目指しているであろう人波でいっぱいになった。はぐれないよう三人を探そうとする。
「……ちゃん!」
透ちゃんが手を伸ばしてくれる。手らしいところを探り、ギュッと握り締めあう。でも耳郎ちゃんと梅雨ちゃんとははぐれてしまう。
「わああ皆っ!?どこー!?」
「じろちゃーん…つゆちゃーん…!」
必ずしも一緒にいる必要はないけれど、心細くて二人の名を呼んだ、そのとき。
人の隙間からしゅるっとなにか伸びてきて、私の胴体に巻きついた。
「うわ!?」「……ちゃんっ!?」
私と、手を繋いでいた透ちゃんとはその何かに勢いよく引っ張られて、
「梅雨ちゃん!」
驚いた。二人分の体重をものともせず引き寄せたのは、小柄な体躯の梅雨ちゃんの舌だったのだ。しゅるんと舌を巻き戻して、彼女は平気な顔をしている。
「無事でよかったわ、ケロケロ」
「うええありがとおおお……つゆちゃんもじろちゃんもよかったよおお」
「……ってときどき感情表現がオーバーだよね…」
「気持ち悪い?」
「気持ち悪い」
「私じろちゃんのそういうとこ好きだわ」「あたしもっ」「私もよ、響香ちゃん」
「ちょ、なになに?照れるからやめっ」
もみくちゃにされているのは変わらないけれど、やっぱり皆といると安心する。三人とはいい友達になれそうだった。
……よく考えたら、私も個性使えばよかった。パニくってて冷静な判断ができてないな。いけないいけない。
***
その後、飯田くんが非常口になって皆を冷静にしてくれたこともあり、事態は収束した。
委員長飯田非常口くんの爆誕であった。
「……あれ?」
他の委員決めで図書委員に立候補しながら、ふと窓の外を見る。
先生たちが校門のゲートに集まって、何やら話し込んでいるのが見えた。
校内のあちこちにあるゲート。侵入者を阻むべきそれが、作動した上で粉々に突破された跡があった。
先生たちは少し話したあと、復旧に勤しむ作業員たちを残して去っていった。
深刻な雰囲気を肌に感じて、唾を飲む。
ただのマスコミに…あんなことができるだろうか?