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【陽だまりの邂逅】
穏やかな陽射しが降り注ぐ、ある日のこと。
自室のベッドにて目を覚ました結野 怜は、傍らに見知った背中を見つけた。
「……… 国光…?」
「起きたか、怜」
隣の家に住む幼馴染みーー手塚 国光が、ベッドに背を預けて座っていた。その手には洋書が開かれている。
彼は読んでいた頁に栞を挟むと、怜に向き直った。
「気分はどうだ?」
ゆっくりと体を起こす彼女に手を貸しながら、手塚が尋ねる。
「…大丈夫」
「…そうか」
その返答を聞くや否や、手塚は彼女の額に自身の左手を当てる。
「熱は下がったようだな」
「だから、大丈夫だって」
心配性だな、国光は。
怜は、言外にそんな言葉を滲ませる。
喘息持ちで虚弱体質ゆえか。幼い頃から寝込むことの多かった怜。
今日も、昨日から微熱が続いていたため、こうして休んでいたのだ。
その度に、手塚は彼女の傍で過ごすことが習慣となっていた。
離れて過ごす期間が数年あっても、それは健在で…。
本当は外でテニスをしたいだろう。
他の友人との予定もあるだろう。
自分のせいで、手塚に要らぬ枷を与えてしまっている。
こうして寝込む度、怜はそう気に病んでいた。
「怜?どうした?」
やはり、まだ体調が良くないのか。
そう思った手塚は、黙り込んだ怜に視線を合わせる。
「……国光。いつも来なくて、良いんだよ…?」
ただ、少し熱が出ただけ。寝てれば治る。いつも、そう。
「…迷惑、か?」
「っ…!そうじゃ、ない…、」
迷惑をかけているのは、手塚の時間を奪っているのは、自分の方。
だから……、
真っ直ぐに向けられる手塚の瞳から逃れるように、怜は顔を俯かせる。
そんな彼女の頭に優しく手を添えて、手塚は言葉を紡ぐ。
「……迷惑でないなら、これまで通りにさせてくれ。
俺が…、駄目なんだ」
そこで怜は、はっと思い出す。
ーーー 怜を1人にするのは、俺がだめだ
幼い頃にも、寝込んでいた彼女へ向けて手塚は同じことを言っていた。
(変わらないな…、国光は……)
今より幾分も小さかった互いの姿を思い返し、怜はふぅ…と息を吐く。
「………国光」
ーーーーー ぽすっ
手塚の名をぽつりと呼び、怜は目の前にある彼の肩へ頭を預ける。
「少しだけ… こう、させて」
小さな声であったが、手塚の耳には確かに届いていた。
自身に預けられた彼女の頭を優しく撫でる。
「…少しではなく、
好きなだけ、こうして構わない」
手塚は空いている片手で彼女を引き寄せると、さらりと流れる髪に頬を寄せる。
彼の心地良い温もりに包まれながら、怜は静かに瞳を伏せた。
窓からは穏やかな陽射しとともに、優しい風がふわりと吹き込んでいた。
End.