05
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彼は"やってしまった"と言わんばかりにハッとする。
「わ…わりィ!怒鳴るつもりはなかったんだ…!」
先程と違って控え目に私の顔を覗き込んで顔色を伺う切島くん。
『…』
あぁ、何してるんだろうな私。
自分から死柄木弔の名前を出しておいて、それについて深く突っ込まれたら嫌だ、なんて。
我儘にも程がある。
「なぁ…モカ〜…悪かったよ…」
『………私…』
「!お、おう、何だ?」
彼に心配させたのは私自身なのに。
『…私、アイツと何もしてないよ…』
涙が出そうになるけれど堪える。
これ以上切島くんを困らせて、心配させてどうするんだ。
でも変な誤解だけは解いておきたいと思った。
『…アイツは私の"個性"を利用して手下にしようと考えたんだと思う』
「…」
『アイツの所に飛ばされてから…アイツに顔面を握り潰されそうになった…首を絞められた…!目ェ逸らしたら…殺すって言われた…!』
「…!」
もちろんそうなったのは私の弱さが何よりの原因だ。
私は悪くない、なんて自分を正当化するつもりはない…けれど…。
『キスもしてない…!あれは…アイツが…アイツが私の涙を…舐め…っ』
言い終わらない内に、切島くんは私の手を取って自身の身体の方へゆっくりと引き寄せた。
切島くんの大きな手が、彼の腕の中へと私を導く。
そのゆっくりとした動きは、"嫌なら押し返せよ"という意味にも感じ取れた。
こんなにも優しい切島くんを、今更拒否できるはずがない。
「もう言わなくていい…」
ぽすっと彼の胸元に収まったかと思えば、切島くんの声が自分の耳のすぐ近くで聞こえた。
「すまねェモカ…俺、そんなことになってたなんて知らねぇで…ひでぇこと言っちまった…!ごめん…ごめんな…!」
彼の腕が私の背中に回される。
ゆっくり、とても力強く。
『こ…怖かったぁ…!!』
堪えていた涙が溢れ出た。
…本当に死ぬかと思った。
首を絞められた時なんかは、後5秒程遅ければ息絶えていただろう。
「モカ…俺、お前のこと守りたかったんだ。でもお前が敵と居るのを見て血の気が引いた。自分の力の無さに腹が立って、さっきはお前に当たっちまった…」
子供に言い聞かせるかのように、頭を撫でながら優しくゆっくりと語ってくれる切島くんに、また目の奥が熱くなる。
「お前のことずっと傍で見てたつもりだったのに、俺の知らない所でお前が敵と居る…って。受け入れたくなかったんだ」
『切島くん…』
「無事で良かった!もうお前をどこへも行かせたくねェ…!!」
ぎゅうっと腕の力を強めながら切ない声で言う切島くんに、自分の胸が締め付けられる。
『ごめんね、切島くん…いっぱい心配かけたね…ごめん…ごめんね…』
「バッカ、謝んじゃねーよ!」
身体を少し離されたかと思えば、ゴシゴシと彼の制服の裾で目元を拭かれる。
ちょっと痛い。
けれど、真っ直ぐな彼なりの優しさを感じた。
『でも心配かけたと言えば切島くんもだよ…』
「え、俺?」
彼には覚えがないのか、驚いた顔をしている。
『私達が靄敵に散り散りにされる前…爆豪くんと二人で敵に飛び掛かって行ったでしょ?』
"うぉおおおっ!!"
"爆豪くん!切島くんっ!!"
"その前に俺達にやられることは考えなかったか!?"
切島くんは、あー…と苦笑する。
「あン時は必死でさ!何とかしねーとって思って、気付いたら飛び出してたんだよな〜…」
『心臓飛び出るかと思ったよ…ほんと、男らし過ぎてたまに困る』
苦笑して見せると、切島くんは何も言わずになんだか照れ臭そうに笑っていた。
あれ、照れさせる気は無かったんだけどな。
『え、えっと…そろそろ帰る?』
「お…おう!送ってくぜ」
『ありがと』
お互いに突然恥ずかしくなってきて、私達はそれを隠す為にいつもよりたくさん話しながら自宅へと足を進めた。
(切島くんが、)
(モカが、)
((無事で良かった))