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お風呂上がり。
『(うわぁ…暗いな~…)』
こんな深夜に電気が点いているはずもなく、辺りは暗い。
共同スペースの電気ってどこにあるんだろ。
『(今まで触ったことないから、電気の場所分かんないや…)』
まぁいいや、すぐ部屋に戻ろう。
暗いと言っても、中庭の大きな窓からは月光が差し込んでいて、深夜にしては随分と明るく感じた。
『ん…?』
ふと廊下の先を見ると、何やら暗闇の中で動くものが見えた。
奥の方は影になっているのでよく見えない。
『(ちょっと怖いな…ゆ、幽霊…とか?まさかね…)』
若干怖いと思いながらも、じっと目を凝らして見てみる。
…人だ。
ということは…クラスメイトであるということだ。
『(こんな時間に誰だろ…?)』
ここからは顔が見えないけれど、暗闇の中のその後ろ姿には見覚えがあった。
筋肉質な身体、尖った毛先、薄い金髪。
『…爆豪くん…?』
私の声に反応した爆豪くんは、ゆっくりと振り返った。
よく見れば入浴セットを持っている。
こんな時間にお風呂なんて珍しいな。
私はパタパタと爆豪くんの近くへと歩み寄った。
『珍しいねぇ、何でこんな時間に…』
「…」
『っ!』
息が止まるかと思った。
こちらを見る爆豪くんの目に光は宿っておらず、何故か彼の全身は傷だらけだった。
あんな大量の傷、夕方見掛けた時は無かったのに。
『…な、に?その傷…』
「テメェにゃ関係無ェ」
『でも…』
「黙れ喋んな…殺すぞ」
『…!』
爆豪くんから、これ程あからさまに殺気を向けられたのは初めてだ。
『(さっき緑谷くんと出て行くまで、こんな傷無かった…ってことは…この傷は緑谷くんが…?)』
どういうことなんだろうか。
「…」
『…』
私が今立っているこの場所は窓際から近いため、薄っすらと月光が差し込んでいる。
反対に、爆豪くんが居るのは光の届かない場所。
先程見た爆豪くんの目や後ろ姿からは、深い"悲しみ"の感情が見て取れた。
このままの状態で居ると、なんとなく爆豪くんが暗闇の中に溶けていってしまいそうに感じた。
『えっと…お風呂上がりだし、身体冷えない?良かったら何かあったかい飲み物…』
「いい」
器用にも、爆豪くんは暗闇の中をスタスタと歩いていく。
自分の部屋に戻るのだろう。
「…」
『…』
爆豪くんも私も何も言葉を発しない。
「…」
『…』
最後に見た爆豪くんの目は酷く寂しげで、悲しげで。
「…」
『…』
なんとなく、今は爆豪くんを一人にさせてはいけないような気がした。