09
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「それではこれより、表彰式に移ります!」
私達一年はグラウンドに整列しており、周囲からは歓声が湧く。
『(眠い…)』
今日は明らかに"個性"を使い過ぎた。
小休憩ごとに仮眠は取っていたものの、ここまで居眠りをしていない自分に驚いているくらいだ。
「最早悪鬼羅刹…」
「ん゙ん゙ーーーッ!!!」
「…」
瞼を擦りながら前方を見ると、表彰台には爆豪くん、轟くん、常闇くんが立っていた…のだが…
「締まんねぇ一位だな…」
『…』
爆豪くんは轟くんに何やら、もごもごと話し掛けているようだ。
うぅん、あれは話し掛けてるなんてもんじゃないな…
轡をしていなければ怒鳴り散らしているのだろう。
轟くんは完全に爆豪くんを視界から除外している。
「三位には常闇くんともう一人、飯田くんが居るんだけど…ちょっとお家の事情で早退になっちゃったので、御了承くださいな」
「メディア意識…!」
カメラに向かってポーズを取るミッドナイトは、それはもうセクシーだった。
更に、まさか常闇くんがツッコむとは思っていなかったから驚いた。
「メダル授与よ!今年メダルを贈呈するのは勿論この人!」
「ハーッハッハッハ!!」
歓声と共にどこからともなく現れたのは、No.1ヒーローオールマイト。
「私がメダルを持って来た!!」
「我等がヒーロー オールマイト!!」
しかしオールマイトとミッドナイトの息が合わず、二人共セリフが被ってしまう。
ミッドナイトはすぐに気を取り直してメダルを持った。
「それではオールマイト、三位からメダルの授与を」
それに倣ってオールマイトは三位の常闇くんから、おめでとうの言葉を言って抱き締めて丁寧にアドバイスをしていく。
二位の轟くんにも同じようにしていた。
そして一位の爆豪くんの前に立つとオールマイトは笑って彼の轡を外してやった。
「っと、こりゃあんまりだ」
「オールマイトォ…」
「ん?」
「こんな一番…何の価値もねェんだよ!世間が認めても自分が認めてなきゃゴミなんだよぉおお!!」
叫び散らす爆豪くんを眺めながら、"真っ直ぐだなぁ"なんてぼんやりと考える。
「うむ、相対評価に晒され続けるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない。メダルは受け取っとけよ!"傷"として!忘れぬよう!」
「要らねっつってんだろが!!」
「まァまァ」
「だっから要らねェって!」
「せいっ!」
メダルの紐の部分を、要らぬ要らぬと言う爆豪くんの口に噛ませたオールマイトは私達の方へと振り返る。
『(あ。爆豪くん、ちゃんとメダル(噛んで)持ってる。必死なとこ悪いけどなんか可愛いな)』
「さぁ今回の勝者は彼等だった!しかし皆さん、この場の誰にもここに立つ可能性はあった!ご覧頂いた通りだ!競い、高め合い、更に先へと登っていくその姿!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!」
オールマイトの声がグラウンドに良く響いている。
「てな感じで最後に一言!皆さんご唱和ください!せーのっ!」
「「『プルスウルトラー!!』」」
「お疲れ様でしたー!!」
一瞬会場が凍り付く。
「そこはプルスウルトラでしょオールマイト!」
「え、あ、いや…疲れただろうなって思って…」
『あはは、ほんっと締まんないなぁ…!』
ブーイングで締まったこの体育祭だったが、私はその場で小さく笑った。