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《「ターイムアップ!!」》
『っ!』
プレゼント・マイクの声が聞こえて、ハッとする。
「第二種目、騎馬戦終了ー!」
湧き上がる歓声と、ミッドナイトの声に頭が追い付かない。
『え、え…?』
騎馬戦終了って…なんで…?
私まだ何もしてないのに…?
『どういう…こと…?』
私は余程不安そうな顔をしていたのだろうか。
普通科の…心操くんと目が合うと、彼はニヤリと口角を吊り上げた。
「俺の"個性"」
『…!!』
そんな心操くんに何を言う間もなく、プレゼント・マイクの声と共にモニターに順位が発表されていく。
《「一位 轟チーム!!二位 爆豪チーム!!…
三位 鉄て…アレェ!?オイ!!心操チーム!?いつの間に逆転してたんだよオイオイ!」》
『さん…い?私達のチームが…?』
周りからの拍手と歓声を受けてようやく、自分が三位なのだと理解した。
「ご苦労様」
心操くんはそう一言言い残して去って行った…。
《「四位 緑谷チーム!以上合計四組が最終種目進出だああー!!」》
再度、ワァアと辺りに歓声と拍手が響く。
いや待って、頭が追い付かない。
全然嬉しくない、何これ。
『ねぇ…青山くん、尾白くん。私今の…騎馬戦の記憶が無い…』
必死に思い返そうとするも、なんだか騎馬戦の時の記憶だけすっぽりと抜け落ちたような感覚だ。
恐る恐る、私の隣に立つ尾白くんを見上げる。
すると尾白くんも、何が何だか分からない、といった表情を浮かべていた。
「俺も騎馬戦やってる途中で一瞬、我に返った感じはあったけど…終盤までほぼ記憶無いよ…」
「…」
青山くんもこくりと頷く。
『さっき私が"今の何だったんだろう"って考えてた時にね、心操くんは"俺の個性"って言ってた…だから騎馬戦中の記憶が無いのは彼の"個性"のせい…ってことなんだと思う』
私は、去っていく心操くんの後ろ姿を眺めながら話した。
尾白くんも青山くんも、心操くんの背中を見つめている。
「記憶を喪失させる"個性"、ってとこカナ?」
「いや…もっとなんかこう…洗脳に近いい感じの、だと思う…」
『うん、たぶんそのへんの"個性"だね…問題はいつから彼の"個性"にかかってたのか、だよね…分かんないな…』
「僕みたいに派手に発動するなら、すぐ気付くはずだからネ☆」
騎馬戦が始まる時の記憶も無いから、発動されたタイミングはそれ以前のはずだ。
「…!もしかして」
『あの時…』
そこで尾白くんと私はピンと来る。
「『挨拶した時…!』」
そうだ。
初めて彼と話した時、私は自分が話している途中で記憶が飛んだ。
"なぁ、そこのA組三人さぁ"
"き、君は…この前A組に宣戦布告に来ていた普通科の…?"
"やぁ、君も僕達と組みたいのかい?もちろん大歓迎さっ☆"
"あれ?でも確かA組にリベンジするとか言ってなかっ…"
「そうだ、あの時だ!間違い無いよ!」
話を聞く分には私達三人は同じタイミングで記憶が飛んだみたいだし…
『彼と目を合わせると記憶が無くなる…とか…?』
「いや、僕は挨拶の時、彼とは目を合わせてないんだよね…」
『あぁ…』
何やら薔薇を咥えながらポーズを決めていた青山くんを思い出す。
青山くんはあの時心操くんのことを全く見ていなかったので、目を合わせると記憶が無くなるという訳では無さそうだ。
「あと俺は記憶が一切無い訳ではないから、やっぱり記憶を喪失させる"個性"じゃなさそうだな…」
『あぁ〜そっかぁ…』
考えれば考える程分からない…。
《「一時間ほど昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!」》
私達の思考を遮るかのように、プレゼント・マイクの声が響く。
『…とりあえずお昼にする?』
「うん、色々考えたって…もう終わったことだし、今はとりあえず中断しよう」
尾白くんの"もう終わったことだし"という言葉が酷く自分の心に響いた。
『…そだね』
口ではそう言ったものの。
こんな訳の分からないまま、終わりたくない…
というのが本心だった。