15
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「実は俺と轟さ、昨日も来ててよォ…」
切島くんは軽く昨日の病院での出来事をみんなに話した。
「つまりその受信デバイスを…八百万くんに創ってもらう…と?」
「…」
「だとしたら?」
飯田くんの言葉に黙る切島くんの代わりに、轟くんが口を開く。
すると飯田くんは大きく目を見開き、声を上げた。
「オールマイトの仰る通りだ!プロに任せるべき案件だ!俺達が出て良い舞台ではないんだ馬鹿者!!」
『飯田くん、落ち着いて…!』
なんだか昨日の私を見ているような気分だ。
私は飯田くんの服の裾を掴み、彼をなんとか宥めようとする。
「んなもん分かってるよ!でもさァ!何っも出来なかったんだ!ダチが狙われてるって聞いてさァ!なんっっも出来なかった!しなかった!ここで動かなきゃ俺ァ、ヒーローでも男でも無くなっちまうんだよ!!」
「切島!ここ病院だぞ、落ち着けよ!こだわりは良いけど今回はっ…」
「…飯田ちゃんが正しいわ」
今度は上鳴くんが切島くんを宥めてくれる。
梅雨ちゃんの言葉に、切島くんは拳を握り締めた。
「飯田が、みんなが正しいよ!でも!なァ緑谷!…まだ手は届くんだよ!!」
正直、ずるいと思った。
そんな言い方をされて、あの緑谷くんが黙っている訳がない。
現に緑谷くんは真っ直ぐに切島くんを見て、彼の話を聞いていた。
「えっと…要するに、ヤオモモに発信機のヤツ貰って、それ辿って、自分等で爆豪の救出に行くってこと?」
「敵は俺等を殺害対象と言い、爆豪は殺さず攫った。生かされるだろうが、殺されないとも言い切れねェ。俺と切島、カフェは行く」
轟くんが私の名前を出した瞬間、クラスメイトのみんなから視線が集まる。
「モカも!?」
驚いて私を見る三奈ちゃんに、私は頷いた。
『うん。敵に囚われることの不安とか怖さ、痛いくらい分かるから…私も、爆豪くんを救けたい。大切な友達だから』
この言葉の意味としては、私の中では職場体験中に攫われた意味の方が大きいけれど、みんなにはUSJ事件の時のことだと捉えられただろう。
「ふっ…ふざけるのも大概にしたまえ!!」
『っ!』
「待て、落ち着け」
飯田くんの勢いに振り飛ばされそうになった私は、障子くんの複製腕に支えられた。
「大丈夫か?」
『う、うん。ありがとう障子くん』
障子くんは頷き、比較的落ち着いた様子の私から、切島くんと轟くんの方へと目線を動かした。
「切島の"何も出来なかった"悔しさも、轟の"眼前で奪われた"悔しさも分かる。カフェの"友達を大切に想う気持ち"も。俺だって悔しい」
「だがこれは感情で動いて良い話じゃない。そうだろう?」
「…」
障子くんの複製腕にそう言われ、切島くんは居心地悪そうに目を逸らした。
「オールマイトに任せようよ…林間合宿で相澤先生が出した戦闘許可は解除されてるし…」
「青山の言う通りだ。救けられてばかりだった俺には強く言えんが…」
「みんな爆豪ちゃんが攫われてショックなのよ…でも冷静になりましょう。どれ程正当な感情であろうと、また戦闘を行うと言うのなら、ルールを破ると言うのなら…その行為は敵のそれと同じなのよ」
梅雨ちゃんの声に、病室内は静まり返る。
するとその時、扉をノックする音が辺りに響いた。
「ヒィッ!?」
「お見舞中ごめんねー、緑谷くんの診察時間なんだが…」
扉から顔を出したのはここの病院の先生と思わしき人物だった。
「い…行こか、耳郎や葉隠の方も気になっし…」
「そうだな…」
私達は顔を見合わせ、順番に部屋を出て行く。
私は自然な流れで緑谷くんのベッドの前…
切島くんの隣に並んだ。
「デクくん、お大事にね」
「う、うん…みんなもありがとう」
ぞろぞろとみんなが退室する中、切島くんは緑谷くんに小声で語り掛ける。
「八百万には昨日話をした。行くなら即行…今晩だ。重傷のおめーが動けるかは知らねぇ。それでも誘ってんのは、おめーが一番悔しいと思うからだ」
「…」
「今晩…病院前で待つ」
切島くんの言葉を聞いた緑谷くんと目が合う。
『…待ってるね』
私は緑谷くんの返事を聞かず、みんなに続いて部屋を出た。
(私のこの言い方も"ずるい"なぁ)
(待っててね、爆豪くん)