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それからどれくらいの時間が経ったのだろうか?
看護師さんから"モカの治療が終わった"と聞いた俺は、モカの病室へやって来た。
"僕も行く"という緑谷を連れて。
部屋を出る前にまた看護師さんに引き止められそうになったが、"今度は絶対うるさくしない"と約束をして部屋を出てきた。
「失礼します」
ガラリと扉を開くと、リカバリーガールと医師、看護師さんが医療器具を片付けているところだった。
少し忙しそうにしている。
「おぉ、来たかい」
「はい…」
「…ッス」
振り返るリカバリーガールに俺は軽く頷き、ベッドに横になるモカを見遣る。
「ん…あれっ…!?」
俺は目を見開いた。
「なんかいろいろ…取れてる…!?」
先程までモカの腹部を覆うようにしていたたくさんの管のような医療器具はすべて取り払われていたのだ。
代わりに腹部には布のようなものが被せられ、患部が見えないようになっていた。
「もう器具外して大丈夫なんスか…!?だってさっきまであんなにっ…」
「あぁ、安心しな。後でまとめて説明するからね」
「あ、ウス…」
「アタシたちゃ少し離れるけど、しばらくここに居てやりな。余計なことはするんじゃないよ?」
「はい…!」
リカバリーガールは医師と共に、忙しなく部屋を出て行った。
なんだなんだ、どういうことなんだ。
「…」
俺はベッドの上で眠るモカを見つめる。
「モカ…」
管等の医療器具は取り払われている状態のモカ。
患部は、掛けられた布によって見えなくなっている。
だが間違い無く、あの布の下には穴が…空いていた。
これは…どういうことなんだ…?
モカは、死なねぇのか…?
「…」
…それでも、腹部に穴を空けられたことには変わりねえ。
不安は拭い切れねえ。
モカが目を覚ますまでは。
「…頼む、モカ…頑張ってくれ…頼む…頼むから…」
俺はモカの手を握った。
「切島くん、大丈夫だよ…!」
「緑谷…」
「きっとカフェさんは大丈夫だから、そんなに思い詰めないで…」
緑谷は優しく声を掛けてくれるが、俺は俯いた。
「…わりぃ緑谷、ちょっと席外してくんねーか」
ひでぇことを言うもんだと、自分でも思う。
緑谷はクラスメイトであるモカを心配して…
一人だと暴走しがちな俺を心配して…
着いてきてくれたというのに。
「モカと二人きりで話がしてぇんだ。頼む」
モカは眠ってるし、"話も何も"と言われればそこまでだが…
俺はそれでも、モカと二人きりになりたかった。
「…うん、分かった」
緑谷は何か言いたそうだったがそれを飲み込んで、部屋を出て行った。
静かに扉の閉まる音がする。
すまねぇ緑谷。
「…」
俺は心の中で緑谷に謝り、モカの隣の椅子に腰掛けた。
「…モカ…」
目の前のコイツを呼ぶ俺の声は掠れていた。
『…』
モカはもちろん俺の声には反応しねぇ。
ずっと眠っている。
「…やっぱ、おめーは凄ェや」
俺はモカの手を取り、ぽつぽつと話し始めた。
「漢気溢れ過ぎて…マジでカッコイイよ、おめーは…。いつまで経ってもおめーは俺の中のヒーローの一人だ」
モカの手を握る俺の手に力が入る。
「大切な仲間で、クラスメイトで…」
モカはぴくりとも動かない。
「そんでもって、俺の好きなヤツだ」
…これだけは、死んでも変わらねェ。
生まれ変わっても俺はモカを見つけ出して、そんで、また心から好きになると思う。
「なぁモカ…目ェ覚ましてくれよ…」
室内に俺の掠れた声が響く。
まだ、言ってないことがあるのに。
ずっと、好きだったのに。
これからも、一緒に居てェのに。
「頼むから…死なねぇで…」
俺は眠るモカの頬に手を添え、椅子から立ち上がる。
「(…こんな時にしか"言えねぇ"俺って、マジでダセェな…)」
すり、とモカの頬を指で撫でた。
モカの顔を上から見下ろすと、コイツの顔に俺の影が射す。
「好きだ、モカ」
俺はモカの唇に、静かに自分のそれを重ねた。
***切島視点終了