04
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「なぁ君。その制服、雄英だろ?」
『え?…はい』
朝、登校中に突然見知らぬ人物に声を掛けられ振り返る。
そこには撚れた黒いシャツを身に纏った、銀髪の男性が居た。
何だこの人。
なんか独特の雰囲気を醸し出している。
『…』
「そんな警戒すんなよ、ちょっと聞いただけだろ?」
『そ、そうですね…』
「雄英高校ってどこにあんの?…あ、案内してくれなくてもいいや、俺がアンタに着いて行けば良いんだぁ」
何も答えていないのに、両手を広げながら笑う男性。
『(え、なに、コワっ)』
明らかに怪しい雰囲気だ。
正直あまり関わりたくない。
そもそも雄英は分かりやす過ぎると言っても過言ではないような場所にあるのに、どうしてわざわざ聞いてくるのか。
今時、スマホでもすぐに調べられるだろうし…やっぱりこの人、なんか変だ。
『あ、あの…急いでるので。すみませんが失礼します』
ぺこりと礼をして一方的に会話を終了させて足を進める。
「…」
『(なんか申し訳ないことしちゃったような気もするけど、しょうがないよね)』
心の中で言い訳をしながらちらりと後ろを振り返る。
すると、なんとあの男性もこちらに向かっていたのだ。
『(ほ、本当に着いて来た!しかも何この距離感、気まずいんだけど…!)』
数歩遅れて着いてくる男性。
これなら一緒に行ってあげるか走ってその場を去るかのどちらかにすれば良かった…
微妙な距離感がなんだか気持ち悪い。
『…』
「…」
『…』
「…」
もやもやとしながら、しばらく足を進めていると目の前に学校が見えてきた。
『(良かった!これでやっとこの人とおさらば出来る!ていうか校門の前の人混みは何だろう…?)』
校門の前に人だかりが見えたため、軽く首を傾げる。
「おい、早く!」
「モタモタすんなよ!」
『うわっ!』
突然、後方からマスコミの人達が何人か、物凄い勢いで私の隣を駆け抜けて行った。
そしてその人達は校門のマスコミの集団の中に合流する。
『(びっくりしたぁ~…あ、爆豪くんだ)』
遠目で校門の前に爆豪くんの姿を発見した。
爆豪くんとは登校時間がほぼ同じようでよく校門前で見掛ける。
「君、ヘドロ事件の爆豪くんだよね!?」
「オールマイトの授業ってどんな感じ!?」
「大体で良いから教えてくれる!?」
『(うわぁ…学校入りにくいな…)』
あのマスコミ達をどう突破するか考えていると、私の後方で何やらぶつぶつと呟く声が聞こえた。
「…ってぇなクソ野郎…人にぶつかって行くとか、あーぁ最悪…」
私に着いて来た男性が、先程のマスコミに押し退けられたのだろうか…尻もちを付いていた。
『えぇと…大丈夫ですか?立てます?』
私は咄嗟に男性に手を差し出す。
マスコミめ、なんて人達だ。
自分達のことばかり考えて人のこと押し退けて謝りもしないで。
「…」
男性は差し出された手をじっと見ている。
かと思えば、男性はニヤリと口角を上げた。
『あ…』
あれ、なんか、嫌な予感がする。
なのに、身体が固まって動かない。
「…」
『…』
そしてゆっくりその男性の手が、私の手に重なりそうになった…その時。
『あ…怪我したんですか?』
男性の手のひらに擦り傷が見えたので、ぽろっと言葉が零れた。
手のひらからは少し出血もしているようだ。
『腕も血が滲んでる…ちょっと待ってくださいね』
私は男性の隣にしゃがみ込み、学生鞄を肩から下ろす。
『失礼しますね』
そう一言男性に断ってから彼の手を取り、自分の手を患部に翳した。
すると、どこからともなく光のようなものが集まってくる。
「へぇ…これがアンタの"個性"?」
ゆっくりと傷口が塞がっていくのを見て、感心したように男性は言う。
『えへへ、まぁ…あ、こっちも失礼しますね』
軽くシャツの袖口を捲り、また"個性"を発動する。
「珍しいねぇ…いいなぁ…君の"個性"、いいなぁ…」
いいないいなと言われると嬉しくもなる。
それに私の"個性"によって人を救えたのなら嬉しい。
まるでヒーロー活動をしているような気分だ。
『ふふ。…はい、治りましたよ!』
「…」
そう言って立ち上がれば、男性も遅れてゆっくりと立ち上がる。
『じゃあ私はこれで!ちょっと遅刻しそうなんで!』
「…」
何も言わない相手に私は軽く会釈をして、私は振り返らずに校門へと向かった。
マスコミの人達にもみくちゃにされながらもなんとかそこを突破する。
『ほ、ほんと何これ…!なんでマスコミ…?』
集団を抜け切ったところで、なんとなく振り返る。
「…」
『…?』
マスコミの集団の少し向こう側で、先程の男性がこちらを見て未だ佇んでいた。
私はそれを特に気に留めず、教室へ向かったのだった。