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そして私達はいつもの組み手を始めた。
これがなんだかとても久しく感じる。
職場体験で一週間会えなかった上に、その前は私が切島くんを避けていたからだな、きっと。
『右側空いてる!』
「うおっ…と、掛かったな!」
『うわぁっ!?』
切島くんの、見たことの無い動きによって体勢を崩された私は見事に転んだ。
「っしゃ!」
『な、何?今の動き…』
「フォースカインドさんとこで習得したんだ!凄ェだろ?」
『うん、凄かった!見えてたのに全然対応できなかったよ…』
私は足首を擦りながら切島くんを見上げて言う。
凄いなぁ、切島くんもちゃんと職場体験先での出来事、活かしてるんだ。
でも私は新しい体術を得ることは出来なかったけれど、その分ベストジーニストさんに冷静さや物事の考え方を学んだのだ。
私だって負けていない。
「立てるか?」
『ん、大丈夫!ありが…った!』
手を引かれて立ち上がらせてもらったかと思えば、足首に痛みが走りよろける。
「おっと!」
そんな私を、切島くんは咄嗟に抱き止めてくれた。
「『!』」
切島くんに抱き締められることは何度もあったのに、さっきの話も相まってなんだか恥ずかしい。
『ご、ごめん!"個性"でまだ回復してなかったから、ちょっとよろけちゃって…』
「い、いや、俺も無理矢理立たせちまったし…」
切島くんもさっきの話を意識しているのだろうか、頬が赤くなっている。
「『…』」
沈黙が流れて私はハッとする。
早く離れて足首の痛みを回復させないと。
『あ、あの、切島くん…もう支えてもらわなくても大丈…』
「………少し…」
『…え?』
私が聞き返すと、切島くんは私を抱き締める力を強くした。
「もう少し、こうしてて良いか」
言っていることは質問なのに、言い方は質問系になっておらず。
そんな風に言われれば、私は頷くことしかできなかった。
「もう俺を避けんな…俺の隣から居なくなろうとすんな」
相当嫌だったのだろうか、切島くんはその話を掘り返しては悲しそうな表情を見せる。
ごめん、と私は呟いて全身の力を抜いた。
『ごめんね…』
何度も謝るが、彼は何も言わない。
ふわりと彼のシャツから彼の家の洗剤のにおいや汗のにおいが香る。
私は静かに目を閉じた。