教えて、ヒーロー
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転入は(ご都合主義で)無事に済んだ。事前に相澤さんの助手として話が持ち上がっていたぶん、スムーズだった…のかどうかは私の知るところではない。
四月の光が眩しい。
新しい制服に身を包んで、期待に満ちた歩を進める。
今ならなんだって出来る気がする。
***
朝のHR。私は教室のでかい扉の前で無意味に息を潜めていた。全身が耳になったような気持ちで相澤さんの声をしっかり聞く。呼ばれたのに気付かなかったとかあったら恥ずかしくて死ぬから。
「そんで、あー……今日は転校生が来る」
相澤さんがいつも以上に面倒くさそうに口に出した言葉に、教室は一旦静まり返り、
「………マジかっ!!」「学校ぽいイベントキタ——!!!」「じょ、女子!?女子!!?」「男だったらどうするんだよ…」「入学一週間で!?」「えっ見たって!?いつどこで!?」「えーやったあ!」
にわかに蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。
「うるせぇな……おい、……。入ってこい」
喧騒の中で聞き取りにくい相澤さんの声をなんとか拾い、教室のどでかい扉をスイーと引き開ける。
突き刺さる視線たち。
一気に高まった緊張に固まりながら、相澤さんの隣まで歩いて行って、並んだ。
「自己紹介」
「っ、はい!」
息を吸い込む。どこを見ていいか分からなかったけれど、懸命に皆と目を合わせる。話そうとしてたこととかが全部吹っ飛ぶ。ああ個性の説明とか詳しくした方がいいのかな無理無理無理。
「………………です。個性は『瞬間移動(テレポート)』。これから、よろしくお願いします!」
なんとか無難にまとめて頭を下げると、一瞬の後、拍手で迎えられた。
うわあ何だこれ。すでに安堵でちょっと泣きそうだ。
「……が加わって21人になるので、お前ら全員席一個ズレろ。新しい席順はコレ、……は一番最後…左後ろな」
皆がガタガタと移動する。私が加わったことにより奇数になったから…申し訳なさしかない。
自席に着こうとすると、隣の席らしい男子生徒がやたらと目尻を吊り上げてこちらを睨みつけているのにいやでも気づく。
さすがにそのまま席につくほど度胸ができていないので、恐る恐る声を出そうとすると、先にあちらから口火を切られた。
「オイ」
「うわっ、なんでしょう…」
怖っ。目が怖い。ついでにオーラとか爆発してる髪とか色々怖い!なんだこの人ほんとにヒーロー志望か!?
「お前。なんか隠してんだろ」
「いや、特に何も…?」
「嘘つけや、こんなタイミング明らかに不自然だろうがよ」
「ちょっと手続きで色々あって」
「色々ってなんだよソレ聞いてんだよ、てめえ入試んときいなかったろうが、ああ!?」
「いや怖いよあなた!えっとね、複雑すぎて言うのめんどいし、ここにいる以上実力はちゃんとあるつもりだから勘弁してくれないかな?」
凄み方が完全にカタギじゃない。自分が怪しいのは重々承知してるんだけど、なんだかカツアゲでもされているような気分になってくる。
爆発頭の人に絡まれていると、クラスの皆もわらわらと群がってきた。
「ちょ、爆豪やめろって女の子だぞ………、俺ぁ切島鋭次郎!よろしく!」
「後ろの席なんですのね、私八百万百ですわ。よろしくお願いいたしますね!」
「俺!峰田!スリーサイズhグェフッ」
「峰田ちゃんのことは妖怪だとでも思えばいいわ…私蛙吹梅雨、梅雨ちゃんと呼んで」
「ぼ、僕緑谷出久って」
「……くん!!!俺は」
以下略、以下略。
クラスの皆が押し寄せてバクゴー?くんは最初はキレていたが、しばらくすると諦めたのかふいと授業の準備を始めてしまった。
でも、バクゴーくんの言うことはもっともだ。
確かにこのクラスでは私の実力だけが見えていない。
信用できないのは当然だ。実戦訓練で私の力を見せるまで、それを忘れないようにしなければいけない。
そして、緑谷くん。
さっき控えめに自己紹介をしてくれた彼が、あの超パワーと、あれだけのヒーローの精神の持ち主なのだ。
ヒーローの本質……。私は彼に、これから何を教わるだろうか?