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"デクと喧嘩した"。
あの爆豪くんが、怪我した訳を話してくれたのは素直に嬉しい。
…けれど。
『緑谷くんと喧嘩…!?』
そうだ…数時間前、共同スペースでみんなと話をしていたあの時。
緑谷くんと爆豪くんが部屋から出て行くのを私は見ていた。
二人が喧嘩して爆豪くんがこれだけ負傷していると言うことは、緑谷くんも相当怪我を負ったのだろう。
『そっかぁ…』
緑谷くんと爆豪くんは幼馴染みでありながら、これまで何度もぶつかり合っているのを見てきた。
最初の頃の個性把握テストの時や、授業中の戦闘訓練の時もそうだった。
最近では必殺技の練習の時も…。
緑谷くんは爆豪くんを恐れるような、顔色を伺うような態度で。
爆豪くんは緑谷くんを嫌悪するような、卑下するような態度で。
なんとなく二人の間には、誰も足を踏み入れられないような空気があった。
そんな二人が喧嘩をしたと聞いて、私は何も言えなかった。
私なんかが口出しして良い関係の二人じゃない。
"辛かったね"とか"大変だったね"とか、簡単な言葉や同情するような言葉は掛けられなかった。
『…分かった。回復はしないよ、ごめんね勝手に』
「…」
いつもならギャーギャーと言い返して来るはずなのに、特に何も言われず。
『…?』
不思議に思った私は顔を上げて爆豪くんの方を見た。
すると…
ガッ
『!?』
突然首を掴まれ、ベッドに押し付けられた。
そこへ爆豪くんが馬乗りになってくる。
『なっ…!?………ぁ゙…、』
爆豪くんの髪が彼の顔に掛かっており、俯いた彼がどんな表情をしているのかは分からない。
「…」
この体勢はまずい。
USJ事件の死柄木弔が脳裏に蘇る。
いやだ、怖い。
目の前に居るのは爆豪勝己という、大切な友達のはずなのに。
「おい…答えろカフェ、何でッ…」
『…うぅっ…』
「何でお前はあの日、神野まで来た…!?」
絞り出された彼の声は、聞いているこちらの方が苦しくなるくらい切ないものだった。
「答えろ…!答えろッ!!」
首を掴んだまま何度も揺さぶられ、段々と気分が悪くなってくる。
『ま゙…待っ…』
「今すぐ答えろ、じゃねェとこの場でブッ殺す!!」
『っ…』
本当に殺されそうだと思った。
私の首を掴む爆豪くんの手に熱を感じたから。
たぶんこの熱は爆豪くんの汗。
彼の"個性"は"掌の汗腺からニトロのようなものを出して自在に爆発させる"というもの。
ということは、爆豪くんが今"えいっ"と力めば、私の首は簡単に吹っ飛んでしまう訳だ。
『ば…っ』
USJ事件を彷彿させるこの体勢や、首が今にも飛ばされそうな状況。
そんな状況でも私が冷静で居られたのには理由があった。
『爆豪く…ん…』
私は、爆豪くんの顔に掛かる彼の髪をゆっくりと避ける。
意外にもサラッとしたその髪は私の指によく馴染んだ。
『泣かないで、爆豪くん』
避けた髪の隙間から見えた爆豪くんの紅い目には、大粒の涙が浮かんでいるのが見えた。