教えて、ヒーロー
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(合宿前、学校での話)
「……」
「ん、常闇。お疲れー」
「ああ、……も」
居残り練習の休憩中、りんごジュースをちびちびやっていると、同じく残って練習していたらしい常闇がやって来た。手にはスクイズボトル。ジュースを勧めようとしたけど、そういえば缶は飲めなさそうだ。
隣に腰を下ろした常闇が、頼みがある、と切り出した。
「この間の期末試験、あっただろう。俺はエクトプラズムと当たったのだが、……俺の強みが完封された」
常闇の個性の強いところは、間合いに入らせないところ。パワーとスピードを兼ね備えた黒影の射程範囲内には、相手は近寄れないし近寄らせない。
しかしその分、いきなり間合いに現れる神出鬼没の攻撃には脆いのだという。
「組んでいた蛙吹のお陰でクリアしたが、課題が浮き彫りになった。個性に頼っていたせいか俺自身の反応速度が悪い。……そこで、……に頼みがあるんだが」
「うん」
「……の個性は瞬間移動だろう。俺の練習に付き合ってはくれないか?」
反応速度の課題は、私も同じ。
それに、一対一の近距離戦ではほぼ無敵の強さの常闇と一緒に練習ができるのも嬉しい。断る理由なんてなかった。
「うん、いいよ。エクトプラズム先生みたいに数は増やせないんだけど、それでいいなら」
「……いいのか?お前も練習していただろう」
「いいの。もう気分転換したいなって思ってたから」
というか、やりたいことがうまくいかなくていい加減煮詰まっているところだったのだ。むしろありがたい。
体育館に戻って向き合う。
「何すればいい?」
「鬼ごっこだな」
「鬼ごっこ」
「……が俺の体に触ったらアウトだ。よろしく頼む」
分かるけれども。
靴紐を結び直して立ち上がる。常闇がぶわ、と黒影を纏った。
「用意はいい?常闇、黒影(ダークシャドウ)」
「いつでも」
「アイヨ!」
「よっし、いくよ!」
トントン、と地面を蹴って、ダッシュ。
即テレポートされると思っていたらしい常闇はちょっと虚を突かれたようで、しかしすぐに黒影を伸べて迎え撃った。確かに正しい判断だが、
「甘い!」
「っ!ダーク…」
そもそも有利なのはこちらである。ダークシャドウの頭と常闇の体の中間に移動して、勢いを殺さずそのまま突っ込む!
鳩尾の手前で拳を寸止めして、こつんとぶつけた。
「捕まえた」
「……流石だな」
***
夢中になって動き回って、気付けば最終下校時刻だった。
立ち回りを話し込んだり、弱点を指摘しあったりで、とても有意義な時間だったと思う。
「楽しかったなあ」
「………、また頼んでもいいか」
「うん、私も勉強になった。ありがと」
手を振って別れる。
少し歩いてからちらっと振り向くと、歩いていく常闇の背から黒影が伸び上がり、こちらに手を振ってくれているのが見えて、思わず笑みがこぼれた。