「「『個性把握…テストォ！？』」」

みんな初対面とは思えないくらい息ピッタリでハモった。

「入学式は！？ガイダンスは！？」

「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出る時間無いよ。雄英は"自由"な校風が売り文句。そしてそれは"先生側"もまた然り…中学の頃からやってるだろ？"個性"禁止の体力テスト」

茶髪ボブの女の子の言葉に淡々と答える相澤先生。

「爆豪、中学の時ソフトボール投げ何メートルだった？」

「67メートル」

わぁ、覚えてるんだ凄い。

…じゃなくって、67メートルも飛ばせたの…！？

凄過ぎじゃない！？

爆豪と呼ばれた金髪くんの記録を聞かされて私は驚く。

「じゃあ、"個性"を使ってやってみろ」

円から出なければ何をしても良いとのこと。

相澤先生が、思いっ切りな、と爆豪くんに声を掛ける。

「んじゃまぁ…」

身体を軽く動かした爆豪くんが、ボールを投げた。

「っ死ねえ！！」

「『…死ね？』」

緑谷くんとハモる。

いやボール投げの掛け声が"死ね"って。

ちょっと待って、ツッコミが追い付かない。

「まず自分の最大限を知る。それがヒーロー素地を形成する合理的手段」

先生の持つ端末に"705.2ｍ"と画面に表記されたのを見て、私含めクラスメイトが歓声を上げる。

「705メートルってマジかよ…」

「何だコレ！すげー面白そう！」

「"個性"思いっきり使えんだ、流石ヒーロー科！」

確かに"個性"を使って本気での体力テストはやったことなかったもんなぁ。

ワクワク…はしないけど、確かにちょっと面白そうかも。

私の"個性"は爆豪くんみたいに直接的に体力テストに使えるものじゃない。

でも、自分の体力を回復させ続ければ…

『(いつだって体力満タン状態でテストを受けることが出来る…！)』

自分でも口角が上がるのが分かった。

「…」

私の隣でニヤリと笑みを漏らす切島くん。

なんだ、切島くんもやる気満々じゃん。

「面白そう、か…」

『？』

ぽつりと呟いた相澤先生に、私は小首を傾げる。

「ヒーローになるための三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい？」

…なんか嫌な予感がするぞ。

「よし。8種目トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

「「『はぁああ！？』」」

「生徒の如何(いかん)は俺達の"自由"！ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ！」

最下位は除籍って…そんなこと本当にあるの！？

私の心内を代弁するかのように、退会除籍は理不尽過ぎると言う茶髪ボブの女の子。

相澤先生はまた淡々と説明する。

自然災害や、いつどこから来るか分からない敵達などの理不尽を覆していくのがヒーローなのだと。

「これから3年間雄英は全力でお前達に苦難を与え続ける。更に向こうへ、"Plus Ultra"さ。全力で乗り越えて来い」

なるほど、と私は心の中で思った。

これだと遊ぶ暇もないって訳だ。

「さて、デモンストレーションは終わり。こっからが本番だ！」