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翌日…
「昨日話した通り、まずは仮免取得が当面の目標だ」
「「『はい!』」」
いつものように相澤先生が教壇に立っている。
「ヒーロー免許ってのは、人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然、取得のための試験はとても厳しい。仮免と言えど、その合格率は例年5割を切る」
『合格率5割以下…』
「仮免でそんなキツいのかよ…」
私はごくりと唾を飲む。
峰田くんも嘆いているようだ。
「そこで今日から君等には、一人最低でも二つ…」
「ん?」
突然ガラリと教室のドアが開きそちらを見る。
そこにはミッドナイト、セメントス、エクトプラズム先生が立っていた。
「必殺技を作ってもらう!」
「「「必殺技!?」」」
みんなのテンションが一気に上がるのが分かった。
「「学校っぽくてそれで居て…!」」
「「ヒーローっぽいのキタァ!!」」
「"必殺"!コレスナワチ、必勝ノ型、技ノコトナリ!」
「その身に染み付かせた技、型は他の追随を許さない。戦闘とは、"いかに自分の得意を相手に押し付けるか"!」
「技は己を象徴する!今日日、必殺技を持たないプロヒーロー等絶滅危惧種よ!」
「詳しい話は実演を交え、合理的に行いたい。戦闘服に着替え、体育館γ(ガンマ)に集合だ!」
***
「体育館γ…通称、トレーニングの台所ランド…略して"TDL"」
「『(TDLはマズそうだ!)』」
脳内にメルヘンファンシーなネズミ達が思い浮かぶが、私は頭を横に振ってそれを掻き消した。
同時にセメントス先生が口を開く。
「ここは俺考案の施設。生徒一人一人に合わせた地形や物を用意出来る。台所ってのはそう言う意味だよ」
「なーる〜…!」
「質問をお許しください!」
飯田くんが挙手をする。
「何故仮免の取得に必殺技が必要なのか、意図をお聞かせ願います!」
「順を追って話すよ、落ち着け」
相澤先生に落ち着くよう言われた飯田くんは素直に挙手をやめていた。
それを見て相澤先生がゆっくりと口を開く。
「ヒーローとは、事件、事故、天災、人災、あらゆるトラブルから人を救い出すのが仕事だ。取得試験では当然、その適性を見られることになる。情報力、判断力、機動力、戦闘力、他にもコミュニケーション能力、魅力、統率力等、多くの適性を毎年違う試験内容で試される」
「その中でも戦闘力は、これからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂い無し!技の有無は合否に大きく影響する」
「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有していることになるんだよ」
『…』
私は先生方の発言を聞いてしばらく考え込む。
私と違って、A組やB組のヒーロー科のみんなはほとんど戦闘が前提の"個性"だ。
前々から思っていたけれど、こういう時に少し疎外感のようなものを感じてしまうのだ。
『(そもそも回復の"個性"に必殺技とかあるのかな…?よく分かんないな…うーん…)』
悶々としている私を見て、今度はエクトプラズム先生が声を掛けてくれた。
「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ、飯田クンノ"レシプロバースト"…一時的ナ超速移動、ソレ自体ガ脅威デアルタメ、必殺技ト呼ブニ値スル」
『なるほど!』
「あれ必殺技で良いのか…!」
確かにレシプロは攻撃技ではないけれど、発動したらめっちゃ強いもんね。
感動している飯田くんを見ながら私は納得する。
「なるほど。自分の中に"これさえやれば有利、勝てる"って型を作ろうって話か…」
「そ!先日大活躍したシンリンカムイの"ウルシ鎖牢"なんか模範的な必殺技よ、分かりやすいよね!」
「中断されてしまった林間合宿での"個性"伸ばしは、必殺技を作り上げるためのプロセスだった」
「「『!』」」
「つまり…これから後期始業まで、残り10日余りの夏休みは、"個性"を伸ばしつつ必殺技を編み出す、圧縮訓練となる!」
『(休んでる暇なんて無いって話か…流石雄英、徹底的に追い込んでくるなぁ)』
少し笑みを浮かべると、私の近くで切島くんも不敵に笑っていた。
「尚、"個性"の伸びや技の性質に合わせて戦闘服の改良も並行して考えていくように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ!準備は良いか!?」
「「『はい!』」」
私達は勢い良く返事をした。