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尾白くんと共に学校を出るととっくに日は沈み、辺りは既に暗くなっていた。
「暗いね…カフェさん、家まで送ってくよ!」
確か尾白くんとは帰る方面が一緒だけれど、途中からは違った気がする。
家までなんて申し訳無いや。
『いいよいいよ、大丈夫!』
「でも危ないよ?」
『もし敵に襲われても、今日教えてもらった柔道の技、試してみたいしさっ!』
構えのポーズを取って見せると尾白くんは苦笑した。
「そっか…じゃあ途中まで、だね」
『うん!帰ろー!』
私達は肩を並べて歩き始める。
尾白くんとは話していて気が楽だ。
体術コンビと言われるくらいだし、相手の動き方が参考になることが多い。
まぁ体術コンビと言っても、私は彼には到底及ばないけれど…
だからもっと学ばせてもらわなきゃだ。
『そう言えば尾白くんのヒーロー名格好良いね、"武闘ヒーロー テイルマン"!分かりやすくて良い!』
「派手なのは性に合わなくてさ。シンプルなのが一番しっくり来たんだ」
『尾白くんらしいね!やっぱ武闘系のは格好良いな~!今度改名する時、私のにも武闘系の名前ちょっと付け足してみようかな~』
「カフェさんのキュアヒールも、なんとなくプリ○ュアのイメージ湧くからさ…ミッドナイト先生の言ってた通り、結構武闘派なイメージもあるかも」
『お、尾白くん~…!』
珍しくからかってくる尾白くんに私は顔を赤らめる。
違う、将来の夢はプリキ○アとか、そんなんじゃないんだ…!
尾白くんとの話が盛り上がっていると。
ピロロン ピロローン
「ありがとうございましたー!」
ちょうど通り掛かったファミレスから見知った人物が出て来た。
「マジ世話焼ける!」
「アホだろ…」
上鳴くんと響香ちゃんと、
「いやー!タメになったわ!」
切島くんだ。
「「…あっ」」
いち早くこちらに気付いた上鳴くんと響香ちゃんは、尾白くんと私が並んでいるのを見てサァッと顔を青くした。
そしてそれを見た切島くんがこちらを振り返る。
「『!』」
なんて悪いタイミングなんだ。
「おう!尾白と…モカか!」
こちらを見る彼の表情にはどこか影が差していた。
「(や…ヤベーよ…今のこの状況マジヤベーよ…!)」
「(なんつータイミングの悪さだよ!よりにもよってこんな…!)」
「(あぁ…空気が重い…)」
上鳴くん、響香ちゃん、尾白くんはその場で固まってしまった。
「…今帰りか?遅くまで練習、ご苦労なこった!」
普段の調子を崩さず話し掛けてくれる切島くんに、私もできるだけ通常通り振る舞おうと心掛ける。
『う…うん。三人とも勉強会か何か?偉いねこんな遅くまで…』
「あっ…ま、まぁそんな感じだ!」
『(あれ?私、いつも通りに振る舞えてなかったかな…)』
一瞬、明らかに切島くんは動揺したように見えた。
でもそれを必死に取り繕っている。
『(上鳴くんと響香ちゃんには話せて、私には話せないこと…か…)』
隠そうとしているなら別にそこを突くつもりはない。
誰にだって知られたくないことはあるし。
そこまで考えて、私はピンと来た。
『(恋をしているっぽい切島くん…しかもそれは高校に入ってから…。彼は以前、私に"彼氏は居るのか"聞いてきた…)』
ちらりと切島くん達の方へ目線を遣る。
『(切島くんと一緒に居るのは上鳴くんと響香ちゃん、男女一人ずつ…。それに明らかに動揺した様子の切島くん…)』
それってつまり…
『(コイバナ、だ…)』
悲しかった。
最近私から避けていたとは言え、彼に頼りにされないのが。
まぁ恋愛経験が乏しい私よりも、確かに彼等にアドバイスを求めた方が良い回答が返ってくるとは思うけど…
それでもさ…
『(私、もう切島くんの"相棒"ですらないのかなぁ)』
心にぽっかりと穴が空いた気分だった。