教えて、ヒーロー
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(喫煙してます)
林間合宿二日目、夜。
ふと意識が浮かび上がったとき、喉が渇いていることに気が付いた。起き出そうかどうしようか迷っているうちに目が冴えてきて、皆を起こさないようこそっと布団を出る。
月明かりがさす部屋の窓を開けると、夜の風がひやりと吹き付けて心地いい。
からからと玄関のドアが開いて、出てくる人影が見えた。相澤さんだ。
無性に話したくなって、追って部屋を抜け出した。
「相澤さん」
「……子どもは寝てろよ、何時だと思ってる」
「目が覚めたんですよ」
声をかける。
相澤さんは壁にもたれて、俯いて煙草を吸っていた。
「もう、まだ吸ってたんですか。前もやめたほうがいいですよって言ったでしょ」
「……たまにだ。俺だって健康被害は承知の上だ。あいつらのストレスがなければ吸わんで済んだんだがな」
「そうですか?」
「今もブラドと生徒どもの進度を確認してたところだ。見合った訓練になっているかの考慮、受けた相談に対する処置、やることはまだ山積みだな」
「それで息抜きに来たんですね。お疲れ様です」
「ああ。……も、今日はお疲れ様」
咥えていた煙草を指の先に挟んで、長く煙を吐き出して、また唇の先で咥える。やめろとは言うけれど、この人には煙草が似合うなと思う。
……横に並んで壁にもたれ、ポケットから昔なつかし棒付きキャンディを出して咥えた。
「何だそれ」
「相澤さんのまねです」
「飴じゃねーか」
「じゃあ一本くださいよ」
「やらん」
「……飴、あげましょうか」
「いらん」
「あげます。次煙草吸いたくなったら舐めてください」
「……しかもイチゴかよ…」
飴を押し付けて、しばらく二人で黙る。
喋らなくていいこういう時間は好きだ。私はチープなイチゴ味を舌にのせて月を見上げ、相澤さんは相変わらず煙草をのんでいた。
相澤さんは煙草を吸い終えても、隣でただ立っていた。
私が飴を舐め終わるまで、戻れとは言わなかった。