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仮免取得試験が終了し、私達1-Aは無事に雄英へと帰って来た。
『(この後は授業も無いし、どうしよっかなぁ)』
さっきまで神経を尖らせていたせいか、身体を休めようにも気が張っていて休められないだろうし…
今は身体を動かしたい気分だ。
私はぐるりと共同スペース内を見渡した。
そして少し離れた所で、上鳴くんと瀬呂くんと話している切島くんの方へと足を向ける。
『(ちょっと組み手 付き合ってもらっ…)』
「何であの時行かなかったんだよー!?」
「バッカ!うるせえ!」
「あそこは"俺の女だ!"って言うとこだった!間違い無く!!」
「だからァ!」
『…』
ナニモキコエナイ…
うん、何も聞いてないよ私。
何の話してるのか分かんないよ、うん。
『(お、尾白くんなら組み手…付き合ってくれるんじゃ…)』
私は切島くんへと向けていた足を止め、尾白くんの方へと足を進めた。
しかし…
「なーんか疲れたねー!」
「今日はなんかもう動きたくないね…」
『…』
あ…そっか…
うん、頑張ったもんね。
しっかり身体休ませるべきだよ、うん。
『…』
相手が居ない以上、組み手は出来ない。
『(大人しく自主トレするかぁ…)』
私は一人、部屋を出た。
***
『いっちに、さーんし…』
ジャージに着替えた私は肩からタオルを掛け、軽く屈伸している。
結局走ることにしたのだ。
走るの苦手だし、筋力よりも体力を付けないといけないって、必殺技練習中にエクトプラズム先生に言われたから。
仮免試験も終わったというのに、私だけまだ必殺技完成してないんだ。
みんなよりもっともっと頑張らないと。
『よしっ』
私は気合いを入れ、走り始めた。
雄英の敷地内にあるこの寮は、3年の棟まで連なっている。
『(改めて見るとでっかいな~…凄いなぁ雄英)』
私は走りながら、建物を見上げる。
『(ここが2年棟…あっちが3年棟かぁ。で、あの辺がゴミ置き場…)』
敷地は思っていたよりも広そうだ。
今度ふらっと散歩してみようかな。
また何か新たな発見があるかもしれないし。
私は色々見て回りながらしばらく走り続けていた。
『ふう…っ!はぁ…はぁ…』
切れる息遣いに、次第に重くなってくる身体。
自身の体力不足を実感する。
『(3年棟まで来た…)』
走りながらちらりと建物を見上げると、3年生の寮があった。
『(そーいえば雄英って、意外とクラスメイト以外と絡む機会無いんだよね)』
機会があったとしてもB組くらいだろうか。
小学・中学時代は部活とか、授業の一環とかでほぼ強制的に他学年とコミュニケーションを取る機会があったもんだけど。
『(雄英で三年間も耐え抜いてきた人達…きっと凄いんだろうなぁ…)』
私はまだ見ぬ諸先輩方への憧れを胸に、見上げていた目線を前方に戻した。
すると、ちょうど向こう側からこちらへ一人で歩いて来る男子生徒が目に入った。
ゴミ袋を抱えているため、ゴミ置き場に向かうんだろう。
『…ん?』
良く見ると…あれ?
あの人は…確か…!
『(この前、雨の日に転んだ私にハンカチ貸してくれた人だ…!)』(※10話2ページ目参照)
どうしよう、ハンカチ返したかったんだけど今は流石に持ってない…!
『(とりあえず声を掛けてみよう)』
私は走りながら、その人に話し掛けるタイミングを計る。
すると…
「『!』」
ちょうど男子生徒と目が合った。
話し掛けるなら今だ!
『あの、すみませ…』
「うぅわ…ムリムリ話し掛けて来たしどうしよう何て答えたら良いんだろう…」
『…あれ?』
私何かしたっけ?
何でこんなに拒否されてんの?
私はその人の近くで足を止めた。
『あの…』
「ヒッ!」
サッと視線を逸らし、ゴミ袋を見つめながらその人は私の横をすり抜けようとする。
私は思わず、男子生徒に手を伸ばした。
『あのっ!』
「うわぁあっ…!!」
男子生徒が声を上げたかと思えば…
ぬるりとした"何か"に腕を掴まれ、引っ張られ、突き飛ばされた。
私はドシンと音を立てて尻もちをつく。
『へっ…?』
一瞬何が起きたのか理解出来ず、私は顔を上げた。
するとそこには、先程までの男子生徒が立っていた。
…手が、触手のようになった状態で。