09
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
緑谷くんの言ってることはめちゃくちゃ格好良い。
けど…
緑谷くんは勝ちたいのか負けたいのか…
勝ちたいことに間違いは無いのだろうけど、やっていることは敵に塩を送るような行為だ。
「緑谷、何のつもりだ…全力?クソ親父に金でも握らされたか…!」
緑谷くんに対する轟くんの表情に浮かんでいるのは"憎悪"。
走り出す轟くん。
「!」
「動きが…鈍い!?」
『(身体に霜がおりたからだ…轟くんは"個性"を使う時、いつも氷の息を吐く。炎を使えば体温調整できるはずなのに…)』
そう考えていると…
緑谷くんが轟くんを殴り飛ばした。
《「モロだぁああ!!生々しいの入ったぁあ!」》
二人は攻防戦を続けるが、明らかに轟くんの氷の威力が弱まっている。
「なんで…そこまでっ…」
「期待に応えたいんだ…!笑って応えられるような…カッコイイ人に…なりたいんだぁあっ!!」
言いながら緑谷くんが轟くんを殴る。
「だから全力で!やってんだ、みんな!君の境遇も君の決心も…僕なんかに計り知れるもんじゃない…でも…全力も出さないで一番になって完全否定なんて…ふざけるなって今は思ってる!!」
「…うるせェ」
「だから…僕が勝つ!!君を超えてっ!!」
再度緑谷くんは轟くんを殴り飛ばす。
「俺はこいつを…親父の、力を…」
「君の!…力じゃないかッ!!」
「!」
突如どこからか現れた炎が会場内を渦巻いた。
《「こ、これはぁああっ!」》
『この炎…!』
「ね、熱きたっ…!」
「使った…!」
轟くんが左側の…炎の"個性"を使った。
激しい熱風が私達を包み、思わず目を瞑る。
「…勝ちてぇくせに…ちくしょう…敵に塩送るなんて…どっちがふざけてるって話だ…!」
なんとか目を開けてステージに居る轟くんを見る。
「俺だって…ヒーローに…!!」
轟くんは笑っていた。
辛そうに、苦しそうに、笑っていた。
それはもう、見ているこちらが胸を締め付けられるくらいの切ないものだった。
「焦凍ォォオオオ!!やっと己を受け入れたか!そうだ!良いぞ!ここからがお前の始まり!俺の血をもって俺を超えて行き…俺の野望をお前が果たせ!!」
少し離れた観客席から男性の声がする。
驚いてそちらを振り返るとそこに居たのはプロヒーローのエンデヴァーだった。
そうか、轟くんのお父さんがエンデヴァーなんだ。
ステージに目を戻すと、ここからじゃ見えにくいはずなのに…
『…』
静かに涙を流す轟くんがハッキリと目に映った。
《「エンデヴァーさん急に"激励"…か?親バカなのね」》
「凄…」
「何笑ってんだよ…その怪我で、この状況でお前…イカレてるよ…!どうなっても知らねぇぞ…!」
二人が渾身の力をぶつけ合う。
すると大きな爆発が起きたかのように、物凄い風圧に瓦礫が乗って観客席まで飛んで来る。
「何これぇえ!?」
「マジかオイ…!?」
「どうなってますの!?」
「何も見えねぇ…おい、これ勝負はどうなってんだ!?」
煙が徐々に無くなる。
そこに見えたのは…
「緑谷くん…場外」
とさりと地に倒れる緑谷くんだった。
「轟くん、三回戦進出!!」