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さて、今日の"個性"伸ばし訓練が終わり、今はみんなで夕飯を作っている。
今日のメニューは肉じゃがだそうだ。
「爆豪くん包丁使うのウマ!意外やわ…!」
「意外って何だコラ包丁に上手い下手なんざねぇだろ!!」
「出た!久々に才能マン」
「みんな元気過ぎ…」
少し離れた所に居る切島くんはなんだかお疲れ気味だ。
大丈夫かな。
『…』
私は今日も今日とて薪を運んで…
「カフェさん!」
『え?…うわっ!?』
ガッシャァアン!!
よそ見をしていた私はコンクリートに躓き、大きな音を立て、持っていた薪を床一面にぶち撒けてしまった。
「だ、大丈夫…!?」
『大丈夫!ごめんね緑谷くん、ありがと』
薪を拾うのを手伝ってくれる緑谷くんの優しさを身に沁みて感じた。
「大丈夫か?結構でけェ音したな」
お鍋を持ったまま、たまたま近くを通り掛かった轟くんも様子を見に来てくれた。
『う、うん!ごめんね心配掛けて…大丈夫だよ』
私は全て集め終えた薪を轟くんに抱えて見せた。
轟くんは表情を変えずに、そうか、とだけ呟いた。
「そう言やぁ緑谷、オールマイトに何か用でもあったのか?相澤先生に聞いてたろ」
「ああ…っと…うん、洸汰くんのことで…」
「洸汰?誰だ?」
「ええ!?あの子だよホラ、えっと…あれ?また居ない…」
緑谷くんはキョロキョロと辺りを見渡した。
「その子がさ…ヒーロー…いや、"個性"ありきの超人社会そのものを嫌ってて、僕は何もその子の為になるようなこと言えなくてさ…」
『…』
「オールマイトなら…何て返したんだろって思って…轟くんなら何て言う?」
「…場合による」
「そりゃ場合によるけど…!」
「素性も分かんねェ通りすがりに正論叩かれても煩わしいだけだろ。大事なのは何をした、何をしてる人間に言われるかだ。言葉単体で動くだけならそれだけの重さだったってだけで、言葉には常に行動が伴う…と思う」
『…』
"何をしている人間に言われるか"。
ド正論をかます轟くんの言葉は、聞いているだけの私の耳に強く残った。
「…そうだね。轟くんの言う通り、通りすがりが何言ってんだって感じだ」
緑谷くんは轟くんの言葉を聞いて、少し自嘲気味に苦笑している。
「お前がそいつをどうしてェのか知らねェけど、デリケートな話にズケズケ首突っ込むのもアレだぞ。そう言うの気にせずブッ壊してくるからな、お前意外と」
「なんか…すいません…」
緑谷くんとの会話を終えて、轟くんはお鍋を持ったままテーブルの方へと歩いて行った。
『…』
私は、自分の描くヒーロー像に近付くことが出来ているのだろうか。
私のしたことは、今まで一度も間違っていなかったのだろうか。
"続きはまた今度な…おやすみ、カフェモカ"
職場体験中の、無かったことにしたはずの死柄木弔の声が脳内で再生される。
無かったことにしたはずなのに、忘れたと思っていたはずなのに、死柄木弔が私の記憶にこびり付いて離れない。
やめてよ、嫌だよ、忘れさせてよ。
思い出したくないよ…敵を回復させてしまったことなんて。
「………さん…、カフェさん…!」
『…ぁ…』
緑谷くんに肩を揺すられ、ハッと我に返る。
「薪…また落としてるよ。少し休憩しよう?きっと疲れが溜まってるんだよ…」
『…大丈夫』
「で、でも休んだ方が…」
『大丈夫だよ、緑谷くん』
にっこりと笑って見せると、緑谷くんは口を噤んだ。
このまま何もせずに居たら、職場体験中に攫われた記憶が全て蘇ってきそうで。
「君達!手が止まってるぞ!最高の肉じゃがを作るんだ!」
『おーっ!』
近くで聞こえた飯田くんの声に、私は少しわざとらしく明るい声を出し、拳を突き上げた。
「…」
緑谷くんが何か言いたそうにこちらを見ていたが、私はそれに気付かないふりをした。
(過去の記憶が私を捕らえて離さない)
(死柄木弔の傷を回復させてしまった事実が私を苦しめる)
(誰か、たすけて)