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相澤先生のホームルームが終わると、クラスメイトのみんなはすぐに教室を出て行った。
みんな相当疲れていたようだ。
私も例外ではないけれど。
『みんなすぐ帰っちゃったねぇ』
「だなー」
只今、切島くんと二人きりで教室に居る状態。
私達は適当な席に隣合って腰掛けた。
『いやぁめっちゃ濃い一日だった!今日はよく眠れそうだよ〜』
「だなー」
『爆豪くん一位で凄かったね!』
「だなー」
『切島くんもお疲れ様!』
「…」
先程のメダルのやり取りをした時とは違い、明らかに上の空な切島くん。
上の空と言うか、落ち込んでいると言うか…
さっきまでのは空元気だったんだと思う。
切島くんは試合で負けて落ち込んでいたけれど、きっとそれ以上に爆豪くんのことが心配で、さっきまでは明るく振る舞っていたのだろう。
『切島くん。私、もっと戦いたかったな…情けない結果になっちゃった』
「…いや!モカは全く情けなくなんてねェよ!寧ろ男らしかったぜ!?」
切島くんは自分も落ち込んでいるはずなのに、私の言葉を聞くとすぐに顔を上げて私に優しい言葉を掛けてくれる。
確か、私が尾白くんと揃って棄権宣言をした時に、切島くんは"男らしいな!"と言いながら涙を流してこちらを見ていた。
『筋トレしたり体術練習したり…毎日特訓したけど、何も活かせなかったし…』
「んなこたねェよ!大丈夫だ、お前が恥じることなんか何もねェ!」
切島くんはその大きな手のひらで私の頭を撫でてくれた。
『(実際ベスト8まで行って、身体を張って戦った切島くんの方が辛いはずなのに)』
彼はとても優しい。
私はいつもその優しさに甘えてしまう。
『ありがとう切島くん…来年こそ勝てるように、私頑張るよ!』
「おう、俺も特訓付き合うぜ!」
彼はそう言って笑顔を見せてくれた。
でも、彼の笑顔はどことなく引き攣っていて。
『…切島くん?』
「!」
目が合うと、彼の瞳は一瞬揺らぎ、ふいっと目を逸らされた。
「…」
『…』
沈黙が続く。
切島くんはまた俯いてしまった。
私は空気を変えようとして席を立つ。
『私何か飲み物買ってくるよ!切島くんはここで待っ…』
「モカ…!」
私が全て言い終わる前に、パシッと腕を掴まれた。
『ん…?』
「この前俺ん家で話したこと、覚えてるか?」
切島くんは座ったまま、私は立ったままなので身長差があるが、切島くんは手元に目線を落としたまま私に問う。
"体育祭で俺が勝ったら、モカに大事な話をしてェんだ"
"大事な、話…?"
"あぁ、だから俺は絶対ェ誰にも負けねェ。モカにも勝って優勝して、そんで話を聞いてもらう"
『うん…』
一連の会話を思い返して私はこくりと頷く。
「…俺、さ」
彼にしては珍しく歯切れの悪い口振りで話し始めた。
「本気で優勝するつもりだったんだ。本気で戦って…勝って、それで…」
『うん』
「モカに"おめでとう"って言ってもらいたかった、そしたら話したいことがあった」
『うん』
彼の気持ちに比例するかのように、彼の言葉に拍車が掛かっていく。
「なのに!情けねぇことに俺ァ…!」
私の腕を掴む彼の手に力が入る。
「負けちまった…!!」
彼が口を開くと同時に、彼の目から涙が溢れた。