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あの後ひとまず全員着替え終えた私達は"鈍器"を出た。
「オッラァ!コッラァ!」
「ちげぇ!もっと顎でクイクイやんだよ!」
切島くんに"ヤクザっぽさ"を教わる緑谷くんは真剣そのものだ。
でも緑谷くんよ…
何度でも言おう。
ヤクザが下手くそである…。
「パイオツカイデーチャンネー居るよー!!」
「オッケー!!」
『(飯田くん絶対意味分かってないよね…)』
いや、飯田くんには意味なんて知って欲しくないかも。
飯田くんの衣装はキャバクラの呼び込みのお兄さんがテーマだそうだ。
切島くんのオッケーを貰った飯田くんは満足そうにしているため、私からは何も言わないでおこう。
「夜の繁華街!子供が彷徨くと目立ちますものね!」
『ヤオモモ…だからってこれは…!』
ヤオモモが選んでくれた私の衣装。
それは、身体のラインが強調される真っ黒なキャバドレスだった。
露出も結構多い気がする…。
「あら…お似合いだと思いますわよ。ねぇ切島さん?」
「え、おっ俺!?」
突然話を振られた切島くんが驚く。
「『…』」
ぱちりと切島くんと目が合ったかと思えば、切島くんが口を開いた。
「男の好み、よく分かってるぜ八百万…!」
「はい…?」
「正直めちゃくちゃイイ」
真顔でグッと親指を立ててこちらを見る切島くん。
私は恥ずかしくなり、照れ隠しに軽く彼の背中を叩いておいた。
「八百万、創造で創ればタダだったんじゃねェか?」
ズレたウィッグの轟くんが表情を変えずにヤオモモに問うと、ヤオモモは途端に慌て始めた。
「そそそ、それはルール違反ですわ!私の"個性"で好き勝手創り出してしまうと流通が…!そう!国民の一人として、うん!回さねばなりませんもの、経済を!」
「そうか」
『("鈍器"入りたかったんだなぁ…)』
「(このピュアセレブ…)」
ヤオモモの言葉に轟くんは納得しており、切島くんと私はそれを遠い目で見ていた。
おふざけも程々に、ヤオモモが先陣を切って歩き始める。
「皆さん、目的地はこちらの方角で…」
「お?雄英じゃん!」
「っ!」
「お、オッラ…、!」
『(嘘!変装したのに、もうバレた…!?)』
振り返ると、先程"雄英じゃん"と声を上げた男は、ビルのモニターを眺めていた。
《「では先程行われた、雄英高校謝罪会見の一部をご覧ください」》
「相澤先生…」
「校長先生も…!」
緑谷くんとヤオモモが言うように、モニターには相澤先生と校長先生、B組担任のブラドキング先生が並んでいた。
《「この度、我々の不備からヒーロー科一年生28名に被害が及んでしまったこと、ヒーロー育成の場でありながら敵意への防御を怠り社会へ不安を与えたこと、謹んでお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」》
「メディア嫌いの相澤先生が…」
校長先生とブラド先生、そしてあのメディア嫌いの相澤先生がテレビで頭を下げている。
《「NHAです。雄英高校は今年に入って4回、生徒が敵に接触していますが…今回生徒に被害が出るまで、各ご家庭にはどのような説明をされていたのか、また具体的にどのような対策を行って来たのかお聞かせください」》
『…っ』
…嘘でしょ、分かってるはずなのに…
それをわざわざ言わせるの?
「悪者扱い、かよ…」
緑谷くんはギリッと歯を食いしばっている。
次第に私達の周りでもガヤガヤと先生方や学校を悪者扱いする声が上がり始めた。
全然守れてねェじゃん、と。
『(悪いのは敵なのに。どうしてこうなるの…?)』
私はこのヒーロー社会に対して、僅かに…
少しだけ…苛立ちを募らせた。