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放課後になった今。
梅雨ちゃんと私は、いつかガールズでお茶会をした時の、学校近くのカフェに来ている。
『わ、やっぱりここのケーキ美味しいねぇ!』
「えぇ。この前来た時のも美味しかったけれど、新作も美味しいわ!」
私達は笑顔でケーキを頬張った。
『そう言えば梅雨ちゃん、どうしたの?ここのカフェ、また来たかったの?』
「ケロ…」
私の言葉を聞いて、梅雨ちゃんは持っていたフォークをお皿の上に置いた。
「モカちゃんに笑ってほしかったのよ」
『…え…?』
じっと大きな目でこちらを見てそう言われ、私は言葉を失った。
「美味しいものを食べると笑顔になれる…そう思って。最近のモカちゃん、見ていてとても胸が痛いの。今日の緑谷ちゃんじゃないけれど、モカちゃんには笑っていてほしいわ…勝手だけど」
『梅雨ちゃん…』
「きっとみんなそう思ってるわ。切島ちゃんも、ね」
ドクンと心臓が跳ねた。
『あはは、梅雨ちゃんってほんと洞察力凄いよ…怖いくらい』
「私、思ったことは何でも言っちゃうの」
梅雨ちゃんの言葉に私は苦笑した。
彼女は何でもお見通しなのだ。
…これ以上は、一人で抱えきれそうにない。
『…あのね、』
私は梅雨ちゃんに全て話した。
切島くんの好意には昔から気付いていたこと、私も切島くんが大好きだということ。
体育祭前に"勝ったら大事な話がある"と言われたこと。
優勝できなかったけれど、彼がしようとしてくれた大事な話の内容が"彼氏が居るのかの確認"だったこと。
彼の話を聞く限り、高校に入ってから好きな人が出来たらしいこと。
私はそれを応援すべきだと思い、身を引くために今は彼を避けていること。
昨日学校帰りにファミレス前で鉢合わせた時、余所余所しく帰って行ったこと。
『それで切島くんが幸せになれるなら、良いかなって』
苦笑しながら言うと、梅雨ちゃんは首を傾げた。
「モカちゃんはとっても強い女の子だわ。でも、本当にそれで良いのかしら。そう思っているようには見えないけれど」
『!』
梅雨ちゃんの的を得た発言に私は俯いた。
…"切島くんが幸せならそれでいい"なんて。
本当は、そんなの綺麗事だ。
それで良いはずがない。
そうやって引き下がれるほど私は大人じゃないし余裕も無い。
『ほんとはね…めちゃくちゃ辛いんだ。苦しい、寂しい。応援しなきゃって思うけど、毎日切島くんのこと考えてしまう自分が居て…どうしたら良いのか分かんないの。痛いよ…』
「ケロ…辛かったわね」
梅雨ちゃんの言葉にこくんと頷く。
「まず、ファミレスの件は気にしなくて良いわ。それよりも、切島ちゃんの心の中からモカちゃんは居なくなってないと思うわ」
『え…そ、それって…?』
梅雨ちゃんの遠回しな言い方に私は顔を上げる。
『でも、高校に入ってから好きな人が出来たって切島くんは、』
「言ってたの?」
『…』
あの日の切島くんの言葉を思い返す。
"やっぱ高校生にもなれば誰でも、恋愛のこととか意識し出すだろ?ちょっと参考にしようと思っただけだ!"
『…言って…ない…』
「ケロケロッ!」
梅雨ちゃんは笑顔で頷いてくれた。