07
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「………、~!…!!…~、」
なんだか大きな音がする。
『(うぅーん…切島くんの声…?)』
ぼんやりとしていた頭が徐々に覚醒していく。
ゆっくりと目を開くと、そこには…
「…91ッ!92…!93!!」
なぜか全力でダンベル上げをする切島くんが居た。
『…何してんの?』
なんか色々ツッコミどころがあり過ぎてどこからツッコめば良いのか分かんないけれど、とりあえず一言絞り出す。
すると切島くんはいつもの笑顔をこちらに向けた。
「あぁ、起きたか!これは気にすんな、アレだ!…ちょっとひと汗かきたくなっただけだ!」
『いやお風呂上がりだよね?』
汗が気持ち悪いからお風呂に入ると言っていたのに、一体どうしたと言うのか。
『あ…それより、いつの間にか寝ちゃってたみたいでごめんね』
「あぁ構わねぇよ。んじゃ、そろそろ帰るか!」
ダンベルを床に置き、切島くんはタオルで汗を拭っていた。
筋トレに熱心なのは良いことだ。
『あ、ほんとだ。もうこんな時間…!』
「ちょっと服着替えてくるわ!すぐ戻る!」
スタスタと部屋を出て行った切島くんを見て、私も着替えなきゃ、と制服を手に取った。
制服に着替えながら、お風呂上がりの切島くんの姿を思い返す。
『(髪下ろしてるの、久しぶりに見たなぁ)』
中学時代の彼を思い出して、なんとなくドキドキした。
脱ぎ終わった切島くんの服を畳み、彼が戻って来るのを待つ。
『(…いいにおいしたなぁ)』
ぼーっとしていると、切島くんが戻って来た。
「お待たせ!…って、制服に着替えたのか?」
『うん、服ありがとね。洗って返すから持って帰っても良い?』
「それくらい良いって!さ、行くぞ」
『あ、でも服っ…』
「そこ置いといてくれたらいいから!」
私の腕を引っ張り立ち上がらせてくれた切島くんは、そのまま玄関へと向かう。
私は慌ててその後を追った。
親御さんに挨拶をしておきたかったけれど、今日はもう寝てしまったらしい。
「チャリ出すわ!…ん、後ろ乗れよ!」
『うわ~二人乗りとかなんか久し振りだね!後ろ失礼~!』
こんなことをするのは中学生以来で、ちょっと懐かしさが込み上げてくる。
私が後部席に座ったのを確認すると、切島くんは慣れたように自転車を漕ぎ出した。
『切島くんの髪下ろしてるところ、久し振りに見た気がする』
「ん?あぁ、高校入ってからはずっと髪上げてたからなー。変か?」
『うぅん、なんか幼い。可愛い』
「はぁ!?あんまからかうなよ!」
『うわ、ちゃんと前見てよ!?』
"可愛い"という言葉に、切島くんはこちらを振り返るが、そのせいで自転車がグラつく。
咄嗟に切島くんの服の裾を軽く掴むと、ふわりとまた彼のにおいがした。
『(やっぱこのにおい、落ち着く…)』
ちらりと目の前の切島くんの背中に目を遣ると、以前よりその背中は大きく、逞しくなったように感じた。
これは中学時代から体力作りに励んできた、彼の努力の証だ。
『(格好良いなぁ)』
そして切島くんと他愛のない話をしていると、すぐに家に着いた。
「はーい切島号、カフェ家に到着~!」
『あはは、もっと別の名前無いの?』
「おい、文句言うならもっかいウチ連れて帰んぞ!?」
『冗談だって、遅くまでありがとね』
「(…半分本気なんだけど)」
自転車から降りながら、私は切島くんにお礼の言葉を口にする。
「おう!明日はどうする?やるか?」
ボクシングのような構えを取る切島くんに、私はうぅーんと考える。
たぶん組み手のことを言っているのだろう。
『明日は筋トレにしない?体育祭前だし、体力作りしていきたいかも』
「お、いいな!じゃあ明日いつもの時間で!」
いつものように話はとんとんと進み、明日の約束をする。
「じゃあまた明日な!」
『うん、気を付けてね!おやすみ』
切島くんは私の言葉に、ひらひらと手を返して去って行った。
結局、お風呂上がりの切島くんがどうして全力でダンベル上げをしていたのかは謎のままだった。
「(うぉおおお…!眠ってるモカのほっぺに…き、キスしちまったぁあああ!!)」