立海
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【誰も知らないカオ】
ーーーーー とある夏のこと
順調に勝ち進んでいる立海の試合を
俺は他の奴等から離れた木陰で眺めていた
今、コートにいるのは 同じ1年の幸村だ
入学してからの付き合いではあるが、
あいつの強さはバケモノ染みている
負けることはない
そんなバケモノの試合
大概の奴は夢中になるから、俺がこうしてサボり…涼んでいようが気付かれない
テニスをしている時なら、陽射しなんぞ気にはせんが
こうしてただ見ているとなれば、話は別じゃ
暑いもんは暑い
陽射しから逃れて座り込んでいた俺は
ふと、コートの外へ視線が向く
まず、目に入ったのは ーーー 鮮やかな青
俺のいる木陰から少し離れた所に
目を引く青と白のジャージを着た女が立っていた
(このジャージ…… 青学じゃったか)
帽子を目深にかぶっちょるから、顔は見えんが
背丈は俺と大差ないくらいか
ジャージのサイズが合っとらんのか、少しぶかぶかなようじゃ
帽子の下から流れる黒い髪が、
木漏れ日を受けてキラキラと光っている
普段なら、他人…特に女なんぞは興味も持たんが
こちらに気付く様子もなく、熱心にコートを見つめるそいつが、
何故か気になった
ーーー どうにかして、こちらを向かせたい
「ゲームセット!ウォンバイ 立海・幸村!!」
不意に響く審判のコールで、俺は我に返る
幸村の試合中なのを忘れ、名も知らん奴に気を取られていたとは
仕方ない、戻らんと
誰とは言わんが小言を言われそうじゃ
そう思いながら、立ち上がろうとした所で急な風が吹いた
同時に、俺の前へ見覚えのある帽子が転がる
転がってきた先へ目を向けると、
さっきの女が驚いた様子でこちらを見ていた
俺がいたことに今、気付いたらしい
俺はその帽子を拾い上げ、そいつの前に立つ
やはり、背丈は俺とほぼ変わらんようじゃ
ちと、悔しい
しかし、ようやく顔が見えた
深い海のような、夜空のような色を宿した瞳
その奥に見えるのは、戸惑いか、警戒か
どちらかと言えば無表情に近いが、
その瞳に感情が見えるタイプらしい
顔が見えたことに満足した俺は
持っていた帽子をそいつに差し出す
「おまんのじゃろ」
「…すみません」
俺の言葉に頷いた女は、帽子を受け取ると1度 頭を下げて、踵を返す
ーーー パシッ
立ち去ろうとしたそいつの手を
俺は咄嗟に掴んでいた
女はまた驚いた様子を見せたが、1番驚いているのは俺自身じゃ
完全に無意識の行動
こんなことは初めてじゃった
ーーーーーーーー
(……夢か)
急に変わった視界
そこにあるのは、真夏のコートではなく
見慣れた天井と、見覚えのある本の背表紙
「ハル?」
起きた?と問いながら
本の向こうから顔を見せたのは、あの時の女 ーー 怜
青学の3年で、テニス部のマネージャー
今は、俺のカノジョでもある
どうやら、怜の膝を借りたまま寝ていたらしい
懐かしい夢を見たのは、そのせいか
名残惜しさもあるが、ゆっくり身体を起こした俺は
改めて、怜の顔に視線を向ける
表情が変わりづらいのは、昔のままじゃが
付き合うてから、柔らかいカオを見せるようになった
光を受ける黒い髪は、あの頃より少し長い
栞を挟むため、手元の本へ視線を向けている怜
そのせいで、長い髪がさらりと落ち、俺の視界から顔を隠す
視界を遮る髪を耳へ寄せると、
あの頃と変わらない瞳に俺が写る
こちらへ顔が向いた ーーーーー
頭の後ろへ回した手を緩め、怜の顔を見る
何が起きたか…という様子じゃったが、理解したらしい
白い頬や耳が、段々と赤く染まっていく
静かな光を湛えていた瞳にも、同じような色が滲む
他の奴等は知らない、俺だけに見せるカオ
「かわえぇのぅ」
「……/////」
赤く染まる頬を撫でながら言えば、
怜は俺の肩に額を押し付けて顔を隠す
まだ見ていたかったんに、残念じゃ
再び頭へ手を回し、サラサラとした髪を撫でる
「嫌じゃった?」
「…嫌、じゃ…ない……」
恥ずかしい…と続いた声は、随分と小さい
抱きしめるのにもようやく慣れて来た怜には、刺激が強かったらしい
だからといって、緩める気はないがの
まだまだ、こんなもんじゃないぜよ
手放す気もないから
覚悟しときんしゃい
そんなことを思いながら
俺は怜を抱きしめ直した
そういえば…
キスするんは、これが初めてじゃったのぅ
End.