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切島くんはしっかりと構え、その場に立っていた。
そうだ…大丈夫だ。
だって硬化の切島くんだもんね。
未だに心臓がドクドクと音を立てている。
『(どんな時も冷静に…!落ち着け…!私が今すべきことは…っ)』
私は腕の中に居る天喰先輩に視線を落とした。
「うぅ…」
『(先輩の意識はあるな…結構しっかりしてる…)』
続いて私は天喰先輩の左腕に目を遣る。
『…』
撃たれた所、出血してる…
発砲されて一番多いのは確か失血死。
それは避けなきゃいけない…
皮膚の腫れはまだない…けど、変色してる…!
『先輩、失礼します!』
私は天喰先輩の返事を聞かずに"個性"を発動した。
回復は後だ…今は一旦、痛み止めと止血だけさせる!
んで、一刻も早くこの場を離れなきゃ…!
まだ犯人や仲間が居るかもしれないし、発砲される可能性も残ってる。
いつもみたいにゆっくり"個性"を発動してる場合じゃない!
『ふっ…!!』
私は全力で"気"を手先に込めて天喰先輩の左腕に翳す。
いつもより集中したためか、血はピタリと止まってくれた。
『(よし、止まった!急いで逃げなきゃ…)』
「ヒーローが撃たれたぞ!!」
辺りはワァァアと逃げ惑う人々で溢れ返っている。
『先輩!立てますか!?』
「う…」
『天喰先輩…!』
私は先輩の両手を握った。
ほぅ…と私達の手にどこからともなく光が宿る。
私は握った両手から"気"を流し込み、少しだけれど強制的に回復をさせた。
すると…
「思ったより痛くない…!」
天喰先輩はムクッと上体を起こした。
「先輩!大丈夫なんスか!?かっけぇ!!」
「いや…。これは…君が"個性"を使ってくれたから…?」
『!…私の"個性"効いてるんですね…!良かった…!』
天喰先輩の無事が確認出来たため、彼に肩を貸しながら私は立ち上がる。
「何やこのポンコツはぁー!」
銃を持ちながら叫ぶ男。
『(アイツが発砲したのか…!)』
「タコで捕まえる…」
天喰先輩は手を前に突き出し、バッと構えた…が。
「発動出来ない…!?」
『え…!?』
なぜか天喰先輩の"個性"は発動されなかった。
その間に切島くんが逃げる男を追うべく駆け出した。
『きりっ…レッドライオット!!』
「悪ィ、ここ任せた!」
「来なボケェ!!」
「待て早まんな!下手に追うと噛まれるぞ!」
次に、ファットガムがそう言いながら切島くんを追って駆け出す。
「サンイーター、キュアヒール!無事ならここ任すぞ!すぐ他のヒーローが来る、協力しろ!」
「無事だけど発動しない!」
「…!?イレイザーでもおんのか!?」
何だろう、この薄気味悪い感じは。
胸騒ぎがする。
『…とりあえず、市民の避難誘導をします!まだアイツ等の仲間が居るかもしれません!』
「よっしゃ頼んだで!」
ファットガムは私に頷き、今度こそ駆け出して行った。
『(切島くん…大丈夫…だよね…?)』
切島くんのことが気になるけれど、ファットガムが居てくれれば大丈夫だ、きっと。
それに切島くんは強い。
大丈夫だ。
『…』
辺りは逃げ惑う人々で溢れ返っており、こちらを気にする者等居なかった。
敵の仲間は…居なさそうだ。
まだ警戒は解けないけど。
『(市民の避難誘導を自ら引き受けたけど、まずは…)』
「"個性"がっ…な、んで…」
膝から崩れ落ちる天喰先輩。
『(先輩を何とかしなきゃ)』
彼はすっかり気が動転してしまっているのか、顔面蒼白状態だ。
『先輩、落ち着いてください』
「ダメだ、こんなの…!"個性"が使えないヒーローなんて、こんなの…っ!ミリオ…!!」
『…天喰先輩!』
「!」
私は正面から彼を抱き締めた。
『先輩…天喰先輩。私が分かりますか?』
「………カフェ…さん…」
『そうですカフェです。大丈夫…落ち着いてください。ゆっくりゆっくり、深呼吸するんです』
ぽんぽんと優しく、私は天喰先輩の背中を撫でた。
切島くんにこうしてもらうと、不思議と落ち着くんだ。
『(だから、先輩…)』
「ハァ…ふっ…」
『大丈夫ですよ』
すると天喰先輩は徐々に落ち着きを取り戻してくれたようだ。
「…………ごめん…カフェさん…」
『謝らないでください。立てますか?』
「うん…」
私は天喰先輩の身体を支えながら彼と共に立ち上がった。
『なら次は避難誘導ですね!私、避難誘導はほとんど未経験なので…ご指導お願いしますね、先輩!』
「!…うん。ありがとう、カフェさん」
初めて見せてくれた天喰先輩の笑顔は、普段のイメージとは違った明るいものだった。