立海
夢小説設定
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【 静寂の向こう 】
白く、ぼんやりとした世界
見渡しても、周りには… 何も無い…
ただ ただ、静かな世界…
(ここは… どこ…?)
気付くと、手足の先から輪郭がぼやけていく
ゆっくり… ゆっくり…
そうして、そのまま………
ーーーーー…
ふっと意識が浮上した怜は、ベッドに横たわったまま ぼんやりしていた。
(夢……)
見慣れた白い天井が、視界に入る。
そして、自分の左側に温かさを感じ、ゆっくりと目を向ける。
さらりと流れる色素の薄い髪。
先ほどまで居た空間と似た色を持つ人 ーー 仁王が、静かな寝息を立てていた。
いつも真っ直ぐに自分を見る切れ長の瞳が、今は閉じられている。
そのまま仁王を眺めていた怜は、音を立てないよう静かにベッドを出た。
寝室からもそっと抜け出し、リビングの窓辺へ向かう。
カーテンを少し開けた窓の外は、まだ朝と呼ぶには早いーー静けさに包まれていた。
そこへ落ちる、小さな雫達。
(雨……)
ぼんやりと、小さな雨粒が染めゆく景色を眺める怜。
しばらくそうしていたが、やがて、ゆっくりと座り込み、膝を抱えた。
(雨は……こわい………)
音も無く、静かに降り注ぐ雫のはずなのに。
彼女の耳には、確かに入り込む雨音。
その音から逃れるように、抱えた膝に顔を埋め、自身の両の手で耳を塞ぐ。
ーーーーー ぐいっ
「…!?」
音の侵食から逃れようとしていた怜は突然、後ろへ引き寄せられた。
その背が柔らかなものへ当たり、同時に温かさに包まれる。
「……ハ、ル…」
ゆるゆると見上げた先には、眠っていたはずの仁王がいた。
その腕は彼女のお腹にしっかりと回されている。
「……冷えちょる」
「………」
「…“また” 寝れん?」
「…!」
仁王の言葉に、怜は目を見開く。
彼女が夜中にベッドを抜け出すのは、今日が初めてではない。もう何日も続いていた。
しかし、仁王はいつも静かに眠っていたはず。
それなのに、なぜ…?
そんな疑問が頭を過るも、言葉を発せずにいる怜。
そんな彼女の頬に片手を添え、仁王はゆっくりと視線を合わせる。
「いい加減、甘えんしゃい。
おまんは、1人じゃない。俺が居るじゃろ。
1人で耐えんで。俺を頼れ、怜」
真っ直ぐに見つめながら注がれる言葉。
怜の瞳から静かに泪がこぼれ落ちる。
仁王はその雫をそっと拭い、彼女の目元に唇を寄せる。
「……ハル…」
「ん?」
「……あ、りがとう…」
濡れた瞳ではあるが、先程より幾分か柔らかな表情を見せた怜。
そんな彼女に笑みを返し、仁王は優しく唇を重ねた。
ーーーーーーー
すぅ…… すぅ………
静かな部屋に流れる、穏やかな寝息。
仁王に抱き締められたまま、怜は眠っていた。
(やっと寝れたようじゃの…)
しばらく見ることの無かった穏やかな寝顔に、仁王は安堵の息をつく。
付き合ってから大分 経つものの、“頼る”ことが苦手な怜。元来の性分もあるのだろう。
そんな彼女を甘えさせるべく、仁王はあらゆる手を講じて来た。
(いつまで経っても、甘え下手な奴じゃ)
これまでのことを思い返しながら苦笑いを浮かべ、目元に残る泪の痕をそっとなぞる。
「ゆっくり休みんしゃい。
好いとうよ、怜」
そう小さく告げた仁王は、眠る彼女の額に優しく唇を落とした。
カーテンで閉ざされている窓の外には、柔らかな青がゆっくりと広がっていた。
End.