天下統一恋の乱
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朝まだきの静けさが残る中、微睡む意識で温もりを探す。
褥の中を手で探るが、寝る時にはあった温もりが無くなっていた。
(あれ…?才蔵さん…?)
まだはっきりとしない頭のまま何とか上半身を起こし部屋を見回す。
どうやら、部屋の中にはいないようだ。
(才蔵さん……どこに行ったんだろう…?)
褥からゆっくりと立ち上がり、覚束無い足取りで襖を開け廊下に出る。
そこはまだ闇が明けきらぬ庭が広がっていた。
肌寒い空気に軽く身震いし、両腕を少し擦りながら辺りに視線を移すと、桜の木の前にある縁側に座る影が見えた。
そこには朝焼けに照らされ淡く輝く銀髪に白い寝間着姿の才蔵さんが、静かに桜を見上げていた。
あまりにも儚く美しい横顔に暫し見惚れていたがふと我に返る。声を掛けるために数歩歩いた私の存在に先に気付いた綺麗な緋色の瞳が、優しい眼差しでこちらを振り向く。
「ごめん、起こしちゃった?」
「いえ、大丈夫です。こんな時間にどうしたんですか?」
縁側に座る才蔵さんの隣に腰を下ろし、その顔を見つめる。
「ん、ちょっと目が覚めちゃって」
そう言い再び桜の木へと顔を戻す才蔵さんを私は眺めていた。その顔は少し不安の色が滲んでいるような…いつもの余裕がないように見えた。
(…俺はもう、大丈夫だと思ってたんだけどね)
揺れる桜に重なるのは──…冷たい雨が降り続くあの日の忘れられない暗い記憶。
瞼を閉じれば未だに蘇る、親友との永遠の別れ。
…そう、忍は常に闇の中が世界の全て。陽の当たる場所は眩し過ぎて身を置く事が出来ない生き物。
分かってた筈だ、真っ暗闇な孤独の世界が自分の生きる道だと。──分かってた筈だ、忍は人並みの生き方など出来ない事を。
だがそんな俺に明るい光が出来た。
それは初めこそは合わず俺は蔑ろにしてきたが、その光はめげずに俺を照らそうと何度でも近付いてくる。
幸村も、……※※※も。
いつしかそれらの光は俺の生きる道を優しく照らし、温かい手で俺を導いてくれる。
(…本当に何度でも…何度でも、※※※は俺を救ってくれる。あの時貰った団子と※※※の笑顔が、俺を真っ暗な地の底から引き揚げてくれた)
桜から※※※に視線をやると、※※※は少しホッとしたような顔をした。
さっきまでの俺の表情は余程険しかったらしい。
「良かった。やっと才蔵さんの口許が柔らかくなった」
「悪かったね、心配かけて」
「ううん、いいんです。才蔵さんがいつもの才蔵さんに戻れたのなら」
華のようにふわりと笑って空を仰ぐ姿が愛おしい。
ああ、本当に俺は※※※がいないとダメになってしまったようだ。
俺は冷え切ってしまっている※※※の肩を温めるようにして抱き、同じように空を仰ぎ見た。
先程まで暗闇混じりだった空が明るく色付いてきている。
時期、夜が明けそうだ。
お前さんの笑顔で朝は来る
(そう思えるようになったのは、)(お前さんのおかげだよ)(…ありがとう)
7.10.22
褥の中を手で探るが、寝る時にはあった温もりが無くなっていた。
(あれ…?才蔵さん…?)
まだはっきりとしない頭のまま何とか上半身を起こし部屋を見回す。
どうやら、部屋の中にはいないようだ。
(才蔵さん……どこに行ったんだろう…?)
褥からゆっくりと立ち上がり、覚束無い足取りで襖を開け廊下に出る。
そこはまだ闇が明けきらぬ庭が広がっていた。
肌寒い空気に軽く身震いし、両腕を少し擦りながら辺りに視線を移すと、桜の木の前にある縁側に座る影が見えた。
そこには朝焼けに照らされ淡く輝く銀髪に白い寝間着姿の才蔵さんが、静かに桜を見上げていた。
あまりにも儚く美しい横顔に暫し見惚れていたがふと我に返る。声を掛けるために数歩歩いた私の存在に先に気付いた綺麗な緋色の瞳が、優しい眼差しでこちらを振り向く。
「ごめん、起こしちゃった?」
「いえ、大丈夫です。こんな時間にどうしたんですか?」
縁側に座る才蔵さんの隣に腰を下ろし、その顔を見つめる。
「ん、ちょっと目が覚めちゃって」
そう言い再び桜の木へと顔を戻す才蔵さんを私は眺めていた。その顔は少し不安の色が滲んでいるような…いつもの余裕がないように見えた。
(…俺はもう、大丈夫だと思ってたんだけどね)
揺れる桜に重なるのは──…冷たい雨が降り続くあの日の忘れられない暗い記憶。
瞼を閉じれば未だに蘇る、親友との永遠の別れ。
…そう、忍は常に闇の中が世界の全て。陽の当たる場所は眩し過ぎて身を置く事が出来ない生き物。
分かってた筈だ、真っ暗闇な孤独の世界が自分の生きる道だと。──分かってた筈だ、忍は人並みの生き方など出来ない事を。
だがそんな俺に明るい光が出来た。
それは初めこそは合わず俺は蔑ろにしてきたが、その光はめげずに俺を照らそうと何度でも近付いてくる。
幸村も、……※※※も。
いつしかそれらの光は俺の生きる道を優しく照らし、温かい手で俺を導いてくれる。
(…本当に何度でも…何度でも、※※※は俺を救ってくれる。あの時貰った団子と※※※の笑顔が、俺を真っ暗な地の底から引き揚げてくれた)
桜から※※※に視線をやると、※※※は少しホッとしたような顔をした。
さっきまでの俺の表情は余程険しかったらしい。
「良かった。やっと才蔵さんの口許が柔らかくなった」
「悪かったね、心配かけて」
「ううん、いいんです。才蔵さんがいつもの才蔵さんに戻れたのなら」
華のようにふわりと笑って空を仰ぐ姿が愛おしい。
ああ、本当に俺は※※※がいないとダメになってしまったようだ。
俺は冷え切ってしまっている※※※の肩を温めるようにして抱き、同じように空を仰ぎ見た。
先程まで暗闇混じりだった空が明るく色付いてきている。
時期、夜が明けそうだ。
お前さんの笑顔で朝は来る
(そう思えるようになったのは、)(お前さんのおかげだよ)(…ありがとう)
7.10.22