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目の前の男子生徒の手元に目が奪われる。
触手というか…タコ…かな?
『(さっきの"ぬるっとした何か"の正体はこれかぁ…!)』
「…、…っ」
『(凄い何か言いたそうだ…!)』
男子生徒はゴミ袋を抱えたままチラチラとこちらを見てくるが、特に声を掛けてくる訳でもない。
私は苦笑しながらゆっくりと立ち上がった。
『あはは…すみません、いきなり』
へらっと笑いながらそう言って、ジャージについた砂埃を軽く払う。
確かに、知らない人にいきなり話し掛けられたらびっくりするよね。
ハンカチを返したいから名前教えてくださいとか、お礼をしたいですとか、話をする以前の問題だ。
ていうかこの人は私にハンカチを貸してくれたこと、覚えてないんだろうか。
ちらりと男子生徒の様子を伺う。
『…』
「どうしよう突き飛ばしてしまった辛い…でもこっちが突き飛ばしたくせに今更何て言えば良いか分からない…」
今日はやめとこう…
あまりちゃんと話せそうにないし、ハンカチも持ってないしね。
同じ敷地内に居るのだから、またいずれ会うタイミングがあるだろう。
『出直して来ます~…』
私は苦笑しながら一礼する。
そしてまた走り出した。
***
ランニングから戻ると、すっかり晩ご飯の時間になっていた。
私はみんなと夕飯を共にした後、共同スペースで少し駄弁っている。
「明日からフツーの授業だねぇ!」
「チョコチョーダイ」
「色々あり過ぎたなぁ」
「一生忘れられない夏休みだった…」
今はクラスメイト達でテーブルを囲みながら寛いでいる状態だ。
『(ランニング終わってからシャワー浴びてないし、お風呂入りたい…けど…)』
「そういえば、モカちゃんのアレ!びっくりしたねぇ!」
『んぇ?』
「他校の男の話!」
透ちゃんと三奈ちゃんに両隣からガッチリとホールドされる。
あ、捕まったわ。
逃げられないやつだこれ。
納得行くまで根掘り葉掘り聞かれるやつだ。
なんて思っていると、クイクイと服の裾を引っ張られる感覚がして、視線を戻す。
引っ張られる感覚はあるがそこには何も見えないので、たぶん透ちゃんだろう。
「モカちゃんモテモテだね!士傑の人とどうやって知り合ったの?」
「士傑のあの人、名前何だっけ?」
「しし…?」
『肉倉先輩?』
「「それだ!」」
三奈ちゃんと透ちゃんが興奮した様子で身を乗り出してくる。
『全然知り合いとかじゃないよ、肉倉先輩とは初対面だったし…』
「夜嵐がさ、"一目惚れ"とか言ってたよね!」
「一目惚れも立派な恋じゃん!」
「俺もそれ聞いて超ビビった!」
「でもまだ先輩側は諦めてない感じじゃなかった?」
「わー、なんか良いね、青春だね!」
勝手にみんなは盛り上がってしまい、私は完全に置いて行かれている。
というか話に入り込む隙が無い。
するとその時…
『ん…?』
ちょうど緑谷くんと爆豪くんが部屋を出て行く様子が目に入る。
『(あれは…爆豪くんに…緑谷くん…?)』
二人一緒なんて珍しいなぁ…
「ねぇねぇモカちゃん!彼氏とか作んないのー?」
『…』
「モカ?」
『あ…ごめん、なになに?』
このあと私は、彼女等が納得行くまでガールズトークに付き合わされた。
そして少し疲れ地味で自分の部屋へ戻った私は、お風呂に入る前に寝落ちしてしまったのだった。