あんたどう思う?
貴女のお名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
俺に口説かれてくれるか?
不機嫌を隠そうともせず、頬を膨らませている彼女に、賈詡は苦笑いを浮かべた。
俺に文句の一つでも言ってやらないと気が済まないって顔だな。
だが、言った所でどうしようもないし、俺に文句を言うのは筋違いだと分かっている。
その行き場のない感情を、自分でも持て余しているのだろう。
どうして良いか分からず、取り敢えず、俺の所に来たのだろうが、その行動は褒めてやろうと思う。
何せ、彼女は膨れっ面も可愛いのだ。
これでもかと膨らませた白く滑らかな頬、まるで口付けを強請っているかのようにも見える、尖らせた赤い唇、不機嫌丸出しだが、裏を返せばそこに付け入る隙がある、そんな彼女を放っておく男なんて、俺も含めて居る筈もない。
聞いてやるのは吝かではないが、さて、素直にぶつけてくるがどうか。
「名無しさん、言いたい事があるなら・・・」
「ありません」
言葉を重ねる事で遮られ、賈詡は溜め息を吐く。
やれやれ、相当、お冠のようだ。
肩を竦めて、賈詡は手元に広げた地図をちらりと見遣る。
本隊は上手くやってくれてるだろうか。
そろそろ、報せがやって来ても良い頃合いだが。
そう思ったとほぼ同時に息を切らした伝令が天幕に駆け込んで来た。
「張遼将軍が敵将の首を討ち取りました!我が軍の勝利です!」
「そうかい、そいつは何よりだ」
勝利に興奮気味な伝令は言うだけ言って、賈詡の返事も待たずに天幕を後にする。
賈詡は一つ、首を鳴らすと、未だ揺れる入口の仕切布を眺めて言った。
「それじゃ、俺は後始末に行くが・・・」
膨れたままの名無しさんを振り返り、続けて言う。
「名無しさん、いつまで膨れっ面でいるつもりだ?折角の可愛い顔が台無しだ。俺が帰って来るまでには機嫌を直してくれていると嬉しいんだがね」
名無しさんは一瞬、何を言われたか分からず、きょとんとした表情を浮かべたが、次には顔を真っ赤にさせた。
賈詡はそれを認めると、口の端を吊り上げて天幕の入口を捲る。
言葉一つでああも変わるとは、全く、可愛いもんだ。
まあ、名無しさんが不機嫌なのは俺の所為だ、責任と言う程でもないが、機嫌を取るのも役目だろう。
賈詡は、今は勝利の報せに沸き立つ兵を横目に歩を進める。
少し前の、重苦しかった雰囲気が嘘のようだ。
矢張、張遼殿に任せて正解だった、彼の武勇は敵味方を問わずに知られ、恐れられている。
それを使って、この劣勢を覆す、賈詡はそう言って名無しさんを戦場のど真ん中に放り込んだのだ。
「張遼殿が来るまで、敵の目を引き付けておいてくれ」
無茶を言っている自覚はあった、今日までの連戦に疲労困憊、負傷している彼女に、尚も戦えと鞭を打っている。
「張遼殿には既に子細は伝えてある。もう向かっている筈だ、それまで何とか持ち堪えてくれたら良い」
「分かりました」
そう言うのならば、従うまでだと言わんばかりに、躊躇いもなく戦場に出て行った名無しさんを見送る賈詡に、後悔がなかった訳ではない。
何かと可愛く思う彼女を戦場に送り出そうとする俺は非情な人間だ。
そうしてまで、勝ちたいと思う自分が居る。
それを非情と言わずして、何と言う。
だが、勝算はあったのだ。
名無しさんが敵の目を引き付け、駆け付けた張遼が横腹を突く、単純な奇襲だが、連勝続きで驕り、油断している敵には有効的だ。
思惑通り、張遼の登場に因って、流れはがらりと変わった。
たった一人の勲 しで有利に傾いた戦況、名無しさんの役目はここで終わりだ。
帰陣し、賈詡の天幕に遣って来た彼女は開口一番、張遼に撤退を命じられたと言う。
「あと一歩で大将首に手が届いたのに・・・」
名無しさんは悔しげにそうも言った。
普段、表舞台に立つ事のない軍師に、上司に花を持たせたかったのか、彼女の短い言葉と機嫌の悪さから、そうと知れば、尚更、可愛く思うと言うものだ。
賈詡にとっては、名も知らぬ大将首よりも名無しさんの無事の帰還が何よりで、今は彼女の機嫌が直る事を願うばかりだ。
「賈詡殿」
と、自分を呼ぶ声に顔を向けて見れば、張遼が戦場から帰って来た所だった。
「あははあ!これは張遼殿、お早いお帰りで」
「名無しさんは無事ですか」
出迎えの言葉をそこそこに受け取り、張遼が彼女の姿を探して視線を巡らせる。
礼儀を知る彼がそれを忘れてしまう程に、彼女の事を心配しているのだ。
だが、名無しさんの事を心配するのは俺だけで良い、その感情をおくびにも出さず、賈詡は飄々と答えて言った。
「ああ、無事だよ、少し怪我をした程度だ。手当ても済ませてある」
「そうか・・・」
明らかに安堵したような声で、表情で呟く張遼に、胸が騒ぐ。
これは、牽制しておくべきか。
「今は俺の天幕で休んでるが・・・急ぎじゃないなら、そっとしておいてくれ。疲れてる」
「承知した、ではこれで・・・」
素直に頭を下げて行ってしまう張遼の背中に、賈詡はがりがりと頭を掻いた。
ただの確認だったのか、いや、そうとも限らない。
名無しさんが無事だと聞いた時の、張遼の表情は心配していると言うには温い、全く別のものだ。
そして俺はそれに対して気分を悪くしている。
「餓鬼じゃあるまいし・・・」
と、賈詡は溜め息混じりに独りごちた。
これを世間では何と呼ぶかを知っている。
まさか、この年になってまで、それを覚えるとは思わなかったが。
不機嫌を隠そうともせず、頬を膨らませている彼女に、賈詡は苦笑いを浮かべた。
俺に文句の一つでも言ってやらないと気が済まないって顔だな。
だが、言った所でどうしようもないし、俺に文句を言うのは筋違いだと分かっている。
その行き場のない感情を、自分でも持て余しているのだろう。
どうして良いか分からず、取り敢えず、俺の所に来たのだろうが、その行動は褒めてやろうと思う。
何せ、彼女は膨れっ面も可愛いのだ。
これでもかと膨らませた白く滑らかな頬、まるで口付けを強請っているかのようにも見える、尖らせた赤い唇、不機嫌丸出しだが、裏を返せばそこに付け入る隙がある、そんな彼女を放っておく男なんて、俺も含めて居る筈もない。
聞いてやるのは吝かではないが、さて、素直にぶつけてくるがどうか。
「名無しさん、言いたい事があるなら・・・」
「ありません」
言葉を重ねる事で遮られ、賈詡は溜め息を吐く。
やれやれ、相当、お冠のようだ。
肩を竦めて、賈詡は手元に広げた地図をちらりと見遣る。
本隊は上手くやってくれてるだろうか。
そろそろ、報せがやって来ても良い頃合いだが。
そう思ったとほぼ同時に息を切らした伝令が天幕に駆け込んで来た。
「張遼将軍が敵将の首を討ち取りました!我が軍の勝利です!」
「そうかい、そいつは何よりだ」
勝利に興奮気味な伝令は言うだけ言って、賈詡の返事も待たずに天幕を後にする。
賈詡は一つ、首を鳴らすと、未だ揺れる入口の仕切布を眺めて言った。
「それじゃ、俺は後始末に行くが・・・」
膨れたままの名無しさんを振り返り、続けて言う。
「名無しさん、いつまで膨れっ面でいるつもりだ?折角の可愛い顔が台無しだ。俺が帰って来るまでには機嫌を直してくれていると嬉しいんだがね」
名無しさんは一瞬、何を言われたか分からず、きょとんとした表情を浮かべたが、次には顔を真っ赤にさせた。
賈詡はそれを認めると、口の端を吊り上げて天幕の入口を捲る。
言葉一つでああも変わるとは、全く、可愛いもんだ。
まあ、名無しさんが不機嫌なのは俺の所為だ、責任と言う程でもないが、機嫌を取るのも役目だろう。
賈詡は、今は勝利の報せに沸き立つ兵を横目に歩を進める。
少し前の、重苦しかった雰囲気が嘘のようだ。
矢張、張遼殿に任せて正解だった、彼の武勇は敵味方を問わずに知られ、恐れられている。
それを使って、この劣勢を覆す、賈詡はそう言って名無しさんを戦場のど真ん中に放り込んだのだ。
「張遼殿が来るまで、敵の目を引き付けておいてくれ」
無茶を言っている自覚はあった、今日までの連戦に疲労困憊、負傷している彼女に、尚も戦えと鞭を打っている。
「張遼殿には既に子細は伝えてある。もう向かっている筈だ、それまで何とか持ち堪えてくれたら良い」
「分かりました」
そう言うのならば、従うまでだと言わんばかりに、躊躇いもなく戦場に出て行った名無しさんを見送る賈詡に、後悔がなかった訳ではない。
何かと可愛く思う彼女を戦場に送り出そうとする俺は非情な人間だ。
そうしてまで、勝ちたいと思う自分が居る。
それを非情と言わずして、何と言う。
だが、勝算はあったのだ。
名無しさんが敵の目を引き付け、駆け付けた張遼が横腹を突く、単純な奇襲だが、連勝続きで驕り、油断している敵には有効的だ。
思惑通り、張遼の登場に因って、流れはがらりと変わった。
たった一人の
帰陣し、賈詡の天幕に遣って来た彼女は開口一番、張遼に撤退を命じられたと言う。
「あと一歩で大将首に手が届いたのに・・・」
名無しさんは悔しげにそうも言った。
普段、表舞台に立つ事のない軍師に、上司に花を持たせたかったのか、彼女の短い言葉と機嫌の悪さから、そうと知れば、尚更、可愛く思うと言うものだ。
賈詡にとっては、名も知らぬ大将首よりも名無しさんの無事の帰還が何よりで、今は彼女の機嫌が直る事を願うばかりだ。
「賈詡殿」
と、自分を呼ぶ声に顔を向けて見れば、張遼が戦場から帰って来た所だった。
「あははあ!これは張遼殿、お早いお帰りで」
「名無しさんは無事ですか」
出迎えの言葉をそこそこに受け取り、張遼が彼女の姿を探して視線を巡らせる。
礼儀を知る彼がそれを忘れてしまう程に、彼女の事を心配しているのだ。
だが、名無しさんの事を心配するのは俺だけで良い、その感情をおくびにも出さず、賈詡は飄々と答えて言った。
「ああ、無事だよ、少し怪我をした程度だ。手当ても済ませてある」
「そうか・・・」
明らかに安堵したような声で、表情で呟く張遼に、胸が騒ぐ。
これは、牽制しておくべきか。
「今は俺の天幕で休んでるが・・・急ぎじゃないなら、そっとしておいてくれ。疲れてる」
「承知した、ではこれで・・・」
素直に頭を下げて行ってしまう張遼の背中に、賈詡はがりがりと頭を掻いた。
ただの確認だったのか、いや、そうとも限らない。
名無しさんが無事だと聞いた時の、張遼の表情は心配していると言うには温い、全く別のものだ。
そして俺はそれに対して気分を悪くしている。
「餓鬼じゃあるまいし・・・」
と、賈詡は溜め息混じりに独りごちた。
これを世間では何と呼ぶかを知っている。
まさか、この年になってまで、それを覚えるとは思わなかったが。