2年前───
ロンドンでの生活もすっかり慣れてきた頃。
「お嬢様、メロとニアから手紙を預かってきました」
キッチンでシチューを作っている
小百合に
ワタリは無地の白い封筒を渡した。
今日の昼過ぎ、サウサンプトン港で仕事を終え
Lとワタリはワイミーズハウスへ立ち寄った。
その時にメロが
「
小百合は来ないのか、なんで来ないのか」
と
小百合だけがワイミーズハウスに来てくれない事に癇癪を起こし、困り果てたワタリを見兼ねてエマさんが手紙を書いたらとメロを宥めた。
折角だから、字は書けないがニアも手紙を、とワタリは手紙を預かって来たのだ。
「わぁっ、嬉しい〜っ!!!」
歓声の様に明るく可愛い声がリビング内に響き
ソファに座っていたLは何事かとキッチンへ向かい
指を咥え
小百合の手に持っている手紙を物珍しそうに見た。
「メロとニアからのお手紙よ」と
小百合は丁寧に封を開ける。
白い無地の便箋が2枚。
1枚目はクレヨンでアルファベット1文字〝N〟とだけ書かれたニアからの手紙だった。
シャッと筆を走らせたような曲線の〝N〟だったが、
小百合にはまだ字が書けないニアが一生懸命書いたのだとひしひしと伝わってきた。
2枚目はメロから。
〝 Dear ,
小百合I am studying Japaneze.
(日本語の勉強をしてるよ)
Pleese teach me Japanesze.
(勉強、教えて)
I miss you. I want to see you.
(寂しい、小百合に早く会いたい)
M 〟
4歳のメロは字が書けるようになったばかりで
所々、間違えてはいるがこちらも気持ちが充分に伝わってくる。