恋人の胸に
貴女のお名前
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触れて、触れられて。
思いが通じ合った割りには、以前と変わらない距離感の呂蒙の振る舞いに、名無しさんは少しの寂しさを覚えていた。
黙々と仕事を熟す恋人である筈の彼に、名無しさんはちらりと視線を向ける。
その表情は真剣で、こちらを見る様子もない。
そう言う所も素敵だとは思うけれど、初恋なだけに尚更、話に聞くより淡白な毎日が虚しく思え、口から溜め息が吐いて出てしまう。
「どうかしたのか?」
と、彼女の重苦しい吐息に、呂蒙は書きかけの書簡から顔を上げた。
「いいえ、何でもありません」
「そうか」
それで納得したのか、呂蒙の視線が何事もなかったように戻り、名無しさんはこっそりと肩を落とした。
もう少し、気になさって下さっても良いんじゃないかしら。
それとも、恋人同士って、こんなものなのかしら。
未だ武将と部屋付きの女官の関係だった頃の方が気に掛けて貰えていた気がする。
あの時はお側に居るだけで幸せで、勿論、今だって幸せなんだけど、でも何だか寂しい。
呂蒙様に触れたい、呂蒙様から触れて欲しい、そんな事を考える自分がはしたなく思える。
同時に、彼にもそう思っていて欲しいと願う気持ちもあった。
だからこそ、変わらない距離感に寂しさを覚えるのだろう。
名無しさんが無意識にまた溜め息を吐いていた。
呂蒙はその重さに再び、視線を彼女に向けて口を開きかけたが、結局、何も言わずに書簡に戻す。
「分かるわぁ」
と、孫尚香は溜め息と共に言った。
「玄徳様も、ちょっと鈍い所があるのよね」
「そうなんですか?」
「そうなのよ!この前だって、遠乗りに行きたいなって言ったら・・・どうしたと思う?」
尚香はそこで言葉を一度切り、名無しさんの答えを待たずに、
「馬を二頭用意して来たんだから!そこは普通、一緒に乗るものでしょう?」
と、菓子を掴んでぽいっと口に放り込んだ。
その振る舞いを、名無しさんが嗜める。
「姫様、少しお行儀が悪いのでは?」
「今だけよ。今は私達、お友達でしょう?」
悪戯っぽく片目を閉じて見せる彼女に、名無しさんは困ったように微笑んだ。
呂蒙付きとなってはいるが、呼び出されたら断れる相手ではない。
例え、ただの話し相手の役目であっても。
名無しさんはそっと睫毛を伏せ、熱い茶を口に含んだ。
「今だけは、お友達と仰って下さるなら・・・」
「うん、なあに?」
尚香が少し嬉しそうに身を乗り出して尋ねる。
名無しさんは手の中の茶碗をじっと見詰めた。
こんな事、姫様に相談しても良いのかしら。
どうしたら、呂蒙様との距離を縮められるでしょうか・・・なんて。
でも、どうしたら良いのか私には分からない。
「私・・・もっと呂蒙様と、何て言うか・・・」
茶碗を無意識にくるくると回す彼女に、孫尚香はずばりと言う。
「触れ合いたい?」
名無しさんは答える代わりに頬を染め、小さく頷いた。
窺うような視線を尚香に向ける。
「はしたない・・・ですよね」
「そんな事ないわ」
孫尚香は即座に否定して、
「私も玄徳様と触れ合いたいって、いつも思ってるのよ」
「いつも、ですか?」
「ええ、いつもよ」
二人は顔を見合わせて、くすくすと笑い合った。
名無しさんは少し、胸が軽くなった様子で、続けて言う。
「どうしたら、呂蒙様とそうなれるでしょう?」
「そうねぇ・・・」
孫尚香は頬に指を添え、首を傾げた。
何せ呂蒙は真面目な男だ。
浮いた話の一つや二つ、あっても良いとは思うが、少なくとも尚香は聞いた事がなかった。
余り、色恋沙汰は得意ではないのかもしれない。
「まあ、手っ取り早いのは色仕掛け・・・かしら」
「い、色・・・」
「やだ、名無しさんったら。そんなんじゃないってば」
尚香がからかうように笑う。
「例えば、ちょっとお化粧や髪型を変えてみるとかって事よ」
「お化粧や髪型を?」
「だって名無しさん、いつも同じ感じでしょう?」
今の名無しさんは武将付きの女官だ。
孫尚香付きだった頃のように着飾る事はない。
名無しさんはでも、と口を開いた。
「それ位で変わるでしょうか?」
「そんなの、やってみれば分かるわ」
孫尚香が飛び切りの楽しみを思い付いたように、にんまりとした笑みを浮かべる。
思いが通じ合った割りには、以前と変わらない距離感の呂蒙の振る舞いに、名無しさんは少しの寂しさを覚えていた。
黙々と仕事を熟す恋人である筈の彼に、名無しさんはちらりと視線を向ける。
その表情は真剣で、こちらを見る様子もない。
そう言う所も素敵だとは思うけれど、初恋なだけに尚更、話に聞くより淡白な毎日が虚しく思え、口から溜め息が吐いて出てしまう。
「どうかしたのか?」
と、彼女の重苦しい吐息に、呂蒙は書きかけの書簡から顔を上げた。
「いいえ、何でもありません」
「そうか」
それで納得したのか、呂蒙の視線が何事もなかったように戻り、名無しさんはこっそりと肩を落とした。
もう少し、気になさって下さっても良いんじゃないかしら。
それとも、恋人同士って、こんなものなのかしら。
未だ武将と部屋付きの女官の関係だった頃の方が気に掛けて貰えていた気がする。
あの時はお側に居るだけで幸せで、勿論、今だって幸せなんだけど、でも何だか寂しい。
呂蒙様に触れたい、呂蒙様から触れて欲しい、そんな事を考える自分がはしたなく思える。
同時に、彼にもそう思っていて欲しいと願う気持ちもあった。
だからこそ、変わらない距離感に寂しさを覚えるのだろう。
名無しさんが無意識にまた溜め息を吐いていた。
呂蒙はその重さに再び、視線を彼女に向けて口を開きかけたが、結局、何も言わずに書簡に戻す。
「分かるわぁ」
と、孫尚香は溜め息と共に言った。
「玄徳様も、ちょっと鈍い所があるのよね」
「そうなんですか?」
「そうなのよ!この前だって、遠乗りに行きたいなって言ったら・・・どうしたと思う?」
尚香はそこで言葉を一度切り、名無しさんの答えを待たずに、
「馬を二頭用意して来たんだから!そこは普通、一緒に乗るものでしょう?」
と、菓子を掴んでぽいっと口に放り込んだ。
その振る舞いを、名無しさんが嗜める。
「姫様、少しお行儀が悪いのでは?」
「今だけよ。今は私達、お友達でしょう?」
悪戯っぽく片目を閉じて見せる彼女に、名無しさんは困ったように微笑んだ。
呂蒙付きとなってはいるが、呼び出されたら断れる相手ではない。
例え、ただの話し相手の役目であっても。
名無しさんはそっと睫毛を伏せ、熱い茶を口に含んだ。
「今だけは、お友達と仰って下さるなら・・・」
「うん、なあに?」
尚香が少し嬉しそうに身を乗り出して尋ねる。
名無しさんは手の中の茶碗をじっと見詰めた。
こんな事、姫様に相談しても良いのかしら。
どうしたら、呂蒙様との距離を縮められるでしょうか・・・なんて。
でも、どうしたら良いのか私には分からない。
「私・・・もっと呂蒙様と、何て言うか・・・」
茶碗を無意識にくるくると回す彼女に、孫尚香はずばりと言う。
「触れ合いたい?」
名無しさんは答える代わりに頬を染め、小さく頷いた。
窺うような視線を尚香に向ける。
「はしたない・・・ですよね」
「そんな事ないわ」
孫尚香は即座に否定して、
「私も玄徳様と触れ合いたいって、いつも思ってるのよ」
「いつも、ですか?」
「ええ、いつもよ」
二人は顔を見合わせて、くすくすと笑い合った。
名無しさんは少し、胸が軽くなった様子で、続けて言う。
「どうしたら、呂蒙様とそうなれるでしょう?」
「そうねぇ・・・」
孫尚香は頬に指を添え、首を傾げた。
何せ呂蒙は真面目な男だ。
浮いた話の一つや二つ、あっても良いとは思うが、少なくとも尚香は聞いた事がなかった。
余り、色恋沙汰は得意ではないのかもしれない。
「まあ、手っ取り早いのは色仕掛け・・・かしら」
「い、色・・・」
「やだ、名無しさんったら。そんなんじゃないってば」
尚香がからかうように笑う。
「例えば、ちょっとお化粧や髪型を変えてみるとかって事よ」
「お化粧や髪型を?」
「だって名無しさん、いつも同じ感じでしょう?」
今の名無しさんは武将付きの女官だ。
孫尚香付きだった頃のように着飾る事はない。
名無しさんはでも、と口を開いた。
「それ位で変わるでしょうか?」
「そんなの、やってみれば分かるわ」
孫尚香が飛び切りの楽しみを思い付いたように、にんまりとした笑みを浮かべる。