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そんなこんなで職場体験最終日を迎えた私達。
今私は爆豪くんと並んで、ベストジーニストの前に立っている。
「君達の欠陥、"凶暴な人間性"、"甘い考え"…たった一週間ではまだ伝え切れていないことの方が遥かに多いが、これらを正すことはプロヒーローとして社会で上手く立ち回るために必要なことだ。この一週間でその重要性を感じたことだろう」
長いようで短かった職場体験がこれで終わる。
「君達二人は、同年代の生徒達に比べれば元々冷静さはある。それは君達の強みだ。以前の少女誘拐未遂事件でも、君達二人は現場で少女を保護したという…」
『!』
少女誘拐未遂事件…!
ハナちゃんが誘拐されそうになってそれを保護した(ことになっている)事件のこと、ベストジーニストは知ってたんだ。
「そして緊急時には君たちのような冷静さをもって行動することが大切になってくる。どんな時も冷静に、落ち着いて行動すること」
どんな時も冷静に、か。
「この一週間、君達に職場体験を通じて教えたことを今後どう活かしていくかは君達次第」
ベストジーニストのような超人気ヒーローに指名を貰えたこと自体奇跡に近い。
普段筋トレや体術取得に向けて訓練することしか頭に無かった私に、プロヒーロー以前に社会人としてのマナー、身嗜み、或るべき考え方…
たくさんのことを教えてくれたベストジーニストには感謝の言葉を並べても並べ足りない。
少し、物事に対する考え方の視野が広がった気がする。
「これからも、何事もまずは身嗜みを整えて心身共に引き締めていくことが大切だ」
『はい!』
「…」
「では、行きたまえ」
爆豪くんはベストジーニストに返事をしなかった。
でも彼はしっかりとベストジーニストの言葉を聞いていたようだ。
今回の職場体験は色んな意味で充実していた。
まさかまた敵に捕まるとは思っていなかったけれど…
こうして怪我一つ無く返されたのは運が良かっただけでしかない。
私が死柄木弔にした、"敵の傷を癒やす"と言う行為は決して許されるはずのないことだ。
誰にも言えない、死柄木弔と私、そして黒霧の秘密だ。
…でも。
『(流石に…こんな秘密、抱えて生きていけないよ…)』
もう今、この場で忘れよう。
無かったことにしよう。
前だけ見て、進んでいこう。
私はベストジーニストに一礼し、爆豪くんは特に何もせず、事務所を退室すべく並んで歩き出した。
『…』
扉に辿り着く前に少し振り返る。
ベストジーニストは営業スマイルだろうか、ニコッと鋭い目付きの目元を緩めて手を振ってくれた。
ベストジーニストは、女性には優しいみたいだ。
(ありがとう、ベストジーニスト)