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肉塊に捕らわれてしまった私は身動きが取れない。
『(情けない…結局、こうなるの…!?)』
このまま丸め込まれて終わってしまうのか。
そう考えるも、糸目男子は一向に私を丸め込もうとはしなかった。
ただ、拘束されているだけ。
何だろう、人質として利用でもするつもりなのだろうか。
「クソッ…カフェ、ちょっと待ってろよ!何とかすっから!」
『上鳴くん、私のことは気にしないで!攻撃を!』
「黙っていろ、上鳴電気」
私が捕らわれてしまっては、上鳴くんは"個性"が使えない。
放電は切島くんや爆豪くんを巻き込むし、新装備のポインターとシューターを使おうにも、私が邪魔になる。
そのため爆豪くんが丸められる前に上鳴くんに渡していた手榴弾も使えない。
「カフェモカ」
『…』
捕らえられたままの状態で、糸目男子と目が合った。
先程顔面をグーで殴ったため唇が切れたのだろうか、口から少し血が垂れている。
やり返される…
丸められるだけでは、終わらないかもしれないな…。
「…雄英体育祭の映像、検閲した。爆豪や上鳴…他が徒者である中、お前は違ったと推知している…」
『…?』
「私はお前と、懇話したく思っている」
初めてじっと目を見てそう言われ、私は言葉を失った。
『…え?』
思わずぽかんとしてしまう。
「コンワ?コンワって、仲良さげに喋るとかそんな意味だよな…え?カフェ、先輩と面識あったの!?」
『いや、一切無いよ!?名前すら知らないし…!』
「私は肉倉精児。今日と言う日を鶴首していた」
糸目男子…もとい肉倉先輩は表情を変えずに淡々と言葉を続ける。
「体育祭での厚志、厚情には驚歎した。お前の心的傾向は真のヒーローと呼ぶに相応しい」
『え、え…?』
なんか、よく分かんないけど…
めちゃくちゃ褒められてる…?
「だが、どうにも解せぬ。何故お前が徒者共とこうして昵懇にしているのか」
『…肉倉先輩には関係無いと思いますけど』
「私はお前を憂慮しているのだ」
今日初めて会ったはずなのに、ズケズケと物を言ってくるこの人が、あまり得意ではないなと感じた。
それにさっきから聞いていれば、勝手な自己解釈ばっかり。
肉倉先輩はテレビとかで私達の様子を見たのかもしれないけれど、そんなの私達の本来の姿のほんの一部じゃないか。
『…』
このままペラペラ喋っていても埒が明かない。
『(上鳴くんは私が捕らえられているせいで攻撃が出来ないと思い込んでる…)』
その上、この拘束が解けないとなれば…
やってもらうことはただ一つ。
『上鳴くん!』
「ちょい待ち!今必死に打開策を…」
『お願い!…来て、上鳴くん!!』
"私ごと、攻撃して"
心の中でそう呟いて、じっと上鳴くんを見つめる。
『(怪我が怖くてヒーローになんかなれない。それに、怪我をした時こそ…私の"個性"の使い時だし!)』
口角を上げながら上鳴くんを見る。
すると彼は観念したかのように苦笑した。
「…そのセリフは、ベッドの上で聞きたかったぜ!」
なんかとんでもないこと言ってるけど。
「フン、低俗下劣な…」
「さっきからアンタも大概中傷ひでーからね…?効くからやめて欲しんだよね…」
言いながら、頭を抑える上鳴くん。
「それは己に自覚があるからだ。省してくれれば…幸い!」
肉倉先輩は、上鳴くんに向かって肉塊を飛ばした。
「俺のことじゃねェよ!」
上鳴くんがこちらに何かを投げたかと思えば、爆発が起きた。
あれは爆豪くんの手榴弾だ。
『っ!』
ギュッと目を瞑り、爆発に耐える。
…が、痛みはやって来ない。
肉塊が私を捕らえたままの状態で変形し、防御壁となってくれていたのだ。
『(あれ…もしかして私、肉倉先輩に守られた…?)』
ちらりと肉倉先輩の方を見る。
「…」
こちらを見ていた肉倉先輩と目が合う前に顔を背けられてしまった。
「爆破の成分入れて簡易手榴弾に出来るんだとよ…!前にオシャレかって聞いたらキレながら教えてくれた…!」
「…あの時、渡していたのか…!?」
上鳴くんはちらりと私に目を見る。
「…」
『…』
私は黙って、彼に頷いた。
「ところで先輩」
いつの間にかゴーグルを装着した上鳴くんが、指先を肉倉先輩の方へと向ける。
「良い位置によろけましたね?」
「ぐぁああああっ!!」
『うあぁあああっ!!』
上鳴くんの指先からこちらに向かって、電撃が放たれた。
もちろん私を巻き添えにして。