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爆豪くんと、事故でキスをしてしまった。
…あの日以来、爆豪くんからの嫌がらせはぴたりと止んだ。
とは言っても、まだ2~3日程しか経っていないけれど。
爆豪くんは私を視界に入れまいと、無視し続けているようだった。
『…』
嫌がらせが終わったのはいいことだ、うん。
ずっと迷惑してたんだから。
むしろ清々するくらい。
うん、良かった良かった。
「では、今から隣の席の人と実際に英文を読んでみましょう」
英語の先生がそう言うと、クラスメイトはみんな隣の席の子と向かい合った。
そうだ、今は英語の授業中。
テスト前だし、集中しなきゃ。
『…』
私はちらりと爆豪くんの方を伺い見る。
「…」
爆豪くんはこちらを見ようとしない。
「34ページの大問1の例文を、上から読んでいってくださいね~」
「Tony was…」
「Tony was…」
クラスメイトが隣の席の子と朗読をし始めるのに、爆豪くんは知らん顔をしている。
『ねぇ爆豪くん、私達も…』
「…」
『…』
無視かよ…!
あぁ、イライラする。
授業中ということもあり、本人に文句を言うことが出来なかった私は、ぼそっと一人呟いた。
『…いつまで引き摺ってんの…』
「…あァ!?」
私の呟きは、彼の耳に届いていたみたい。
『(あ、なんか、やらかしたかも)』
そう思った時には、既に遅かったようで。
ガンッ!!
『っ!』
全力で机を蹴り上げられた。
その勢いに乗って、机が派手に音を立てて倒れる。
机の中に入れていた教科書やノートが辺りに散乱した。
一瞬にして、ざわっと教室内がざわつき始める。
「勝己!?」
「爆豪くん!」
爆豪くんの友達や先生が、彼を窘める声が聞こえる。
しかし彼はそれにさえ返事をせず、ズカズカと大きな足音をたてて教室のドアの方へと向かって行く。
「待ちなさい、爆豪くん!」
先生の静止の声を無視し、爆豪くんはそのまま教室を出て行った。
「爆豪のヤツ、意味分かんないね…」
「モカ、大丈夫?」
「ぼ、僕も手伝うよっ…!」
友達が何人も集まってきて、私の机を元あったように立ててくれる。
緑谷くんもだ。
私もそれに倣って、散らばった教科書やノートを手元に集めた。
『…』
「カフェさん、大丈夫…?」
『あ、うん…へーき。ありがと…』
へらっと笑いながらそう答えた。
けれど。
『(本当は…少し、怖かった)』
今までとは明らかに違う力、苛立ち、あの態度。
私は"何も悪いことはしていない"と自分に言い聞かせ、必死に平然を装った。
「カフェさん、怪我は無い?」
『は、はい…大丈夫です』
英語の先生が私の元へやって来てくれる。
「このことは担任の先生に報告しておきます。今は一旦、授業を再開しますね」
『はい』
「ではカフェさんは前の席の子と三人グループで例文を…」
正直、その後の授業は頭に入って来なかった。
そして、爆豪くんはその日一日、教室に戻って来ることはなかったのだった。