08
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『はぁ、はぁ…』
息が上がる。
そろそろ私も限界だ…
元々走るのは得意じゃないし、もう余裕は無い。
出来るだけ他の生徒達の妨害に遭うのを回避しないと。
そう思っていた矢先、自分の前に氷の道が出来ていることに気付いた。
『これ、もしかして轟くんの"個性"…?』
突然溶けたりはしないようなので、これを活用しない手は無い。
スタート時にも轟くんの氷の上を滑って進んだおかげか、スケートをするように氷の上を滑ることが出来た。
そう、慣れたのだ。
『(ら、楽だ…全然足が痛くない…しかもちょっと楽しい!轟くんありがとう…!)』
しばらく滑りながら進んでいると。
『…あ、ゴールだ!』
やっと小さくゴールが見えてきた所で、何やら呻き声が聞こえる。
「う…うぅ…」
その生徒は氷の道の傍らで横たわっていた。
今は真剣勝負の最中なんだから気にしてなんか…
『…』
倒れている人の真横を通り過ぎることくらい…
『…』
で、出来…
『…』
やっぱり出来ない…
『あの!大丈夫ですか?』
「…え、君は?」
氷の道から一旦降りて足を止めると、男子生徒は驚いたように顔を上げた。
『怪我してるの…?立てる?』
手を差し出すも、彼は私の手を取ろうとはしなかった。
「地面の爆弾を踏んで吹き飛ばされたと思えば、今度は前方から飛んできた氷やら爆発やら爆風やらで更にやられちゃって…」
"氷""爆発""爆風"と聞いて、私は確信した。
轟くん、爆豪くん、爆風は…さっき飛んでった緑谷くんだ。
『ごめんなさい、それ私達A組のせいだ…』
転んだ彼の周囲には爆弾は無く、きっとこの辺の爆弾は彼がほとんど起爆させてしまったのだろう。
彼の身体はボロボロだった。
『待って、すぐに手当てするから!』
私は彼の上体を起こし、足から回復させていく。
「い、いいの!?こうしている間にも…その、他の生徒達が…」
『あはは…それは言わないでよ』
ドタドタと私の横を駆け抜ける足音もあり、やっぱりライバル達が先に進んでいることを思うととても悔しい。
でも、そんなのは手当てを早く終わらせれば済む話だ。
「君、A組なんだね。僕はB組の庄田二連撃。君は?」
『私はカフェモカ…A組のみんなが、ごめんなさい』
私は"個性"を発動する手に力を込めた。
「なんで謝るの?」
『だって、こんな怪我…』
擦り剥いたり切り傷があったりと、庄田くんの身体は痛々しかった。
「カフェさんの気持ちは凄く有り難いよ。でもA組の彼等は間違っちゃいないさ。"コースアウト以外なら何でもOK"っていうルールを守って、彼等は"戦ってる"んだ」
『!』
そこまで聞いてハッとする。
…私は馬鹿だ、と思った。
彼等が他のクラスの子にまた"迷惑を掛けた"と思ってしまったのだ。
彼等が必死で戦った証を、彼等の見ていない所で勝手に謝るのは失礼だ。
「怪我は大丈夫だよ。僕も自力で戦いたいんだ。だからほら、先に行って?」
患部に手を翳していた私の手を、彼はやんわりと外した。
「さぁ」
『…っ』
彼に促された私は何も言えずに立ち上がり、彼を残してゴールに向かって走り出した。