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『ぃえっくしゅ!』
春から夏に変わる季節だとは言え、やっぱり夜は少し冷える。
かいた汗が冷えたのか、私はくしゃみをした。
『ぐすっ…あぁ~、さぶっ…』
…あれからどれくらいの時間が経っただろうか。
先程までは星が見えていた空は重い雲を重ねており、時計の針はすっかり子供の寝る時間を指している。
公園で動かずじっとしているのも良くないと思い、私は適当に走り回ることにした。
『(じっとしてても時間が過ぎていくだけだし、どっか大通りに出れば人くらい居るでしょ!東京だし!)』
そう考えて走り始める。
が…
ザァァア…
人と遭遇する前に、なんと雨が降り出したのだ。
突然やってきた雨雲が、ザァァと音を立てて雨を降らす。
私は慌てて先程の公園まで引き返し、屋根のある遊具の中で雨宿りすることにした。
砂を払って、私は適当に腰掛ける。
『う、運悪過ぎでしょ私…!』
狭い遊具の中で、ハァと溜め息をつく。
でもこの雨雲はたぶん通り雨だ。
しばらくここに居ればすぐに止むだろう。
『(こう天気が悪いと、気分も沈んじゃうな…暇潰す物も持ってないし…あ、そうだ)』
私は辺りに人が居ないことを確認して、また遊具の中に篭もる。
『~…♪』
鼻歌程度に歌を歌って、気分を誤魔化した。
『ふんふふーん…♪』
切島くんは今、何をしているんだろう。
今朝別れたところなのにもう寂しい。
『"目を腫らした君が二度と 悲しまないように笑える そんなヒーローになるための歌"…』
切島くんに呼び止められた時に掴まれた手の感覚を思い出して、私はその箇所に自分の手を重ねる。
ここ最近、私の勘違いのせいで避けてしまったり、酷いことをしてしまった。
早く謝りたい。
また笑い掛けてほしい。
私は切島くんが大好きだ。
『"今は触っていたいんだ 君の心に"…』
その時。
パシャッと泥を踏む音がした。
『(意外と近い!…誰かが通り掛かったんだ!)』
このタイミングを逃すと、次にいつ人と会えるか分からない。
行くなら今しかない!
私は雨など構わずに、反射的に遊具から飛び出した。
『あ、あのっ!…って、』
そこに居たのはなんと、雨でびしょ濡れになった爆豪くんだった。
彼は街中で会った時に首に掛けていたタオルを、頭に掛けて雨を凌いでいる。
『爆豪くん!?なんでこんなとこに…?』
「別にテメェには関係ねェ」
『いやどう考えてもおかしいよ…!』
「ランニングしてたら雨降ってきたから、雨宿りしようとしただけだろが。そこ退け邪魔だクソ髪の女、寒ィんだよボケ…」
『カフェ、だけど…』
私を遊具の奥へ押しやり、爆豪くんが遊具の中に入ってくる。
近くにやって来た爆豪くんの身体は思っていたよりもゴツくて、元々狭い遊具内が余計に狭く感じた。
『あれからこんな時間まで、何時間もランニングしてたの…?』
「だったら何だ、悪ィんか、あ゙ァ?」
『い、いや、練習熱心だなぁって…』
爆豪くんの肩先が、私の肩に少し触れている。
そこから伝わってくる彼の体温が、冷えた私の身体を少しあたためてくれた。
『爆豪くんあったかいね…爆豪くんの"個性"のおかげかな』
「爆破したらもっとあったけェけど」
『私死んじゃう!』
ただでさえ雨で体力奪われてるのに、爆破なんてされた日には気を失うだろう。
もう夜中でいつ雨が止むかも分からない状況なのに、爆豪くんが居てくれることに安心感を感じ、私は笑顔になれた。
『(そう言えばUSJの時もそうだったけど、爆豪くんはいつも安心感を与えてくれるなぁ)』
ちらりと爆豪くんの様子を伺い見ると…
「『!』」
ぱちっと目が合った。
「何ガンくれてんだコラ」
『(こんな調子だけど…)』
ガルルと威嚇?されたため、ごめんごめん、と私は笑って誤魔化した。
その頃には、雲の切れ間から小さく月が見えていた。