林間合宿2日目、午前5時30分。

「おはよう諸君、本日から本格的に強化合宿を始める」

くぁあ、とあくびを噛み締めながら、いつもと変わらない様子の相澤先生を私は眺めた。

「今合宿の目的は全員の強化、及びそれによる仮免の取得。徐々に具体的になりつつある敵意への準備だ、心して臨むように…と言う訳で爆豪！こいつを投げてみろ」

相澤先生が爆豪くんにボールを投げ渡す。

「これ、体力テストの…」

「前回の、入学直後の記録は705.2メートル…どんなけ伸びてるかな」

相澤先生の言葉に私はなるほど、と声を漏らした。

「おお、成長具合かぁ！」

「この三ヶ月、色々濃かったからなぁ！1キロとかいくんじゃねーの！？」

「いったれバクゴー！！」

みんなの期待の眼差しが爆豪くんに集まり、爆豪くんは軽く肩を回す。

「んじゃ、よっこら…くたばれぇええ！！」

「『(くたばれ…)』」

爆豪くんの掛け声に、緑谷くんと私は真顔で彼を眺めた。

ピピッと音がして相澤先生の持つ端末に目をやる。

「709.6メートル」

「！」

「あれ、思ったより…」

そう、思ったよりも数字は伸びていなかったのだ。

爆豪くんの記録が凄いことに変わりは無いのだけれど。

「入学からおよそ三ヶ月…様々な経験を経て、確かに君等は成長している。だがそれはあくまで精神面や技術面…あと多少の体力的な成長がメインで、"個性"そのものは今見た通りでそこまで成長していない」

敵に襲撃を受けたり体育祭や職場体験等を通して、私達は少し自分達を大きく評価してしまっていたのかもしれない…ってこと、だよね。

「だから今日から君等の"個性"を伸ばす！」

相澤先生はニヤリと口角を釣り上げた。

「死ぬ程キツイがくれぐれも死なないように」