揺蕩う
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「大丈夫だよ〜お仕事大変だねぇ…おつかれさまです」
「へへっ。麻希さんもおつかれさまです」
マサルはあの日以来、麻希の過去の話には
触れないようにしてる。
なので、自然と最近の出来事や趣味の話や
高田の面白い話、丑嶋の話、仕事の話になる。
今日もほろ酔いで麻希に丑嶋の話を持ちかけた。
「社長って鬼っすよね〜」
「え、そうかな?見た目は確かに鬼みたいに怖いけどねぇ、何かあったの?」
麻希に心配されたマサルは
数日前の出来事、債務者だった板橋と小堀の
話を簡単に話した。
「板ちゃんのダチと会って余計気分落ちました。
社長は受け入れろって言ってましたけど…
そんな簡単にむりッスよ…
鬼じゃないとあんな事出来ませんよ…フツー」
「ふふふっ。馨くんは凄く優しいよ」
「麻希さんだけにでしょー」
「違うよ〜馨くんはね〜ちゃんと悪い事は悪いって、罪悪感を感じられる人だよ。板橋さん?はきっと自分で漁船に乗る道を選んだんじゃないかなぁ。馨くんの事だからちゃんと他の選択肢も用意してたと思うけど…」
「まぁ、確かに。いや、でも、なんか、さびしくなるっス」
「…自業自得だよ」
麻希は甘いカクテルの入ったグラスを見つめ静かに呟いた。
麻希さんと仲良くなってだんだん麻希さんがどんな人か分かってきた。
この世の奇跡っていうくらい優しい人で
でもどこか他人に冷たい一面も持ち合わせてる不思議な人。
そんな麻希の方へ目を向けると
にこっと微笑んでくれた。
身体が温かくなる、その微笑みに吸い込まれそうになる。
慌てて目をそらし、時計を見ると
短い針が0時を指そうとしていた。
「あ!すみません!時間!」
「あ、ほんとだねっ、楽しくてついつい…遅くまでごめんねぇ」
どんな話でもにこにこと聞いてくれ
相槌も打ってくれるし笑ってくる。
話し上手だし、相手が喜ぶような言葉を選んで話してくれるので居心地良くて時間を忘れるほど話してしまった。
「電車ッスよね?駅まで送りますッ!」
「馨くんが迎えに来てくれるみたいだから大丈夫だよ?ありがとう」