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その日の夜。
切島くんと私は、私の部屋で宿題に励んでいた。
「うぐ…っ!分っかんねェエ…!」
『やっぱ校外活動で授業受けてなかった分、勉強は結構置いて行かれてるなぁ…』
切島くんと私は苦笑した。
別途設けてくれる補習で頑張るしかないか。
『…』
なんか集中力途切れちゃったな。
切島くんは…
「…」
クルクルとペン回しをしている。
彼も集中力が途切れてしまったようだ。
『…にしても、校外活動さぁ…なんか凄かったねぇ』
「俺はまずお前と同じ体験先だったことにビビったわ!」
『お互いに言ってなかったもんねぇ~』
私は切島くんにあははと笑う。
『…』
ふと脳裏に浮かぶのは、発砲犯と戦ってボロボロになった姿の切島くん。
『…』
「ん?モカ…?」
『切島くん…』
「おう、どうした?なんかあったか?」
切島くんが私の顔を覗き込んでくる。
いつもはこうやって、自分よりも人のことを心配してくれる切島くんだけれど。
そんな彼が、いつも私を抱き締めてくれるけれど。
『…』
「!」
私は切島くんに抱き着いた。
「なっ…え、モカ…!?」
"個性"発動時以外に私から切島くんに触れるのは稀なので、切島くんはかなり驚いているようだ。
彼は少し上擦った声を出しながらも、私の身体を優しく抱き留めてくれる。
『校外活動で切島くんが発砲犯を追って行ったあの時ね…切島くん、男らしかったよ』
「お、おう…!サンキュ!」
本当はもう、あんなボロボロな切島くんを見たくない。
心臓が保たない。
けど、
『…格好良かったよ!』
あの戦いで切島くんが何か"スッキリ"したのなら、私からは何も言わないでおこう。
「やっべ…なんか、すっげぇ恥ずかしンだけど…」
『え?』
身体を少し離して彼の顔を見る。
すると彼は耳まで赤くして目を逸らし、困ったような顔をしていた。
普段、何気なく切島くんからハグしてくれる時はこんな顔しないのに。
「…」
『…』
そんなに意識されると、こっちまで恥ずかしくなってくる…。
「…」
『…』
「…モカ」
『ん…』
切島くんが私の頬に手を添えた。
ちらりと切島くんの方を見上げると、真剣な表情の彼と目が合った。
「…」
『…』
何だろう、この…甘くて柔らかい雰囲気は。
なんか恋人同士みたいな感じだ…
切島くんから目が離せない。
「…」
『…』
…キス、とか、してしまいそうな…感じだ…
「モカ、」
『…!』
切島くんの手が私の頬を優しくゆっくりと撫でたその時。
ヴヴッ
「『!』」
私のスマホが震えた。
私達は弾かれたように身体を離す。
「お、おぉ…!?メールか?」
『た…たぶん!』
言いながら私は自分のスマホを手に取った。
『あ、天喰先輩から返信来たよ!』
「おー、何て?」
『えっと…』
切島くんに促されながらスマホの画面を確認する。
『…"個性は寝たら治った、心配させてごめん"って!』
「そうか、先輩治ったのか!良かったなァ!」
『うん、一安心だよ~…』
切島くんと私はへらりと笑い合った。
もしヒーローを目指す自分の、"個性"が使えなくなったら。
『…』
想像して寒気がした。
「…そろそろ宿題の続きやっか!」
『…そうだね、終わらせよう!』
そう言って私達は机に向かったのだった。
いまだ心臓がドキドキと音を立てているのを、必死に隠して。