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『…』
突然シャツを捲くられた私は一瞬の静止の後に、声を上げた。
『んぎゃあ!?』
「間抜けな声出すなや」
『だ、だって、え、ちょっ…』
待って待って、意味が分からない。
どういう状況なのこれ。
クラスメイトにいきなりシャツ捲られるってどういうこと?
私のおなか丸見えだよ?
誰得なの?
ていうか女子の服をいきなり捲くるなんて。
一体どういう神経してんだ。
「…」
『あ…あの…』
爆豪くんは特に何も言わずに、私の腹部をまじまじと見つめている。
「…」
『爆豪くん、その…』
何をそんなに真剣に見ることがあるのか。
普通に恥ずかしいんだけど。
おなかなんて脂肪の密集地じゃん。
『や…やめ「穴は?」』
爆豪くんは静かに私を見上げながら、そう問うた。
『えっと…あな…?』
"穴"というのは…
"緑谷く ドスッ "
"穴"と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、治崎によって腹部に負った大怪我のこと。
『治崎に開けられた穴…おなかの怪我のことかな』
私が静かにそう言うと、爆豪くんは表情を変えずにこちらを見た。
「それ以外に何があんだ」
あの件は大きなニュースになっていたし、爆豪くんが知っていてもおかしくないか。
「どこにも怪我した痕なんざ無ェじゃねーか。デマか?」
『…デマなんかじゃないよ、治ったの』
落ち着いた様子でそう言えば、爆豪くんは眉を顰めた。
「治ったァ?ふざけんな、プロヒーローと同じ怪我負って治るわきゃねェだろうが」
疑いの目を向けられ、私は苦笑する。
そりゃ信じられないよね、私だって信じられなかったんだもん。
私は、自分の身に起こったことを爆豪くんに話した。
私の腹部には、治崎の"個性"によって確かに握り拳程度の穴が空けられたこと。
直後、治崎が気絶したため、その"個性"は強制的に解除されたこと。
通常であれば出血多量になるところだが、私の"個性"の場合は違ったケースで、個性細胞が患部に出血凝固させた後に回復をしていたこと。
"個性"が、私の命を守ってくれたこと。
「…」
全てを聞き終えた爆豪くんは、妙に納得した様子だった。
『…まぁ…そんな感じ!もう良いでしょ、手退けてよ恥ずかしい!』
「ふーん…」
爆豪くんは小さく声を漏らしながらも手を離した。
かと思えば、爆豪くんはベッドから立ち上がる。
そしてスタスタと扉の方へと歩いて行った。
『あれ、もう帰っちゃうの?』
「寝る」
相変わらずツーンとした様子の爆豪くん。
何だ、怪我の具合を確認しに来ただけだったんだね。
『そっかぁ…あ、爆豪くん心配してくれたんだよね、ありがとね!』
部屋の扉へと向かって歩いて行く爆豪くんの背中にお礼の言葉を掛けると、彼はぴたりと止まった。
そして、こちらへと振り返る。
「は?誰がテメェの心配なんざするかよ」
『あれ、違った?恥ずかし…』
爆豪くん、怪我の心配をしてくれたんだと思ったけど違ったんだ。
「自惚れてんじゃねェぞ」
『うっ…そんなつもりじゃ…』
「…」
否定したのがいけなかったのだろうか?
爆豪くんは、ベッドに座る私の元まで戻って来る。
そして私を見下ろすように立ち、言葉を続けた。
「しかも自分から敵んトコ突っ込んで行ったそうじゃねェか。んで、結局このザマかよ。テメェの力量くらいテメェで把握しとけやクソボケが」
『うぅっ…!ごもっともです…』
爆豪くんにド正論をかまされ、何も言えなくなる私。
うん、あの時は私がエリちゃんと緑谷くんに向かって飛び出したからいけなかったんだ。
私の不注意が招いた結果だ。
「周りに迷惑掛けてんじゃねェよ」
爆豪くんのその一言が、ずんっと頭に重くのしかかってくる。
『…』
じんわりと視界が滲んだ。
あれ、私、何泣きそうになってるんだろ。