露玉
貴女のお名前
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永遠なんてないから。
早朝のひやりとした風が頬を撫でる。
空気は清々しく、名無しさんはいっぱいに吸い込もうとして、
「ふぁ・・・」
欠伸をした。
似て非なるもの、年頃の女性としては些かはしたないが、徹夜明けでは致し方ない。
眠い目を擦り、この中庭に来たのは、ぼんやりとした頭を冷やす為もあるが、部屋へ戻るのに近道だったからだ。
一刻も早く寝台に飛び込んで突っ伏したい。
そのまま目が覚めるまで、と考えないでもないが、先ず無理だろう。
何せ、万年人材不足、扱き使われるのは当たり前だ。
吐いて出るのは溜め息ばかり、名無しさんはもう一つ、盛大な欠伸を零した。
「何か、疲れてる?」
と、草むらの陰から声が聞こえ、慌てて口元を隠す。
視線を巡らせてみれば、筆を手にした馬岱が大きな石を椅子代わりに座っていた。
「馬岱様」
「おはよう、名無しさん。可愛い欠伸だね」
言われて、名無しさんは頬を染める。
「・・・見てたんですか?」
「うん、ばっちり見てたよ」
「もう・・・」
その言葉に、頬が益々熱くなり、誤魔化すように言った。
「所で、何をしてたんです?」
「何って、ほら。そこ見てよ」
馬岱はつい、と筆で指す。
その先には、青々とした葉、その上にころんとした朝露が煌めいているのが見えた。
「・・・綺麗ですね」
「うん。直ぐ乾いちゃうから、この時間しか見れないからね」
「そうですね」
朝露を見る名無しさんの目元が緩む。
その姿に、馬岱が困ったような息を吐いた。
「うーん、どうしよう」
「どうかしたんですか?」
名無しさんは視線を馬岱に戻すと、彼がじっとこちらを見ている事に気付く。
その視線は、清々しい朝にしては少々、甘過ぎるように名無しさんには思えた。
「本当はね、絵を描こうと思ってたんだ」
と、言いながら、馬岱は立ち上がる。
ゆっくりと歩を進め、名無しさんの傍に遣って来ると、ちらりと朝露に視線を向けた。
「でも、これよりも綺麗なの見ちゃったら、やる気がなくなったよ」
そう言って、馬岱は名無しさんの顔を覗き込む。
「寝不足な君も可愛いね」
至近距離で言われて耐えられる訳がない、名無しさんは慌てて距離を取ろうとして一歩、退いた。
「そう言う事・・・朝っぱらから言わないで下さい!」
「えっ、何で?時間なんて関係ないでしょ?可愛いって思ったから可愛いって言ってるだけだもの」
「だから・・・もう!」
可愛いの大安売りじゃないんだから。
名無しさんは居た堪れなくなって、馬岱に背を向ける。
そのまま、部屋へ向かってすたすたと歩き出した。
「えっ、名無しさん。ちょっと待ってよ」
「待ちません!」
「そんなに怒らないでよぉ」
馬岱が笑いながら追い掛けて来る。
どうしたって男と女、体格に差があれば、歩幅にも差がある訳で、
「はい、捕まえた」
馬岱に肩を優しく掴まれ、振り向かされた。
その拍子に、馬岱が未だ手にしていた筆が揺れ、たっぷりと含んだ墨が飛ぶ。
小さく弾ける音がして、間を置かずに名無しさんは頬に冷たい感触を覚えた。
「え、何・・・?」
言うが早いか、頬に指先で触れる。
離して見てみれば、指先に墨が付いていた。
馬岱もそれを見て、慌てて誤る。
「うわ、ごめん!他に何処か・・・服は?大丈夫?」
「服は・・・ええ、飛んでないみたいです」
「良かったあ・・・」
服に付いたら中々落ちないと知っていれば、馬岱は安堵したように息を吐いた。
「本当にごめん。態とじゃないんだけど・・・」
「態とだったら怒りますよ」
くすくすと笑って、名無しさんは続けて言う。
「どうせ顔も洗うんです。気にしないで下さい」
「うん・・・でも」
馬岱は名無しさんの顎に指を添えて支えると、流れるような動きで彼女の耳元に唇を近付けた。
「それだと、俺の気が済まないから」
「え・・・?」
「ちょっと、じっとしてて」
その瞬間、馬岱の唇が名無しさんの頬に触れる。
時間にしてみれば、ほんの僅かの事。
軽い音を立てて離れてから漸く、馬岱に何をされたかが分かり、名無しさんは息を飲んだ。
「ば・・・馬岱様!?」
「ん、取れたみたい。良かった」
「良かったって・・・」
何も唇で取る必要はない筈だ。
そう言おうとしても言葉に出来ず、触れられた頬に手を当てて、ぱくぱくと口を動かす彼女に、馬岱は追い討ちをかける。
「ぼんやりしてる名無しさんが無防備過ぎて可愛いかったから」
「・・・っ!」
もう何も言えない。
早朝のひやりとした風が頬を撫でる。
空気は清々しく、名無しさんはいっぱいに吸い込もうとして、
「ふぁ・・・」
欠伸をした。
似て非なるもの、年頃の女性としては些かはしたないが、徹夜明けでは致し方ない。
眠い目を擦り、この中庭に来たのは、ぼんやりとした頭を冷やす為もあるが、部屋へ戻るのに近道だったからだ。
一刻も早く寝台に飛び込んで突っ伏したい。
そのまま目が覚めるまで、と考えないでもないが、先ず無理だろう。
何せ、万年人材不足、扱き使われるのは当たり前だ。
吐いて出るのは溜め息ばかり、名無しさんはもう一つ、盛大な欠伸を零した。
「何か、疲れてる?」
と、草むらの陰から声が聞こえ、慌てて口元を隠す。
視線を巡らせてみれば、筆を手にした馬岱が大きな石を椅子代わりに座っていた。
「馬岱様」
「おはよう、名無しさん。可愛い欠伸だね」
言われて、名無しさんは頬を染める。
「・・・見てたんですか?」
「うん、ばっちり見てたよ」
「もう・・・」
その言葉に、頬が益々熱くなり、誤魔化すように言った。
「所で、何をしてたんです?」
「何って、ほら。そこ見てよ」
馬岱はつい、と筆で指す。
その先には、青々とした葉、その上にころんとした朝露が煌めいているのが見えた。
「・・・綺麗ですね」
「うん。直ぐ乾いちゃうから、この時間しか見れないからね」
「そうですね」
朝露を見る名無しさんの目元が緩む。
その姿に、馬岱が困ったような息を吐いた。
「うーん、どうしよう」
「どうかしたんですか?」
名無しさんは視線を馬岱に戻すと、彼がじっとこちらを見ている事に気付く。
その視線は、清々しい朝にしては少々、甘過ぎるように名無しさんには思えた。
「本当はね、絵を描こうと思ってたんだ」
と、言いながら、馬岱は立ち上がる。
ゆっくりと歩を進め、名無しさんの傍に遣って来ると、ちらりと朝露に視線を向けた。
「でも、これよりも綺麗なの見ちゃったら、やる気がなくなったよ」
そう言って、馬岱は名無しさんの顔を覗き込む。
「寝不足な君も可愛いね」
至近距離で言われて耐えられる訳がない、名無しさんは慌てて距離を取ろうとして一歩、退いた。
「そう言う事・・・朝っぱらから言わないで下さい!」
「えっ、何で?時間なんて関係ないでしょ?可愛いって思ったから可愛いって言ってるだけだもの」
「だから・・・もう!」
可愛いの大安売りじゃないんだから。
名無しさんは居た堪れなくなって、馬岱に背を向ける。
そのまま、部屋へ向かってすたすたと歩き出した。
「えっ、名無しさん。ちょっと待ってよ」
「待ちません!」
「そんなに怒らないでよぉ」
馬岱が笑いながら追い掛けて来る。
どうしたって男と女、体格に差があれば、歩幅にも差がある訳で、
「はい、捕まえた」
馬岱に肩を優しく掴まれ、振り向かされた。
その拍子に、馬岱が未だ手にしていた筆が揺れ、たっぷりと含んだ墨が飛ぶ。
小さく弾ける音がして、間を置かずに名無しさんは頬に冷たい感触を覚えた。
「え、何・・・?」
言うが早いか、頬に指先で触れる。
離して見てみれば、指先に墨が付いていた。
馬岱もそれを見て、慌てて誤る。
「うわ、ごめん!他に何処か・・・服は?大丈夫?」
「服は・・・ええ、飛んでないみたいです」
「良かったあ・・・」
服に付いたら中々落ちないと知っていれば、馬岱は安堵したように息を吐いた。
「本当にごめん。態とじゃないんだけど・・・」
「態とだったら怒りますよ」
くすくすと笑って、名無しさんは続けて言う。
「どうせ顔も洗うんです。気にしないで下さい」
「うん・・・でも」
馬岱は名無しさんの顎に指を添えて支えると、流れるような動きで彼女の耳元に唇を近付けた。
「それだと、俺の気が済まないから」
「え・・・?」
「ちょっと、じっとしてて」
その瞬間、馬岱の唇が名無しさんの頬に触れる。
時間にしてみれば、ほんの僅かの事。
軽い音を立てて離れてから漸く、馬岱に何をされたかが分かり、名無しさんは息を飲んだ。
「ば・・・馬岱様!?」
「ん、取れたみたい。良かった」
「良かったって・・・」
何も唇で取る必要はない筈だ。
そう言おうとしても言葉に出来ず、触れられた頬に手を当てて、ぱくぱくと口を動かす彼女に、馬岱は追い討ちをかける。
「ぼんやりしてる名無しさんが無防備過ぎて可愛いかったから」
「・・・っ!」
もう何も言えない。