柄崎の初恋
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
屋上で話して以来、学校ですれ違うと
「柄崎くん」と可愛い声で呼ばれ
他愛もない会話をするようになり
たまに一緒に帰ることもあった。
今まで眺めるだけだった初恋の女の子と
少しずつ距離が縮まっていく。
それが嬉しくてたまらない。
「おい、柄崎。卯咲月と仲良いーのか?」
「お、加納じゃん!もう怪我は平気か?
つーか聞いてくれ、卯咲月すげェー可愛いんだわ」
「確かに、可愛い顔してるな」
「いや、それが顔だけじゃねェーンだって」
柄崎は麻希の優しさを加納に話し出した。
人を疑わないし悪く言わない、悪口なんて以ての外。
いつものほほんとふんわりした雰囲気だが
自分の意見を言えるちゃんと芯のある真っ直ぐな心を持っている。
不良連中と連む柄崎は先生達に良く思われておらず
柄崎と仲良くしてる所を見た学年の先生は
麻希に「柄崎と仲良くしてもろくなことないぞ」と
何度も注意をした。だが、麻希は
「不良だからって柄崎くんの事を悪く言わないで下さい」と反論した事があった。
麻希の優しさに触れる度、柄崎の恋心は
大きくなっていた。
「性格も可愛いのか」と加納は呟くと
「当たり前だろ」と柄崎は何度も頷いた。
「不良してる俺を庇うとか…どんだけ優しいンだよ。
しかも、この前なンか『蟻踏んじゃダメ』とか
言われてよォ。もうほんとあの可愛いさ奇跡だわ」
「あー、成績悪い奴にはすげェ厳しいあの先生だろ?
マジクソだな。つかよ、柄崎。
そンなに好きなら告れば?」
「なっ!?」
加納にそんな事を言われ思わず変な声が出た。
全身が熱くなる。
「そう言えば…卯咲月って暴走族の総長と
付き合ってるンだっけか?」
「まぁ、噂では…」
噂は本当かどうか、柄崎は直接本人に聞けないでいた。
もし、噂が本当で滑皮と付き合ってるなら…
もし、滑皮のお気に入りだったら…
滑皮が怖いんじゃなくて真実を知るのが怖かった。
付き合わなくていい、と言えば嘘になる。
「どーすっかなぁ…」
教室の窓から見える曇り空を柄崎はぼんやり眺めた。