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『(緑谷くん、見失った…!)』
前しか見えていない緑谷くんはぐんぐんと私と差を広げて走って行き、とうとう姿が見えなくなってしまった。
複数居る敵の位置を把握していない状況で、森の中に今度は私一人。
帰り道も行き先(緑谷くんはたぶん洸汰くんを探しに行ったはず)も分からない。
何より…
「やったァアア!!見つけたァ、モカちゃんだよねぇ!?わぁああ、カァイイねぇえ…!!」
私一人で敵に見付かってしまったこの状況。
これが一番最低最悪だ。
少し距離を置いた私の前には、セーラー服を着た同い年くらいの女の子が立っている。
彼女はナイフをギラつかせながら、私を見て飛び跳ねて喜んでいた。
て言うか何この子、すっごい危険人物臭するんだけど…!
『見つけたってどういうこと…?何で私のこと知ってるの?』
「ふふ!写真で見て、カァイかったのですぐに覚えました…!弔くんの大好きなカフェモカちゃん!」
『!』
弔くんというのは、死柄木弔のことだろう。
彼の名前を出されて私は動揺する。
さっきもスピナーとか言う敵が自分達のことを"敵連合"と名乗っていたし、やっぱり彼女等は死柄木弔の仲間と言うことで間違い無さそうだ。
「モカちゃん、一緒に来てください!お友達になって遊びたいです!さぁ行きましょう、弔くんが待ってます!」
ナイフを向ける手を下ろして、今度はこちらに手を差し伸べてくる彼女。
私は首を横に振った。
『申し訳無いんだけど、私行かなきゃいけない所があるから…そこ退いてくれると有り難いなぁ』
差し出された手には触れず、目の前に立ち塞がる彼女を見るも、彼女は首を傾げるだけだった。
「行く所?弔くんの所ですよね?」
『違う!アイツの所へは行かない!』
「慌てなくても大丈夫です!じゃあ…」
『(ダメだ、話が噛み合わない!)』
話が通じない相手には何を話しても無駄な訳で。
強行突破…も、出来そうにないな…。
「連 れ て く ね」
『っ!?』
突然彼女の声がワントーン低くなったかと思ったその瞬間、私の頬をナイフが掠めた。
続いて彼女が一気に間合いを詰めて来る。
彼女の両手にはまた、ナイフ。
『(速っ…!?)』
瞬く間に肩や腕を切り付けられ、血が滲んでくる。
傷口から垂れてくる血を、私は乱暴に服の袖で拭った。
「あれれぇ?回復しないんですか?」
『("個性"もバレてる…)』
死柄木弔の仲間な上に、名前も顔も知られていて"個性"を知られていないと言う方がおかしいか。
彼女の言うように敵を前にして回復する余裕は無いし、これくらいの切り傷なら、まだなんとか我慢出来る。
何より緑谷くんやみんながもし怪我をしていたらその時使えるように、この"個性"はとっておかなきゃだ。
『(切島くん、大丈夫かな…施設に居るんだよね…そっちは…安全なんだよね…?)』
一瞬、補修組のみんなや切島くんのことが脳裏を過る。
「!…カァイイねぇモカちゃん!乙女な顔してます…!もっと血、見たいです!ボロボロの方がもっともっとカァイイよ!!」
『!』
なぜか興奮した様子でナイフを何度も突き出してくる彼女。
必死に躱すが、彼女の素早いナイフ攻撃をいくつか受けてしまった。
そして彼女はすかさず、何やら大きな注射器のような物を構える。
『ひっ…!?な、何それ…やめて…!』
「キャッ…その表情ステキです…!弔くんばっかりズルいです、こんなカァイイ子、隠してたなんて…!」
じりじりと距離を詰めてくる彼女に、私は後退る。
「さぁ、チウチウさせてください…チウチウ…!チウチウ…!!」
ダッとこちらに突っ込んで来る彼女。
私は後ろに飛んでそれをなんとか躱し、木々の中へ身を隠した。
ちょうど霧のようなものも出てきた。
『(この霧、何だろ…?でも今はとにかく好都合…!)』
視界が悪くなっているため、運良く私は彼女の視界から外れることが出来た。
彼女は私を見失ったようだ。
「モカちゃん!どこですかぁー!?」
彼女が私を呼ぶ声が辺りに響く。
同時に、少し離れた所からドォンと大きな物音が聞こえた。
『(誰か戦ってる…!?いや、それより今はとにかくここを離れないと…!)』
私は息を殺して木々の中を出来るだけ素早く移動し、その場を後にした。